9月3日、中国の天安門広場では「中国人民抗日戦争及び世界反ファシズム戦争勝利80周年」記念閲兵式(軍事パレード)が開催される。
この軍事パレードには各国や国際機関の要人が招待されている。10年前の70周年軍事パレードには、ロシアのプーチン大統領、韓国の朴槿恵大統領、国連の潘基文事務総長等が出席、欧米諸国も外相や在中国外交官等を派遣した。
中国外務省は本年の外国要人招待者リストを現時点で明らかにしていないが、8月31日~9月1日に中国・天津で上海協力機構(SCO)首脳会議が開催され、これに出席するプーチン大統領やインドのモディ首相らSCO加盟国の首脳や、中国の広域経済圏構想「一帯一路」で関連の深いアジア・アフリカ諸国の首脳らが参列する可能性がある。
●共産党政権の正統性を喧伝
もともと中国では、軍事パレードは建国記念日にあたる10月1日の国慶節にしか行われなかった。しかし習近平氏が国家主席に就任した翌2014年、中国は9月3日を「中国人民抗日戦争勝利記念日」と法律で定め、「中国人民抗日戦争は中国人民が日本帝国主義の侵略に抵抗した正義の戦争であり、世界反ファシズム戦争の重要な構成部分」であるとした。そして70周年に当たる2015年に外国の要人を招き、軍事パレードを初めて9月3日に実施した。
その目的の一つは、中国共産党の正統性の喧伝だ。日中戦争において日本軍と戦ったのは主に国民党軍であることは周知の事実だ。しかし、現在共産党が中国を支配している正統性を主張するには、日本に勝利し中華人民共和国を建設したのは共産党であらねばならない。よって共産党の軍である人民解放軍のパレードにより、勝利したのは共産党軍だと世界中に喧伝する。
また、習氏自身の権威付けも目的であろう。「世界反ファシズム戦争」との連携を強調することにより、西側諸国を式典に参列させようとする。特に、中国経済の悪化や政権内部の異常な人事異動が続いている現状において、参加する外国要人の数とランクが上がれば上がるほど、国内的には世界に認められた指導者としての習氏の権威付けになる。更には台湾を国際社会から孤立させようとする意図も見える。
●参列は力による現状変更の容認
今回も70周年の時と同様に、プーチン大統領が習氏の隣で共に軍事パレードを参観するのであろう。中国はロシアによるウクライナ侵攻後もロシアとの協力強化を公言している。外国要人が上記のような思惑のある行事に中露首脳と共に参列することは、中露の力による一方的な現状変更を容認することに他ならない。各国はこのような軍事パレードへの出席を毅然として拒否し、中露に「ノー」を突き付けるべきである。
70周年の時には日本政府は潘事務総長の参列について、「中立性に問題がある」とし、国連日本代表部を通じて潘事務総長側にその旨伝えたと報じられている。今回も日本政府は、戦後80年平和の道を歩み続けた実績に誇りを持ち、各国と国際機関にさらに強く情報発信をすべきである。(了)