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2021.12.20 (月) 印刷する

今こそ憲法改正論議を強力に進めよ 織田邦男(東洋学園大学客員教授 元空将)

12月16日、衆議院選挙後、初めての憲法論議が衆議院憲法審査会で行われた。自由民主党が「自衛隊の明記」など4項目をたたき台とし、「国民のための憲法論議を一層深めていきたい」と述べたのに対し、立憲民主党は「『論憲』の立場をとり、必要な議論は行っていくが、特定の改正案を前提とするものや、改憲ありきであってはならない」と述べた。

日本維新の会は「来年の参議院選挙で憲法改正の国民投票を」と具体的スケジュールを示し、岸田政権が「精力的な審査をリードすべき」と前向きな姿勢を示した。国民民主党も「今後は『分科会方式』で審議を進めるべき」と積極姿勢であった。公明党も一応「緊急事態での国会の機能維持」など、具体的に「議論を進めるべきだ」と述べた。

代表選後も議論に及び腰の立民

これに対し、「審査会は動かすべきではない」という共産党は論外としても、「ゆっくり議論すべき」「拙速な改憲は危ない」と旧態依然とした立民はどうしたものか。

立民は衆議院選挙での惨敗を受け、枝野幸男代表が辞任し、大々的に代表選挙をやったばかりである。あの時の議論は何だったのか。立候補した泉健太政調会長(当時)は「衆参両院の憲法審査会でしっかり論じる姿勢で臨む」と述べた。他の3候補も、憲法議論に前向きな考えを示した。

それが1カ月も経たないうちに、「憲法改正そのものが目的化している論議は論じるに値しない」と一転、まさに先祖返りである。代表選での憲法改正発言は、ただ単なるリップサービス、もしくはアリバイ作りだったのか。

これまで「安倍政権での憲法改正は応じない」といった難癖に近い反対のための反対を演じてきたのが枝野代表下の立民だった。新しい代表を得て、少しは生まれ変わるかと期待したが、大いなる失望に変わった。入り口論で拒否する姿勢は全く変わっていない。

政治は「改正支持」の世論を聞け

我が国は今、3つの核武装独裁国家に囲まれ、3つの国と領土係争を抱えている。その内、中国は我が国のシーレーン上にある台湾を武力併合しようとしている。台湾有事は起こるか否かではなく、いつ起きるか、どのように起きるかという段階にある。

台湾が併合され、中国海軍、空軍が台湾に進駐すれば、我が国のシーレーンは中国に押さえられる。貿易立国であり、資源の大半をシーレーンに依存する日本は中国の属国に成り下がらざるを得ない。まさに悪夢であり、あらゆる手立てを講じて、これを防がねばならない。軍事、外交、情報、経済、金融、貿易など、「あらゆる手立て」を講じる障害となっているのが、既に賞味期限の切れた現行憲法であることは、少しの良識さえあれば分かるはずだ。

最近の世論調査(NHK)では、憲法改正について「必要がある」が33%、「必要はない」が20%、朝日新聞の調査(11月)でも、「賛成」40%、「反対」36%。いずれも改正派の方が多い。「賞味期限切れ」の認識は日本国民の方が立民党、共産党より鋭いということだ。

立民は何を恐れているのか。まさか現行憲法が現下の情勢下で最適とでも思っているわけではあるまい。国際情勢は刻々と動いている。欠陥だらけの現行憲法を抱きしめていれば平和が天から降ってくる時代はもう既に終わっている。

待ってはくれぬ安全保障環境

自民党の新藤元総務大臣は「与野党の枠を超えて審査会が円満に運営できるよう心がけたい」と述べた。もうこの悠長な発想こそ変えるべき時である。

日本を取り巻く厳しい安全保障環境は待ってはくれない。自民、維新、国民、公明と多数派で改憲論議を強引にでも進めるべきだ。立民は「強引にやれば意固地になる」と牽制しているが、まるで子供の喧嘩だ。こんなものに付き合っている暇はない。