公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

田久保忠衛

【第644回】大変化の時代は改憲で対応あるのみ

田久保忠衛 / 2019.12.23 (月)


国基研副理事長 田久保忠衛

 

 1年間を振り返ると、世界の戦後体制といわれるシステムに一大変化が生じつつある。それが正しいか正しくないか、既成の価値観に合致しているかいないか、などは関係がない。世界の指導者の中で、「私は民主主義のリーダーだ」などと言っているのは、既に政治的にレームダック(死に体)になってしまったドイツのメルケル首相くらいだ。
 強権政治は中国、ロシア、北朝鮮だけでなく、イラン、トルコ、ポーランド、ハンガリーに出現した。欧州全域にダブって存在するポピュリスト勢力の増大を併せて考えると、やはり国際社会の潮の目は変わりつつある。

 ●半端でない「トランプ現象」
 インターナショナリズムが急激にナショナリズムに転換したのだとの解釈は分かりやすいが、それは全てを説明していない。時流を最も大きく動かしたのはトランプ米大統領で、「米国第一主義」を本格的に進める気であることがようやく世界に理解されつつある。
 トランプ大統領は、国際主義の修正、同盟諸国間の防衛費の公正な分担、貿易収支の不均衡是正などを臆することなく推進している。波乱に富んだ政治家だから、来年11月の大統領選まで何が起きるか不確実な点もないではないが、米国内に発生している社会変動と米国人気質の変わりようは、「トランプ現象」が半端ではない事実を物語っている。
 マティス前米国防長官は辞任した際に、大統領に対して同盟関係を重視するよう諫言かんげんしたが、今にして思えば、話の辻褄つじつまは少々合わない。米国第一、国際主義に反対、自国防衛は自分で、という覚悟を固めた最高指導者が采配を振れば、当然、同盟国軽視となる。トランプ大統領は首尾一貫しており、マティス前長官はトランプ大統領を誤解していたと言っていい。

 ●揺らぐ戦後の集団安保体制
 戦後最大の集団安全保障体制であり続けた北大西洋条約機構(NATO)は、マクロン仏大統領がいみじくも言った通り「脳死」状態だ。防衛費を国内総生産(GDP)比2%にする目標を達成したのは、加盟29カ国中、9カ国だけという無責任ぶりだ。トランプ大統領自身もNATOに無断でシリア北部から米軍を撤退し、NATO加盟国トルコは米国の盟友クルド人勢力を攻撃した。ロシアだけが漁夫の利を得た。
 米国を命綱とする日米同盟関係は不変だが、日本も早急に時代に対応しなければならない。最重要な安全保障政策は自衛隊の国軍化だ。その一歩手前の不十分な策ではあっても、憲法改正なしに日本の存立はあり得ない。(了)