中国、ロシア両海軍は8月1日から5日にかけてロシア極東のウラジオストク軍港周辺で共同演習「海上聯合-2025」を実施、その後6~20日に水上艦艇グループが西太平洋で、潜水艦グループが日本海及び東シナ海でそれぞれ共同パトロールを行った。中露潜水艦の共同パトロールが報道されたのは初めてである。
●初の潜水艦共同パトロール
防衛省統合幕僚監部の発表によると、8月13日に中国海軍ミサイル駆逐艦と潜水艦救難艦各1隻が、8月14~15日に露海軍フリゲート艦、潜水艦及び救難曳船各1隻がそれぞれ対馬海峡を南下し、日本海から東シナ海へ航行した。いずれも5日まで「海上聯合-2025」に参加していた艦艇である。露海軍艦艇は20日以降、同海峡を北上し、ロシア方向へ帰っていった。
27日にロシアのタス通信が「中露潜水艦は日本海と東シナ海の2000カイリ以上の海域で2週間の共同パトロールを実施、これはアジア太平洋地域での初の潜水艦共同パトロールである」と報道した。
潜水艦共同パトロールに関する中国の報道は現時点で確認されていないが、トランプ米大統領が8月1日、ロシアのメドベージェフ前大統領の挑発的な発言を受けて「原子力潜水艦2隻を適切な海域に配備する」と発表しており、米国を牽制したいロシアに中国が協力したと考えられる。
中露は2012年に初の2国間共同演習を実施して以降、年々その規模を拡大している。共同パトロールについては、2019年から空中共同パトロールを、2021年から海上共同パトロールを開始し、今回初の海中共同パトロールの実施となった。
潜水艦は通常単独で行動し、海中で連絡をとると位置が露呈する恐れがある。従って今回のパトロールも中露両国で予め哨区(哨戒活動を行うエリア)や時間を調整して別々に実施し、収集した海洋情報(海底の地形や表層、海潮流、水質等の情報)や音響情報(潜水艦固有の音紋等)等を事後に共有する形をとった可能性がある。海で中露の潜水艦が連携を保ちながら作戦を行う、といったものではなかったと思われる。
●情報共有で中国軍の能力向上へ
しかし、ロシアの潜水艦は中国の潜水艦に比べ静粛性が高いため、一般的に中国より音響情報収集能力が高いと考えられる。
今回の共同パトロールを機に中露軍事協力が空中、海上に加え海中にも拡大し、恒常的な情報共有の枠組みが整えられれば、中国がロシアがソ連時代から収集し、データベース化している日米艦艇の音響情報等を利用できることになる。
これは、中国の日米艦艇に対する情報収集・識別能力向上に繋がり、日本列島から台湾、フィリピンへ続く第1列島線内の日本海、東シナ海で日米の作戦行動を許さない「領域拒否」を目指す中国を資することになる。中露の軍事協力の深化に警戒しなければならない。(了)