公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

田久保忠衛の記事一覧

国基研副理事長 田久保忠衛    覇権国家間の対立を、古代ギリシャのスパルタとアテネの抗争になぞらえて「トゥキディデスの罠わな」の名文句を広めたのは米ハーバード大学のグレアム・アリソン教授だ。そのアリソン氏がフォーリン・アフェアーズ誌7-8月号に「リベラル・オーダー(自由主義的国際秩序)の神話」と題して一文を書き、米国は国際秩序の維持者たらんとするよりも自国の健全な民主主義再生に...

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国基研副理事長 田久保忠衛    まさか戦前の日独同盟に郷愁を抱いているのでもなかろうが、日本人には、ドイツに好意的な人が少なくない。個人が親近感を抱くのは勝手だが、国家間の交際は冷静に願いたい。とかく問題を起こす政治家だが、トランプ米大統領は7月の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議でドイツの防衛負担が少なすぎると大々的に批判し、同時にNATOの潜在敵国でもあるロシアからドイツ...

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国基研副理事長 田久保忠衛    第2次世界大戦中にチャーチル英首相の筆頭軍事顧問を務め、北大西洋条約機構(NATO)の初代事務総長だったイスメイ卿の有名な言葉がある。NATOの目的を「ロシアを締め出し、米国に関与させ、ドイツを抑え付ける」(to keep the Russians out, the Americans in, and the Germans down)ことにある...

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国基研副理事長 田久保忠衛    米国屈指のシンクタンクである外交問題評議会のアジア研究部長、エリザベス・エコノミー女史がフォーリン・アフェアーズ誌5~6月号に「中国の新革命」と題し、説得力に富む文章を書いている。毛沢東の第一革命、鄧小平の第二革命に続く習近平国家主席の第三革命の特徴を「自由主義的な世界秩序の中で中国はリーダーシップを手にしようとしている非自由主義国家である」...

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国基研副理事長 田久保忠衛    戦争に敗北した日本が一時期目指した「軽武装・経済大国」の代名詞「吉田ドクトリン」の亡霊は永田町に生きていた。自民党の岸田文雄政調会長率いる岸田派(宏池会)が4月18日に公にした政策である。  ●岸田派が「平和憲法」擁護  読売新聞4月19日朝刊の記事によれば、政策骨子の名称は「K-WISH」。キーワードは「トップダウンからボトムアップ...

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国基研副理事長 田久保忠衛    4月から5月にかけて日米、南北、米朝首脳会談が相次いで行われる。情報が錯綜さくそうしている今、状況をどう整理したらいいか明言はできないが、3月26日に北京で中国の習近平国家主席と北朝鮮の金正恩労働党委員長が初の会談を行ったのを契機に、北朝鮮を包囲していた日米韓中の結束がほころび、「日米韓」対「中朝」の対立に戻ったと見ていいのではないか。 ...

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国基研副理事長 田久保忠衛    今年を振り返って目立った国際情勢の特徴を挙げよと言われたら、無謀な核・ミサイル実験を続けてきた北朝鮮、「危険な台頭」をためらおうともしない中国、大統領の言動が予測不可能な米国の三カ国ということになろうか。北朝鮮と中国については日本における研究もかなり進んでいるが、同盟国として誰もがなじんでいるはずのトランプ政権の性格はいまだ正確に分析されてい...

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国基研副理事長 田久保忠衛    トランプ米大統領のあら探しを最初から虎視眈々たんたんと狙ってきたリベラル系新聞の酷評は割り引いて読まなければならないとしても、今回のアジア大旅行は米国本来の指導性に欠けていた。  中国訪問の大きな目玉は、①米中貿易の不均衡を是正する②北朝鮮の核・ミサイル実験をやめさせるため中国により重要な役割を担わせる―の2点だったが、前者はひどい失敗だった。...

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国基研副理事長 田久保忠衛    トランプ米大統領は11月3日から14日まで12日間にわたって日本、韓国、中国、ベトナム、フィリピンのアジア5カ国を訪問する。米国にとって日本、韓国、フィリピンの3カ国は同盟国、ベトナムは新たな「戦略的パートナー」だ。そこにアジアの大国としての中国を加えたのは、朝鮮半島の今後に中国が重大な役割を担うと米国が判断しているからだ。米政府は中国に圧力をか...

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国基研副理事長 田久保忠衛    衆院解散に打って出た安倍晋三首相の念頭にあるのは、北朝鮮の核・ミサイル開発という未曽有の脅威に直面しながら、日本人の危機感は全体として極めて低いとの認識にほかならない。日本国民のかなりの部分は朝鮮半島情勢の緊迫などどこ吹く風だ。  残念ながら今の憲法も、その基になったメモ書きのマッカーサー・ノートも、日本人から「独立自存」の精神を奪うところに眼...

