公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

国基研ろんだん

2019.01.23 (水) 印刷する

日本の協議打ち切りは妥当だ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 韓国艦による海上自衛隊のP-1哨戒機に対する火器射撃管制レーダー照射問題で、わが国防衛省は21日、韓国との実務者協議を打ち切ると表明した。韓国国防省に対しては何を言っても事実関係の解明が期待できないことから、止む得ない判断だと思う。
 朝鮮人戦時労働者、慰安婦財団の解散、韓国観艦式での自衛艦旗掲揚阻止、竹島での軍事演習、今回の射撃管制用レーダー照射、そして防衛白書から北を「敵」とする表現削除と度重なる韓国の反日政策の陰には北が「北と組んで半島統一を企図するなら、その本気度を示してみろ」と韓国に迫っていることが背景にあると窺われる。強硬な反日政策をとれば、それは北への忠誠度を示すことになるからだ。
 これは筆者が情報本部長であった2000年代初頭、拉致被害者の帰国を迫る日本に対して北が「本気度を示してみろ」と迫り、朝鮮総連問題等に関し日本政府が行動した事実などから推測できる。

 ●疑われる安保理決議違反
 射撃用レーダー照射問題の本質は、北の要請により韓国海軍が、国際社会に知られたくないことをやっていた、それを発見した海上自衛隊のP-1哨戒機を追い払うための意図的行為と確信している。
 その証拠に、救難信号も出していない北朝鮮漁船と韓国警備救難艦、韓国海軍艦が一堂に会していることの不自然さ、P-1が3つの周波数で問い掛けたが無視して応じなかったこと、射撃管制用レーダー波を浴びせられたP-1が退避後に照射が止まっている事などから推測できる。
 国連安保理の対北朝鮮制裁決議に違反する行為を、韓国警備救難艦と韓国海軍艦がやっていたのか、現時点では不明であるが、明らかに知られたくない行為をP-1に発見されて追い払うための確信犯的行動であることは間違いない。一部報道では、昨年8月の元山における金正恩暗殺未遂の逃亡者を捕獲して北に引き渡す行為をやっていたとの説もある。

 ●識者は日本の立場に理解
 筆者は事件直後の12月25日付「ろんだん」で韓国艦による目標追尾訓練ではないかと書いたが、その後、公表された動画を見るに至って、訓練のような生易しいものではなくP-1を追い払うためだと思った。
 日本側の情報開示と韓国側のそれとを比較してどちらに正当性があるか、ロンドン大学の戦争学の権威であるアレッシオ・パタラーノ博士(イタリア国籍)は、韓国駆逐艦が海上自衛隊機の無線呼びかけに応じなかったことに問題があると述べ、P-1の飛行高度は全く脅威を与えるものではなかったと指摘している。
 日本は事案の再発防止を求めているのに対し、韓国は謝罪を求めている。意図的な反日政策をやっている相手には何を言っても無駄で、協議打ち切りは妥当な判断である。