「令和」の意味について講釈はまだ続いているが、それは専門家に任せよう。指摘したいのは2点だ。一つは、異常なほどの皇室フィーバーが生まれながら、日本の国柄は何かという真面目な議論がなされていない。二つは、NHKの報道にそれとなく登場する「反戦平和」のイデオロギーの存在だ。
●日本の「国柄」を対外発信しよう
日本という国家が立憲君主制なのか共和制なのか、学者の間でも極めて曖昧な意見が交わされてきたが、欧州諸国の王制とは違った歴史を2000年間続けてきた日本は、欧州とはやや異なる性格を持った立憲君主国家と言っていい。
福沢諭吉が「帝室論」で「我帝室は日本人民の精神を収攬するの中心なり。其功徳至大なりと云ふ可し」と述べているように、人民を征服して樹立された欧州の王制とは性格が違う。
だからそれを明確にし、日本のアイデンティティーを外国に向かって明らかにするよう努めようではないか。
憲法に元首の規定もない。元首は誰かと問われて答えられる日本人は少ないが、外国人は皆、天皇陛下を元首と見なしている。こういう恥ずかしい現状を改めるべき時期が到来したと思う。
NHKの報道で何度も奇妙な印象を抱いたのは、小学校1~2年生の子供がマイクを向けられ、「より平和な時代になってほしい」とあどけない顔で語っていたことだ。この子は本当に戦争を知っているわけではないのに、何故「平和」を希望するのか。
新しい元号の時代に何を望むかとのNHKのアンケートで、最も多かった回答は「平和でした」というニュースに込められているのは、「反戦平和」の思想だ。小学生が平和を口にするのは不自然である。大々的な報道で反戦平和のムードが広がると、憲法改正を唱えたり、安全保障の必要を説いたりする人や集団は「好戦」勢力と見なされかねない。事実は正反対だろう。
●「反戦」思想から脱皮せよ
われわれは中国の巨大な政治的野心と向かい合っている。「一帯一路」構想に代表される野望の波はアジア、中東、欧州にとどまらず、トンガ、フィジー、ソロモン諸島など太平洋諸国にも押し寄せている。日本の中にも、わざわざ北京に詣で、「一帯一路には日本の出入り口として沖縄を活用してほしい」と要請した知事もいる。話にならない。
日本にとって不可欠の同盟国である米国のトランプ政権の評価はさて置き、米国内の世論が大統領をめぐってこれほど大きく割れた時代はないのではないか。安倍晋三首相とトランプ大統領の関係は強固だが、伴うリスクも大きい。
思い切った脱皮をしないと、世界の嗤いものになる時代に入ったと考える。(了)