田久保忠衛の記事一覧
【第1082回】首相から危機感が伝わってこない
国基研副理事長 田久保忠衛 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスが、民主主義国家イスラエルに対して卑劣な大規模の奇襲攻撃を行った事件だ、と正確に理解する必要があると思う。 ●ハマスの背後にイランと中露 ハマスが事前にイランと協議し、承認を得て実行に移された、と一米紙が事件翌日に報道して世界を驚かせたが、その後サリバン米大統領補佐官は「広い...
【第1074回】米国のウクライナ政策変更を警戒せよ
国基研副理事長 田久保忠衛 米議会は2023会計年度末の9月30日深夜、11月半ばまでのつなぎ予算を可決し、バイデン大統領が署名した。政府機関の一部閉鎖が回避されたので、米国民の大方は一安心だろう。しかし、バイデン政権が議会に要請していたウクライナ向け追加援助240億ドル(約3兆6000億円)は削除されてしまった。共和党強硬派の意向を汲くんだマッカーシー下院議長(共和)の判...
【第1041回】広島サミット成功と浮かれていいのか
国基研副理事長 田久保忠衛 「核なき世界」への決意を新たにしたとか、「広島で平和へのコミットメントを確認した」といった空々しい表現が日本のマスメディアに躍った。その中でウクライナのゼレンスキー大統領の広島入りが投じた「国際政治の現実とは何か」の一石は貴重な価値を持つ。お祭り騒ぎや日本式のおもてなしではどうにも片付かない冷厳な現実が待ち受けている。 ●トランプ氏再登場...
【第1034回】米韓合意で際立つ非核三原則の非常識
国基研副理事長 田久保忠衛 中国、ロシア、北朝鮮がいずれも核保有国だという事実を考えるだけで、日韓両国は世界で他に例のない危険な国際環境に置かれていると断定できる。だから日韓両国はひたすら米国の拡大抑止力に依存してきた。その米国の威信が揺らぎ始めた。 尹錫悦韓国大統領は国民の核武装賛成論を背景にバイデン米大統領との間で従来の拡大抑止の「グレードアップ」(格上げ)に成功し...
【第996回】出でよ日本のドゴール、チャーチル
国基研副理事長 田久保忠衛 この1年間を振り返る役が回ってきたので、私見を交えた観察を申し述べたい。日本の国際情勢認識が国際情勢の変化と調子が合っていない点は、一貫して私が関心を寄せてきた問題だ。最近出版されて話題となったマルデンバウム米ジョンズ・ホプキンズ大学名誉教授の「The Four Ages of American Foreign Policy」(米外交の4時代)を...
【第981回】中国を脅威でないと言い切れるのか
国基研副理事長 田久保忠衛 国家基本問題研究所(櫻井よしこ理事長)は11月3日、フランスの歴史人口学者・家族人類学者エマニュエル・トッド氏を招き、「安倍以降の国際秩序」と題する討論会を開いた。著書「最後の転落」の中で1991年のソ連崩壊を言い当てた伝説的予言者だけに、参加者の関心は大きく、この日も終始一貫して日本人の常識を超える発言を続けた。 ●トッド理論に欲しい補...
【第960回】知性とモラルを欠いた日本の国会
国基研副理事長 田久保忠衛 衆参両院の議事運営委員会の閉会中審査に岸田文雄首相が出席し、立憲民主党の泉健太代表が質問をするというので、8日にテレビを視聴した。そこで感じた絶望的な怒りはいまだに収まらない。つい最近まで日本の最高指導者だった人物が公衆の面前で真っ昼間に暗殺されたのに、国の在り方は問題にもされず、取るに足らぬ瑣末な問題に貴重な時間が徒いたずらに費やされている。 ...
【第934回】国を憂える政治家はいるか
国基研副理事長 田久保忠衛 参院選の公示が終わり、各党とも一斉に選挙へ向かって走り出したが、日本が国際情勢下でいかに厳しい立場にあるかの認識が欠落しているせいか、取り上げるべき問題の優先順位が明確ではない。特に、国家的危機と個人的危機の区別もないまま大声で何かを怒鳴っているだけなのが現状だ。日清戦争前夜の朝鮮半島における列強の恐ろしい外交について、陸奥宗光は「蹇蹇けんけん録...
