3月22日の「ろんだん」において、ウクライナの惨状に鑑み、ジェイソン・モーガン氏から、『日本に「国民即応隊」を創設せよ』との熱いメッセージを頂戴した。氏のイメージは、志のある一般国民が、有事はもちろん大規模災害時、緊急的に集まり、技術的な側面などにおいて自衛隊の足らざるところを補うということのようである。負傷者の手当て、仮設避難所の設置、自衛隊到着までの秩序維持によって、直ちに近隣住民を助けることができる。同時に、友人、家族、隣人、故郷を守るため具体的な行動を取る共通の責任感と心の準備を認識させることで、日本人の愛国心をもう一度呼び覚ますことにも役立つという。
日本を想い、「民間防衛」の必要性に目覚めよとの貴重な提言と捉え、氏に感謝したい。
諸外国は「民間防衛」として活用
氏の提言により改めて気づかされたのが、日本には国・自治体が国民を守るという「国民保護」の法律や制度はあっても、一般国民が有事などの非常事態において「自ら志願して自らを守る」という概念や制度を有していないことである。もちろん、災害時における自助・共助・公助という概念の中で、近隣同士の協力や被災地以外からのボランティアによる共助はあるが、真の意味での「民間防衛(Civil Defense)」体制は存在しない。
「民間防衛」はジュネーヴ諸条約第一追加議定書第61条において、「文民たる住民を敵対行為又は災害の危険から保護し、文民たる住民が敵対行為又は災害の直接的な影響から回復することを援助し、及び文民たる住民の生存のために必要な条件を整えるため、次の人道的任務の一部又は全部を遂行することをいう」。そこに示された任務として、警報、疎開、シェルター(退避所)の管理、救助、医療(救急措置を含む)や防火など15項目が挙げられている。
スウェーデンの民間防衛は有名だが、英国政府も、2004年にテロ・ミサイル攻撃・自然災害・伝染病など多様な緊急事態に対する包括的な民間防衛の枠組構築を目的とした民間緊急事態法を制定している。またバルト3国も、憲法と国家安全保障戦略において、民間人が外部からの侵略に効果的に対抗する方法を指示していると聞く。さらにウクライナでは、民間人たちによる市街地戦に備えた防御用資機材の制作・設置や、ドローン運用によるロシア軍の情報収集などにおいて貢献していると報道されている。
まさに民間でできる自助・共助は可能な限り民間で実施し、公助への負担を減らすとの概念であろう。モーガン氏の言う、自衛隊の足らざるところを補うとの考えと符合する。
憲法改正の議論でも検討を
日本においては、武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護し、並びに武力攻撃の国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることの重要性に鑑み、国民保護法が制定されている。その第4条(国民の協力等)において、国民は、住民の避難、避難住民等の救援、武力攻撃災害への対処、武力攻撃災害の復旧など、国民保護のための措置を実施する場合の協力要請に対して、「必要な協力をするよう努める」とされている。しかしながら、具体的に、いつ、どのように、何に努めるのか、国民の認識は高くないものと思われる。
有事などの「国家非常事態」に際し、国民の生命の保護そして国民生活などへの影響を最小化することは、国の重大な責務であり、同時に国民一人ひとりにとっても命に関わる重大な事柄である。このような視点からも、今後、緊急事態条項に関する憲法改正論議において、議論が深まることを期待したい。
第101回 国民の国防意識はまだ低い
米国の民兵組織とは違うが自衛隊には予備自衛官制度がある。今日のウクライナは明日の台湾・日本。有事への備えを国民全体が意識して欲しい。