公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

田久保忠衛の記事一覧

国基研副理事長 田久保忠衛    「国民のために働く」とか「スピード感をもって実行する」という新味のない言葉が流行はやり、菅氏グッズまで売り出されるなど、菅義偉首相の評判は滑り出し好調だが、率直に言って不安がある。自民党総裁選を戦った菅、石破茂、岸田文雄の3候補に共通するのは国家観の欠如だ。国際情勢の中で日本がいかなる位置にあるのかを正確に把握しない限り、国家観は生まれてこない。...

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国基研副理事長 田久保忠衛    7月23日にポンペオ米国務長官がカリフォルニア州のニクソン図書館で行った「共産主義中国と自由世界の将来」と題する演説は、トランプ政権の対中政策の中でも一時期を画する意義があったと思われる。  同長官が言わんとするところは、14億人の人民よりも党およびその指導者の利益を考えている中国共産党の行動は民主主義国とは相いれないので、「関与政策」は転換す...

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国基研副理事長 田久保忠衛    中国の王毅国務委員兼外相は7月17日にロシアのラブロフ外相と電話会談をした際に、「(米国は)国際関係の基本ルールを破っている」と批判し、共に対抗しようと呼び掛けた。因果の関係を知ったうえでの発言かどうか。国際秩序の現状変更を求めてきたのは中国で、これに対する激しい応戦が政治、経済、軍事、イデオロギー、サイバー、宇宙、技術などすべての分野で米国によ...

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国基研副理事長 田久保忠衛    トランプ政権の外交政策の内幕を暴露する著書を出版したボルトン前米大統領補佐官は最近、産経新聞とのインタビューで、トランプ大統領は従来の米大統領とは違って本当に米軍を撤収させるリスクがあり、経費負担の増額要求をもっと真剣に受け止めるべきだと語った。  昨年、トランプ大統領は、6月25日にブルームバーグ通信で報道されたのを皮切りに、米国だけが防衛義...

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国基研副理事長 田久保忠衛    旧民社党を自民党と旧社会党の中間に位置する政党だったと誤解している向きがいまだに少なくない。とんでもない浅い解釈だ。政党を右とか左といった単純な尺度で分類するしか能がないのか。  春日一幸委員長、塚本三郎書記長時代の1978年に、栗栖弘臣統合幕僚会議議長の解任問題が発生した。日本が奇襲攻撃を受けた場合、首相の防衛出動命令が出るまで自衛隊は動きが...

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国基研副理事長 田久保忠衛    今から半世紀ほど前に、英誌エコノミストが日本の外交を「柔道外交」と形容し、ちょっとした話題になった。日本外交は押されれば引き、引かれれば前に出る。自分の余計なエネルギーを使わずして、相手を疲れ果てさせる。悪く言えば、外交で原理・原則は二の次、三の次にする好ましくない典型、という響きが込められていたように思う。  ●中国に腰が引ける日本  ...

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国基研副理事長 田久保忠衛    1年間を振り返ると、世界の戦後体制といわれるシステムに一大変化が生じつつある。それが正しいか正しくないか、既成の価値観に合致しているかいないか、などは関係がない。世界の指導者の中で、「私は民主主義のリーダーだ」などと言っているのは、既に政治的にレームダック(死に体)になってしまったドイツのメルケル首相くらいだ。  強権政治は中国、ロシア、北朝鮮...

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国基研副理事長 田久保忠衛    戦後74年目の終戦記念日を迎えて思ったのは、国際情勢の舞台が一回転して、戦後とは別の局面が生まれつつあるということだ。日本全体が1日も早く覚醒してほしい。  終戦時に米国を中心とする連合国軍が考え出したのは、日本とドイツが軍事的に2度と立ち上がれない装置だ。日本には日本国憲法の9条を強要した。背景となったマッカーサー・ノートは、日本に自衛力の行...

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国基研副理事長 田久保忠衛    月刊「正論」1月号のコラム「激流世界を読む」の拙文の最後を、「ペリーの黒船、第2次大戦の敗戦と、米国に2度運命を変えられた日本に、第3の黒船が太平洋の彼方から近づいてくるのかも知れない」で結んだが、黒船はやってきた。にもかかわらず、日本の対応は政府・与党もマスメディアの大方も見当外れだ。  ●大統領発言は米国の総意  トランプ米大統領が私...

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国基研副理事長 田久保忠衛    「令和」の意味について講釈はまだ続いているが、それは専門家に任せよう。指摘したいのは2点だ。一つは、異常なほどの皇室フィーバーが生まれながら、日本の国柄は何かという真面目な議論がなされていない。二つは、NHKの報道にそれとなく登場する「反戦平和」のイデオロギーの存在だ。  ●日本の「国柄」を対外発信しよう  日本という国家が立憲君主制なの...