【第930回】「米国による平和」は終わった
国基研副理事長 田久保忠衛 「米国による平和の真の終焉」との見出しの一文がフォーリン・アフェアーズ誌ウェブ版(6月13日付)に掲載された。筆者は欧州外交問題評議会会長のマーク・レナード氏だ。ロシアによるウクライナ侵攻の影響により、ドイツは防衛政策の大転換とロシアへのエネルギー依存漸減にかじを切り、日本も追随するかのように防衛費の大幅増額に踏み切った。両国とも「普通の国」への...
【第927回】敬服すべきブレジンスキー氏の洞察力
国基研副理事長 田久保忠衛 米カーター政権の時に大統領補佐官を務めたズビグニュー・ブレジンスキー氏が、今から25年前に書いた「巨大な将棋盤」(邦訳「世界はこう動く」日本経済新聞社)と題する書物がある。月刊文芸春秋5月号にフランスの人口学者エマニュエル・トッド氏がこの書を引用してウクライナ戦争の今日的意義を説いた。 特筆に値する第一は、中国がユーラシア大陸で世界的な覇権国...
【第917回】払拭できない沖縄の反ヤマト感情
国基研副理事長 田久保忠衛 沖縄の祖国復帰50周年の記念行事があちこちで行われたが、沖縄の人たちの心からの喜びの気持ちはあまり伝わってこなかった。代表的なコメントは、両親が沖縄出身の作家、仲村清司氏が5月14日付の朝日新聞で述べた「沖縄が、日本という国の一つの県、地方になりかかっている。沖縄にとって明るいことが待っているのかは、わかりません」という談話だ。見出しは「ヤマト化...
【第914回】憲法改正の好機が到来した
国基研副理事長 田久保忠衛 国際情勢の変化は日本に憲法改正の必要を促している。ウクライナ戦争によって北大西洋条約機構(NATO)諸国はこぞって防衛面の強化に乗り出し、とりわけ軍事忌避の傾向が強かったドイツは国内総生産(GDP)の1.5%だった防衛費を一挙に2%以上へ引き上げることになった。日本の防衛努力強化の動きに敏感な米国の一部リベラル派に存在した「軍国主義復活」警戒論も...
【第906回】国際無秩序を生んだ米国の力の低下
国基研副理事長 田久保忠衛 第2次世界大戦でチャーチル英首相の軍事首席補佐官を務め、戦後は北大西洋条約機構(NATO)初の事務総長になったヘイスティングス・イスメイ卿に、NATOの目的は「ロシアを除外し、米国を参加させ、ドイツを抑え込むことだ」との有名な言葉がある。中国の台頭など夢にも考えられない時代で、欧州に限定された勢力均衡を述べたものだが、国際政治の現実を見事なまでに...
【第896回】安全保障上の危機に鈍感な日本
国基研副理事長 田久保忠衛 トルーマン、アイゼンハワー、ケネディなど、戦後の米国の歴代大統領が民主主義、自由主義の大義名分を掲げ、颯爽さっそうと先頭を切って走った時代はどこへ去ってしまったか。 小国ウクライナが大国ロシアの大軍10万人以上によって侵略を受けているにもかかわらず、バイデン米大統領はウクライナ周辺の北大西洋条約機構(NATO)加盟国に限定的な派兵をした以外に...
【第888回】ウクライナ危機で見えた米欧同盟変質の兆し
国基研副理事長 田久保忠衛 ロシア軍はウクライナに侵攻するのか、侵攻するとすれば戦争はどのような規模になるのか、世界は息を潜めている。それはともかく、米国と欧州主要国の対応を観察していると、中長期的には西側の防衛体制に対する路線の相違が顕在化し、米欧間の大西洋同盟あるいは北大西洋条約機構(NATO)そのものが変化せざるを得ないのではないかと考えられる。 ●英仏独が...
【第882回】理事就任を快諾してくれた石原慎太郎氏
国基研副理事長 田久保忠衛 2月1日の夜7時のニュースで石原慎太郎氏死去を耳にした時はギョッとした。同じ年で、華麗な活躍を続けてきた彼が元気になって軽いランニングもできるようになり、その動画を見たばかりだったから、衝撃も大きかったのかもしれない。 ●創成期の活力源に 何よりも、石原氏にはわが国家基本問題研究所が大変お世話になった。発足前の平成18年だったと思う。...
