公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

岩田清文の記事一覧

国基研企画委員・元陸上幕僚長 岩田清文    2022年10月ごろ、米国がロシアの極秘の通信を傍受したところ、ロシア軍の内部で核兵器の使用について頻繁に議論が行われていた、と米紙ニューヨーク・タイムズが3月9日に伝えた。米CNNテレビも同日、バイデン政権当局者の話として、この時期、ロシアが戦術核兵器でウクライナを攻撃する可能性を同政権が懸念していたと報道している。事実、プーチン・...

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国基研企画委員・元陸上幕僚長 岩田清文    ウクライナ侵攻直後、プーチン・ロシア大統領が核兵器を「戦闘態勢」に移行すると発言したことを受け、英BBCは「これによりロシアが『戦術』核兵器を使用する恐れが高まった。全面的な核戦争とまではいかないが、劇的な展開だ」と報じている。バイデン米大統領も昨年6月、「プーチン氏が戦術核を使うことを懸念している」と述べ、危険性は「現実のものだ」と...

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国基研企画委員・元陸上幕僚長 岩田清文    日英伊3か国共同による次期戦闘機の開発をめぐり、公明党首脳部が慎重姿勢を崩さず、連立与党の足並みを乱している。  ●盟友を増やす戦闘機第三国移転  高度な技術と先進的な運用ノウハウが要求される次世代戦闘機の開発は、もはや一国のみでは開発できず、それぞれの国の最先端技術と知見を統合することが主流となっている。この共同開発により、...

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国基研企画委員・元陸上幕僚長 岩田清文    防衛装備移転に関する与党調整が迷走している。これまでの議論の積み上げを公明党が無視する態度に出たためだ。自民、公明両党で構成するワーキングチーム(WT)は4月以降議論を重ね、7月には他国と共同開発する装備品の第三国への移転を容認する方向にあった。しかし、公明党の石井啓一幹事長は12月1日の会見で、「第三国への輸出はこれまでのあり方を大...

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国基研企画委員・元陸上幕僚長 岩田清文    かつての武器輸出三原則や、改定後の防衛装備移転三原則などの自己規制は、長年にわたり日本の安全保障政策において自らの手を縛り続けてきた。これを改善すべく、昨年12月に閣議決定された「国家安全保障戦略」では、海外への装備移転が日本にとって望ましい安全保障環境の創出のための重要な政策手段になるとの認識が示された。併せて、防衛装備移転三原則な...

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国基研評議員兼企画委員 岩田清文    台湾有事が日本有事になることは、あえて触れるまでもないだろう。米国では、その台湾有事への危機感がこれまでにないほど高まっている。その危機認識は日本政府、与党も共有しているはずだ。  ●存在しない日台調整の枠組み  日台関係に絞ったとしても、台湾有事の際に日本政府が実施すべきことは多い。  台湾在住邦人約2万5000人と旅行者に対し...

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日本政府は既に昨年3月以降、防弾チョッキ、鉄帽、防護衣・マスク、小型ドローン、そして民生車両(バン)等をウクライナに提供してきた。しかし、独キール世界経済研究所の2月21日の発表によると、軍事支援や人道支援などを含む支援総額(2022年1月~2023年1月15日)で、日本は10.5億ユーロと世界第10位にとどまっている。英国は日本の約8倍、ドイツが6倍、言うまでもなく最大支援国の米国は73倍だ。日...

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ロシアのウクライナ侵略開始から間もなく1年。ドイツ、米国はじめ北大西洋条約機構(NATO)各国は、それまで慎重であったウクライナ向け戦車供与にかじを切った。ウクライナのオメリチェンコ駐仏大使は、これまでに321両が約束されたと述べている(仏テレビ局、1月27日)。ゼレンスキー大統領は「300~500両の戦車が必要だ」と述べており(英テレビ局、同日)、今後も追加される可能性がある。 昨年9月以...

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国基研評議員 岩田清文    日本の防衛政策上、戦後最大の転換と言える戦略3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)が、12月16日の閣議において決定された。増大する中国の脅威に対し政府が深刻な危機感を持った証左であり、大いに評価できる。  ●脅威対抗力を強化  特に、反撃能力の保有は相手を抑止できる力を自ら持ち、確実に国を守ろうとする意志の明確な表れだ。手...

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国基研評議員 岩田清文    9月11日、ウクライナ北東部ハリキウ州の要衝イジューム市を奪還したウクライナ軍の反攻作戦は、4日間で80~100キロという驚異的な進軍速度だった。当時、ウクライナ軍の作戦構想は、同国南部に戦力を集中しており、ハリキウは反撃の主正面ではなかった。しかし、ロシア軍の弱点が確認されたため、戦車、装甲車を中心とする機動部隊が攻撃し、ハリキウ州の大部分を奪還し...