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国基研副理事長 田久保忠衛    米国のシンクタンク、ジャーマン・マーシャル・ファンドの研究者アンドルー・スモール氏などは、欧州連合(EU)が3月22日の首脳会議で中国の対欧経済攻勢に対してよくまとまって対応策を打ち出したと称賛しているが、これは少数意見だろう。ネオコン系の米歴史学者ロバート・ケーガン氏は欧州の弱さと分裂を「米国からの戦略的分離」「EUのほころび」「欧州の終末」な...

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国基研副理事長 田久保忠衛    中国が巨大経済圏構想「一帯一路」に欧州を巻き込もうとする勢いがにわかに強まってきた気配だ。習近平国家主席は欧州歴訪の最初の訪問国にイタリアを選び、22、23の両日、ローマでマッタレッラ大統領、コンテ首相とそれぞれ会談し、一帯一路推進を覚書で確認した。次いで李克強首相は4月9日にブリュッセルを訪れ、欧州連合(EU)首脳と短時間の会談をした後、クロア...

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国基研副理事長 田久保忠衛    安倍晋三首相が進めている日ロ平和条約交渉には、これまでの両国交渉にはなかった戦略的構想が秘められているらしい。自民党総裁外交特別補佐を務める政治家がワシントンの政策研究機関で講演し、「中国への対抗」のためにも日ロ間で平和条約が必要だとしゃべったという(産経新聞1月9日付)。実際にそうであるかどうかは別にして、国家の戦略に関することを気軽に口にする...

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国基研副理事長 田久保忠衛    過去1年の国際情勢を回顧して、日本の命運に関わる最大の動きは、米中関係の今後を占う材料がようやく出そろい始めたということであろうか。ありていに言えば、米国が「米国第一主義」をさらに強めてきた点と、米中貿易戦争の衝撃を受けた中国が広まり行く中国批判の国際的大合唱の中で「危険な台頭」を強行できなくなってきた点の二つである。  ●トランプ政権に欠...

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国基研副理事長 田久保忠衛    覇権国家間の対立を、古代ギリシャのスパルタとアテネの抗争になぞらえて「トゥキディデスの罠わな」の名文句を広めたのは米ハーバード大学のグレアム・アリソン教授だ。そのアリソン氏がフォーリン・アフェアーズ誌7-8月号に「リベラル・オーダー(自由主義的国際秩序)の神話」と題して一文を書き、米国は国際秩序の維持者たらんとするよりも自国の健全な民主主義再生に...

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国基研副理事長 田久保忠衛    まさか戦前の日独同盟に郷愁を抱いているのでもなかろうが、日本人には、ドイツに好意的な人が少なくない。個人が親近感を抱くのは勝手だが、国家間の交際は冷静に願いたい。とかく問題を起こす政治家だが、トランプ米大統領は7月の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議でドイツの防衛負担が少なすぎると大々的に批判し、同時にNATOの潜在敵国でもあるロシアからドイツ...

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国基研副理事長 田久保忠衛    第2次世界大戦中にチャーチル英首相の筆頭軍事顧問を務め、北大西洋条約機構(NATO)の初代事務総長だったイスメイ卿の有名な言葉がある。NATOの目的を「ロシアを締め出し、米国に関与させ、ドイツを抑え付ける」(to keep the Russians out, the Americans in, and the Germans down)ことにある...

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国基研副理事長 田久保忠衛    米国屈指のシンクタンクである外交問題評議会のアジア研究部長、エリザベス・エコノミー女史がフォーリン・アフェアーズ誌5~6月号に「中国の新革命」と題し、説得力に富む文章を書いている。毛沢東の第一革命、鄧小平の第二革命に続く習近平国家主席の第三革命の特徴を「自由主義的な世界秩序の中で中国はリーダーシップを手にしようとしている非自由主義国家である」...

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国基研副理事長 田久保忠衛    戦争に敗北した日本が一時期目指した「軽武装・経済大国」の代名詞「吉田ドクトリン」の亡霊は永田町に生きていた。自民党の岸田文雄政調会長率いる岸田派(宏池会)が4月18日に公にした政策である。  ●岸田派が「平和憲法」擁護  読売新聞4月19日朝刊の記事によれば、政策骨子の名称は「K-WISH」。キーワードは「トップダウンからボトムアップ...

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国基研副理事長 田久保忠衛    4月から5月にかけて日米、南北、米朝首脳会談が相次いで行われる。情報が錯綜さくそうしている今、状況をどう整理したらいいか明言はできないが、3月26日に北京で中国の習近平国家主席と北朝鮮の金正恩労働党委員長が初の会談を行ったのを契機に、北朝鮮を包囲していた日米韓中の結束がほころび、「日米韓」対「中朝」の対立に戻ったと見ていいのではないか。 ...

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