【第879回】ドイツはロシアの同盟国か
国基研副理事長 田久保忠衛 米保守系誌ワシントン・エグザミナーのトム・ローガン氏は「ドイツはもはや信頼できる同盟国ではなくなった」と突き放し、リベラル系のニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、ロス・ドゥザット氏は「ドイツは一再ならずロシアの事実上の同盟国のように行動してきた」と、北大西洋条約機構(NATO)の裏切り者であるかのような表現をしている。2月7日にドイツのショル...
【第866回】米国は没落するか再起するか
国基研副理事長 田久保忠衛 新年に向けての国際情勢には三つの大きな潮流があると思う。第一は、戦後確立されたかに見えた国連などの国際機関が機能不全を露呈し始めたことだ。トランプ前米政権は国際機関からの脱退を開始したが、それをバイデン現政権が修正しつつある。次の政権がどのような行動をするか不明だ。第二は、中国のすさまじい勢いと言っていい台頭である。国力の増大だけならまだしも、他...
【第849回】改憲を国民の手で成し遂げよう
国基研副理事長 田久保忠衛 憲法改正にとってこれほどの好機はめったに訪れるものではない。「改憲勢力」とされる自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党の4党が国会による改正発議に必要な3分の2の議席を衆参両院で確保した。国民投票の利便性を高める改正国民投票法は去る6月、提出から3年の月日を経て、ともかく成立した。 岸田文雄首相をはじめ、細田博之衆院議長、自民党の茂木敏充幹...
【第837回】改憲へ岸田氏の熱意を信じたい
国基研副理事長 田久保忠衛 自民党内でもハト派と見られてきた岸田文雄新首相が「少なくとも(党総裁の)任期中に、時代の変化に対応した改憲をしっかり進めるべきだ」と述べた(9月17日の記者会見)。安倍晋三元首相の下で作成された①9条への自衛隊明記②緊急事態条項の創設③参院選の合区解消④教育の充実―という4項目の改正を実現したいとの熱意を表明したものだ。改憲を望む人々にとっては勇...
【第824回】アフガン退避作戦難航の根源に戦後体制
国基研副理事長 田久保忠衛 外務省も防衛省も頭が痛いだろう。アフガニスタンからの邦人等退避措置をめぐって、日本大使館員は現地の邦人を置き去りにして逃げた、自衛隊派遣が遅かった、救出できた邦人は1人だけだったなど、マスメディアからさんざんたたかれ、これから野党の追及も始まるだろう。が、見当外れの政府批判は御免被りたい。問題の根源は深いところにあるのだ。 ●空白の10日...
【第820回】タリバン勝利で米中対立構図に変化も
国基研副理事長 田久保忠衛 要するに、軍事力では世界最強の米軍が、イスラム原理主義勢力の一つに過ぎないタリバンに、20年間戦って敗北を喫したということだ。タリバンはスポークスマンの会見で、国際社会に柔軟に対応していくかのような姿勢を取っているが、かつて偶像破壊と称してアフガニスタン中部バーミヤンの石仏を破壊する暴挙を働いたタリバンが急に穏健路線に転ずるとは考えにくい。あると...
【第811回】意外に穏やかだった習主席の演説
国基研副理事長 田久保忠衛 習近平国家主席の中国共産党創設100周年式典における演説を報道した日本のメディアは「台湾」の部分を見出しに取った。ケチをつけるわけではないが、習主席は1時間余りの演説の最後の方でごく短く台湾に触れたにすぎない。強い表現と言えば、「いかなる『台湾独立』のたくらみも断固として粉砕し、民族復興の明るい未来を共に創造しなければならない」という箇所だけだ。...
【第801回】米英関係に程遠い日米関係
国基研副理事長 田久保忠衛 バイデン米大統領の表現に従えば、「民主主義体制と専制政治体制の対立」の中で、とかくぼやけがちな印象を与えていた民主主義陣営が、米国を中心にようやく形を整え始めたと見ていい。6月13日に発表された先進7カ国首脳会議(G7サミット)の共同宣言には、世界が当面する諸問題が盛り込まれたが、中心は「台湾海峡の平和と安定」ならびに「新疆ウイグル自治区での人権...