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国基研評議員 岩田清文    ペロシ米下院議長の台湾訪問を巡り米中の駆け引きが続いている。バイデン米大統領と習近平中国国家主席による2時間の電話会談(7月28日)においても、習氏は「火遊びすれば必ず身を焦がす」と述べ、対抗措置も辞さない姿勢を示して、平行線に終わったと報道された。  ●懸念される米中軍機の衝突  大統領継承順位が副大統領に次いで2位の要職である下院議長の訪...

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ウクライナ戦争は今、ルガンスク、ドネツクの両州からなる東部ドンバス地方の攻防が焦点となっているが、長期化の様相を強めている。ロシアにとって東部2州の併合は、ウクライナ侵略における最低限の目標であり、プーチン大統領は5月9日の戦勝記念日の演説で、東部ドンバス地方を「歴史的な土地」とも表現した。現状はロシア軍の攻勢が顕著であり、6月25日には東部の要衝セベロドネツクを陥落させ、隣接するリシチャンスクを...

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ロシアのウクライナ侵攻以前に、それが全面軍事侵攻になると認識していたのは、事前に情報を掴んでいた米国とウクライナの当局者くらいであろう。軍事専門家を含め、ほとんどの者は、東部ドンバス地域への侵攻はあっても、まさか首都キーウまでとは思っていなかっただろうし、そしてまた戦闘がここまで長期化するとは想像もしていなかったであろう。 「力には力」の本質が明白に 人々を、半世紀以上、過去に引き戻し...

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ウクライナ侵略前におけるプーチン大統領の思惑は、短期間にゼレンスキー政権を倒し、5月9日の戦勝記念日には、ウクライナの中立化・ロシア化達成を記念した大々的な式典を挙行することだったろう。 しかしウクライナ軍は、2014年のロシアによるクリミア併合以降、米国の支援を受け、ロシアの想像を越えるスピードで進化し、戦える力を付けていた。一方のロシア軍は、クリミア併合の真の勝因から学ぶことなく、ウクラ...

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国基研評議員 岩田清文    米国、英国、オーストラリア3カ国が昨年9月に創設した安全保障パートナーシップの枠組み「AUKUS(オーカス)」の下では現在、豪州海軍の原子力潜水艦取得計画が進行している。3カ国はこれに加えて4月5日、AUKUSの一環として極超音速兵器の開発でも協力すると発表した。AUKUS創設の背景には、中国による太平洋、南シナ海、インド洋などへの覇権拡大に対する米...

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我が国は、地政学的、歴史的に、常に北のロシア(旧ソ連)、朝鮮半島、そして南西の中国の3正面、さらに東の米国を加えた4正面に対し、どう立ち向かい、付き合っていくのか、国家の生存と繁栄に繋がる極めて重要な戦略的判断を継続してきた。一時期、その判断に大きな失敗をした時代もあったが、そのような過ちは二度とあってはならない。 価値観が共有できる最も強い国と同盟を組み、主敵を絞った上で、他の正面は隙を見...

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3月22日の「ろんだん」において、ウクライナの惨状に鑑み、ジェイソン・モーガン氏から、『日本に「国民即応隊」を創設せよ』との熱いメッセージを頂戴した。氏のイメージは、志のある一般国民が、有事はもちろん大規模災害時、緊急的に集まり、技術的な側面などにおいて自衛隊の足らざるところを補うということのようである。負傷者の手当て、仮設避難所の設置、自衛隊到着までの秩序維持によって、直ちに近隣住民を助けること...

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国基研評議員 岩田清文    平成18年10月15日、当時の中川昭一自民党政調会長がテレビ番組で「核議論を尽くすべきだ」と発言し、国内外で大きな反響を呼んだ。中川氏はその本意を後日、週刊誌においてこう述べている。「そもそも、私は核保有議論はしていません。核の議論をしましょうと言ったのです。もっと言えば、核の抑止力の議論を提言したいと言ったのです。それは、拉致も含めて日本の平和と安...

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国基研評議員 岩田清文    昨年10月、台湾の国防部長(国防相)が、2025年には中国の全面的侵略が可能になるとの認識を示した。また昨年6月、米上院軍事委員会においては、2027年以降は中国の台湾侵攻が可能なレベルに上がるとの答弁が米インド太平洋軍司令官により行われた。これらを前提にすれば、最悪の場合、2025年~2027年以降、中台紛争勃発の危険度が高まる。  ●迫りく...

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国基研評議員・元陸上幕僚長 岩田清文    「中華民族の偉大な復興」を掲げ覇権の拡大を続ける中国は、西太平洋において海空統合演習を繰り返し、将来的に米軍をこの地域から追い出そうとしている。中国が保有するとされる2000発近い中距離弾道・巡航ミサイルは、沖縄からグアムまでを射程に収め、対抗手段としては、米国の戦略核を主体とする核抑止力に頼る他ないのが現状である。加えて中国の最新の極...

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