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国基研副理事長 田久保忠衛    日本のメディアも米英のメディアも一刀両断というわけにはいかないのだろう。戦後72年に及んだ国際秩序の枠組みをトランプ米新大統領はガラリと変えようとしているのに対して、トランプ政権内部には従来通りの思考で外交を続けようとする閣僚が少なくないのだから。  しかし、トランプ大統領は就任演説で、米国が戦後果たしてきた世界における指導的役割を、外国の...

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国基研副理事長 田久保忠衛    2016年最大のニュースは「トランプ現象」だったと思う。戦後71年間の米国史における異常な変化で、これが国際政治、外交、経済、軍事、情報、技術などの分野にどのような影響を及ぼしていくだろうか。  ●「絶対的衰退」への懸念  冷戦終焉の少し前に、米エール大学歴史学教授のポール・M・ケネディが「大国の興亡」を書いて世界的なベストセラーにな...

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国基研副理事長 田久保忠衛    いささか早とちりになるかもしれないが、米大統領選挙後の国際情勢は、恐らく戦後最大の混乱期に突入するだろうと予想する。  ●期待できない米のリーダーシップ  一つは、ウソ、信頼の裏切り、秘密の暴露など個人が持つ非道徳性を洗いざらいに出し合った2人の大統領候補の1人がホワイトハウス入りするのだ。新大統領は自分の党すらまとめられない上に、民...

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国基研副理事長 田久保忠衛    自民党の事情に詳しいとされる産経新聞の阿比留瑠比論説委員兼政治部編集委員が10月27日付の同紙に「悲願の改憲なぜ論議進まぬ」を書いているのを読んで、「やはり」と合点した。  いわゆる改憲勢力が衆参両院で憲法改正の発議に必要な3分の2を超えたにもかかわらず、安倍晋三首相をはじめ自民党がさっぱり腰を上げようとしない。その理由は、年末にも衆院解散...

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国基研副理事長 田久保忠衛    7月10日投開票の参院選で、自民、公明両党などいわゆる改憲勢力が非改選議員を含めて憲法改正発議要件である総議席の3分の2を上回る議席を確保したから、与党の大勝と称しても間違いないのだが、それにしても奇妙な選挙だった。かねて改憲論者だった安倍晋三首相は「改憲を争点にしない」と消極的発言を繰り返し、対照的に野党民進党の岡田克也代表は目を三角にして...

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国基研副理事長 田久保忠衛    英国の欧州連合(EU)離脱の是非について、国際情勢の客観的分析者であれば価値判断を軽率に下すべきではないと考える。離脱に票を入れた52%の英国人は愚鈍な人たちなのだろうか。良い悪いは別にして、国際秩序はこのような形でいつの間にか新しい局面を迎えるものだと私は見ている。  ●民主主義国に共通する国民の不満  注目すべき点の第一は、第2次...

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国基研副理事長 田久保忠衛    5月20日に台湾民進党の蔡英文主席は第14代総統に就任した。台湾史上初の女性総統が中国に接近していた国民党の馬英九前政権に比べてどのような方向性を打ち出すのかに関心を抱いていた私は、「自然体」と言っていい淡々とした就任演説にホッとした。    ●台湾新総統の就任演説  就任演説は理路整然さを要請される学会での報告ではない。台湾にいるのは...

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国基研副理事長 田久保忠衛    1月12日から台湾を訪問して17日夜に帰国し、日本の報道ぶりを一覧したが、朝日新聞の台北支局長が一面に書いていた「高まる台湾人意識」と題する豆解説は光っていた。民進党の蔡英文主席が16日の総統選挙に勝って、詰めかけた夥(おびただ)しい人々を前に演説をした場面を目にした者でなければ分からない。蔡主席は「ナショナル・アイデンティティー」という言葉...

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国基研副理事長 田久保忠衛    今年から来年にかけての世界の大問題は何か。残念ながら、東シナ海でも南シナ海でもない。国家ではない国際テロ組織またはその同調者が主権国家群を振り回している人類史上初めての現象だ。米国、ロシア、フランス、英国などの主要国はイラクとシリアにまたがる「イスラム国」(IS)の拠点を連日猛爆しているが、今年パリ(2回)と米カリフォルニア州サンバーナディー...

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国基研副理事長 田久保忠衛    日本人に国際情勢の分析で大局観に欠ける傾向があるのは、戦後も変わらない。だからこそ安倍晋三首相は機会あるごとに「地球を俯瞰する外交」を口にしているのだろう。  今の国際社会におけるトラブルはオバマ米大統領の不作為に原因があると断定しておこう。それがシリアの内戦につながり、「イスラム国」(IS)を生んだ。弱腰のオバマ政権はイラクに軍事顧問を送...

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