【第785回】米に軍事貢献の約束、問われる日本の実行
国基研副理事長・杏林大学名誉教授 田久保忠衛 日米首脳会談についての各紙論調は出尽くした感があるが、一言でその意義を表現すると、米国の対中政策の中で日本がより重要な役目を果たす約束をバイデン政権は取り付けたことにある。日本政府は「約束」だけでなく、「実行」の段階に移行する。志ある政治家なら、この機会をとらえて日本を一人前の国家にする絶好の機会とすべきではないか。 共同声...
【第780回】台湾有事で日本は何をする
国基研副理事長 田久保忠衛 16日にワシントンで行われる日米首脳会談は、バイデン米政権発足後初の外国首脳との対面での会談であり、同政権がいかに日本を重視しているかを示すものだ、と菅義偉首相は4日のフジテレビ番組で語った。感情を顔に表さない首相には珍しく誇らしさをのぞかせていたように思う。大いに結構なことだが、従来の日米首脳会談のように、先方の要請に応じるか、応じられない時に...
【第776回】対米交渉続行が中国の本音
国基研副理事長 田久保忠衛 米アラスカ州アンカレジで行われた米中外交トップ会談は、米側の冷静な姿勢に対して中国側が感情を高ぶらせ、思わず本音を吐いたところに意味があった。米国の民主主義は世界の中の一部諸国に共有されているにすぎないのに対し、中国の「民主主義」はより多くの国々の支持を得ていると言わんばかりの主張を耳にすると、両国間の和解は容易なことでは実現しないと思える。が、...
【第759回】尖閣ではっきりした憲法の限界
国基研副理事長 田久保忠衛 尖閣諸島の実効支配へ向けた動きを半世紀にわたってジリジリと強化している中国と、それに口先だけで反対する日本政府との差が、ついにここまで来てしまったかと複雑な思いがする。日本の海上保安庁に当たる中国の海警局に「管轄海域」で違法行為を取り締まるための退去命令や武器使用の権限があることを明記した海警法が2月1日付で施行された。 中国が領有権を勝手に...
【第758回】空しく響いた「団結」の呼び掛け
国基研副理事長 田久保忠衛 バイデン米大統領の就任演説の全文を読んだが、あまりにも「民主主義」の説明と「団結」の必要性が繰り返されているので、正直に言って、いささかうんざりした。この二つのキーワードを強調すればするほど、トランプ前大統領に票を投じた7400万人の神経を逆なでし、非民主主義的行動を挑発し、対立を呼び戻さないだろうか。米国は南北戦争以来の深刻な対立を秘めながら前...
【第751回】米新政権の誕生は日本の分水嶺に
国基研副理事長 田久保忠衛 今年の国際情勢の十大ニュースを選び出し、それぞれに論評を付け加えるマスメディア各社に倣うのは、あまりにも陳腐だ。一つだけ選択するとすれば、米大統領選挙で民主党のバイデン氏が当選したことだろう。選挙期間中に会った米国人から「お前はトランプ大統領が好きか嫌いか」との質問を例外なく受けたし、リベラル系新聞のトランプ批判も目にしたが、米国民が国際情勢を正...
【第720回】菅首相に欠けている国家像
国基研副理事長 田久保忠衛 「国民のために働く」とか「スピード感をもって実行する」という新味のない言葉が流行はやり、菅氏グッズまで売り出されるなど、菅義偉首相の評判は滑り出し好調だが、率直に言って不安がある。自民党総裁選を戦った菅、石破茂、岸田文雄の3候補に共通するのは国家観の欠如だ。国際情勢の中で日本がいかなる位置にあるのかを正確に把握しない限り、国家観は生まれてこない。...
【第705回】米の対中強硬方針は日本への戒め
国基研副理事長 田久保忠衛 7月23日にポンペオ米国務長官がカリフォルニア州のニクソン図書館で行った「共産主義中国と自由世界の将来」と題する演説は、トランプ政権の対中政策の中でも一時期を画する意義があったと思われる。 同長官が言わんとするところは、14億人の人民よりも党およびその指導者の利益を考えている中国共産党の行動は民主主義国とは相いれないので、「関与政策」は転換す...
