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2022.03.22 (火) 印刷する

日本に「国民即応隊」を創設せよ ジェイソン・モーガン(麗澤大学准教授)

ここ数週間、世界はウクライナで驚くべき出来事を目撃してきた。資金、装備、兵員数のどれをとっても優勢なロシア正規軍の侵攻に対し、ウクライナ国民が武器を取って立ち向かったのだ。ウクライナ政府軍の足りないところを一般国民が補っている、女性も祖国防衛のために多数が志願した。

日本がここからくみ取るべき教訓は明白である。日本政府は、外国軍の本格的侵攻その他の緊急事態に際して祖国を守るため、志のある国民の即応体制をつくることに直ちに取り掛かるべきである。

社会全体で緊急時に対応

 日本には訓練の行き届いた非常に有能な自衛隊があるものの、敵対的な外国の大規模攻撃や大きな自然災害には、日本社会全体で対応する必要がある。また、非常勤の自衛隊員として予備自衛官の制度があるが、予備自衛官になるのは国民のほんの一部にすぎない。一般国民にとって、予備自衛官になるのに時間を取られ過ぎる、ということもあるかもしれない。自衛隊にはもっと助けが必要だ。

国家緊急事態に必要となる技術的な能力をできるだけ広範囲に普及させるために、私は志願者から成る「国民即応隊」の創設を提案する。志願者は通常の仕事を続ける一方で、日本の防衛や危機の際の支援に備えて、1回限りの教育訓練を受ける。その期間は週末3日間だけでもよい。訓練生は野営の仕方や火器の使用・手入れ法など、初歩的な軍事技術やサバイバル技術を学ぶ。また、心肺機能蘇生術、基本的な消火術、トリアージ(救命順序の決定)、現場での傷の手当てなど、貴重な救命技術を教わる。

国民即応隊の武器弾薬は全て政府の厳格な管理下に置かれ、訓練の際や緊急時にだけ使用されるものとする。

侵攻に対する日本の防衛は、国民即応隊が日本社会の役に立つ一例に過ぎない。東日本大震災の際の災害救助・救援活動は、自衛隊の大きな強みを行動で示した。国民即応隊は自然災害時の救助・救援活動を助けることにより、自衛隊の優れた作戦効果を何倍にも高めるだろう。

愛国心呼び覚ます役割も

さらに、国民即応隊の隊員は民間人なので、政府からの命令を待つ必要がない。災害がいつどこで起きても、負傷者の手当て、仮設避難所の設置、自衛隊到着までの秩序維持によって、直ちに近隣住民を助けることができる。

志願者は日本国民である必要はない。敵対国の旅券保持者でなければ、日本に住む者を誰でも国民即応隊に迎え入れるべきだ。自然災害や外国軍侵攻の時、友好国出身の日本居住者が協力でき、支援できるようにすべきだ。

私がこれまでに出会った日本の若者の多くは、外国の侵攻があれば逃げると言っていた。国民即応隊は平均的日本人の愛国心をもう一度呼び覚ます中心として役立つのではないか。友人、家族、隣人、故郷を守るため具体的な行動を取る共通の責任感と心の準備は、国民即応隊の志願者が受ける訓練を通じて育まれる。祖国愛の回復は国民即応隊の最も好ましい副次的効果の一つである。

ウクライナで起きていることは日本でも起こり得る。国民即応隊は命を救い、侵攻を防ぐ。日本は今こそ緊急時の準備をすべきだ。
 
 

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岩田清文 / 2022.03.25