4月18日、米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は「米国が軍事支援をしなければ、ウクライナは年末までに敗北する危険性が非常に高い」との危機認識を示した。この認識が米議会においても共有されたのだろうか。約半年の審議停滞を経て、4月23日、ウクライナ等支援の緊急予算が可決された。民主党上院トップのシューマー院内総務も「米国は民主主義が危機にひんしたときに必ず守る」と支援承認を訴えていた。
その約2週間前の4月11日、岸田文雄首相は米議会における演説で、自由と民主主義が世界中で脅威にさらされていること、そして世界中の民主主義国が総力を挙げて自由、民主主義、法の支配を守る必要があることを訴えている。
この流れからも、日本は、民主主義対権威主義の最前線で戦っているウクライナを、総力で支えていくべきであろう。
●「5類型」が足かせに
財政支援のみならず、ウクライナが最も困っている分野の一つである防空装備や弾薬を始め、完成した防衛装備の提供は極めて有効な支援となる。これらは民主主義国全体においても生産が間に合わない装備であり、ウクライナだけでなく民主主義陣営に対しても連帯意志を示すことになる。
日本にはパトリオット・ミサイルを始め、防空装備を生産できる能力があるが、政府が定めた防衛装備移転三原則の「運用指針」において輸出を認められた装備ではない。完成品の形で輸出できるのは、「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の5類型の装備に限定されている。
昨年春からの与党調整においては、この5類型を拡大する方向でも議論が進んでいた。自民党は当初、類型を撤廃し殺傷能力のある装備も輸出できる案を出していたが、これまでの議論で、防空や海洋安全保障関連装備を拡大対象にした。一方の公明党は、対象拡大には応じているが、教育訓練や地雷処理に止めるべきとしている。
●公明党は世界の危機を直視せよ
公明党は、「紛争を助長しないよう、これまで輸出を認めてこなかった歴史的な経緯もある」などとして、装備品輸出に慎重な立場をとってきた。違法な侵略を受けたウクライナの兵士や市民を直接守る防空装備は、ウクライナ戦争をどのように助長するのだろうか。防空装備を供与しないことは、ロシアの力による支配を認め、法の支配を否定することに繋がる。結果的にロシアの侵略を助け、ウクライナの民主主義を見殺しにすることになるのではないのか。
自分の国だけは殺傷兵器を輸出しないことにより殺傷行為に関わっていない姿勢をとる、いわゆる「一国平和主義」に固執する公明党には、米議会演説で岸田首相が主張した、世界秩序の危機的な状況を直視してもらう必要がある。(了)