【第702回】米が中国へ全面巻き返しを開始
国基研副理事長 田久保忠衛 中国の王毅国務委員兼外相は7月17日にロシアのラブロフ外相と電話会談をした際に、「(米国は)国際関係の基本ルールを破っている」と批判し、共に対抗しようと呼び掛けた。因果の関係を知ったうえでの発言かどうか。国際秩序の現状変更を求めてきたのは中国で、これに対する激しい応戦が政治、経済、軍事、イデオロギー、サイバー、宇宙、技術などすべての分野で米国によ...
【第700回】天は自ら助くる者を助く
国基研副理事長 田久保忠衛 トランプ政権の外交政策の内幕を暴露する著書を出版したボルトン前米大統領補佐官は最近、産経新聞とのインタビューで、トランプ大統領は従来の米大統領とは違って本当に米軍を撤収させるリスクがあり、経費負担の増額要求をもっと真剣に受け止めるべきだと語った。 昨年、トランプ大統領は、6月25日にブルームバーグ通信で報道されたのを皮切りに、米国だけが防衛義...
【第686回】戦闘的自由主義者、塚本三郎
国基研副理事長 田久保忠衛 旧民社党を自民党と旧社会党の中間に位置する政党だったと誤解している向きがいまだに少なくない。とんでもない浅い解釈だ。政党を右とか左といった単純な尺度で分類するしか能がないのか。 春日一幸委員長、塚本三郎書記長時代の1978年に、栗栖弘臣統合幕僚会議議長の解任問題が発生した。日本が奇襲攻撃を受けた場合、首相の防衛出動命令が出るまで自衛隊は動きが...
【第685回】曖昧外交の基は「吉田ドクトリン」
国基研副理事長 田久保忠衛 今から半世紀ほど前に、英誌エコノミストが日本の外交を「柔道外交」と形容し、ちょっとした話題になった。日本外交は押されれば引き、引かれれば前に出る。自分の余計なエネルギーを使わずして、相手を疲れ果てさせる。悪く言えば、外交で原理・原則は二の次、三の次にする好ましくない典型、という響きが込められていたように思う。 ●中国に腰が引ける日本 ...
【第644回】大変化の時代は改憲で対応あるのみ
国基研副理事長 田久保忠衛 1年間を振り返ると、世界の戦後体制といわれるシステムに一大変化が生じつつある。それが正しいか正しくないか、既成の価値観に合致しているかいないか、などは関係がない。世界の指導者の中で、「私は民主主義のリーダーだ」などと言っているのは、既に政治的にレームダック(死に体)になってしまったドイツのメルケル首相くらいだ。 強権政治は中国、ロシア、北朝鮮...
【第614回】憲法9条は日米同盟の障害に
国基研副理事長 田久保忠衛 戦後74年目の終戦記念日を迎えて思ったのは、国際情勢の舞台が一回転して、戦後とは別の局面が生まれつつあるということだ。日本全体が1日も早く覚醒してほしい。 終戦時に米国を中心とする連合国軍が考え出したのは、日本とドイツが軍事的に2度と立ち上がれない装置だ。日本には日本国憲法の9条を強要した。背景となったマッカーサー・ノートは、日本に自衛力の行...
【第604回】「第三の黒船」到来、日本は覚醒せよ
国基研副理事長 田久保忠衛 月刊「正論」1月号のコラム「激流世界を読む」の拙文の最後を、「ペリーの黒船、第2次大戦の敗戦と、米国に2度運命を変えられた日本に、第3の黒船が太平洋の彼方から近づいてくるのかも知れない」で結んだが、黒船はやってきた。にもかかわらず、日本の対応は政府・与党もマスメディアの大方も見当外れだ。 ●大統領発言は米国の総意 トランプ米大統領が私...
【第590回】皇室フィーバーだけでは嗤いものに
国基研副理事長 田久保忠衛 「令和」の意味について講釈はまだ続いているが、それは専門家に任せよう。指摘したいのは2点だ。一つは、異常なほどの皇室フィーバーが生まれながら、日本の国柄は何かという真面目な議論がなされていない。二つは、NHKの報道にそれとなく登場する「反戦平和」のイデオロギーの存在だ。 ●日本の「国柄」を対外発信しよう 日本という国家が立憲君主制なの...