公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

織田邦男

【第1117回】今こそウクライナを強力に支援せよ

織田邦男 / 2024.02.13 (火)


国基研企画委員・麗澤大学特別教授・元空将 織田邦男

 

 1月14日、ロシアの早期警戒機A50(メインステイ)がウクライナ南東のアゾフ海上空でウクライナ軍の対空ミサイルによって撃墜された。日本ではあまり報道されていないが、外国メディアはこの日をロシア軍の「暗黒の日」と伝えた。A50 が撃墜された軍事的意味は大きい。
 A50は、半径650キロ以内の航空機を発見し、半径300キロ内の地上目標を探知できる。ロシアの対ウクライナ軍事作戦には欠かせない装備である。米軍の空中警戒管制機(AWACS)E3に相当するが、E3が空中目標だけを対象とするのに対し、A50は地上目標も対象にする。米軍の地上目標専用の早期警戒機E8(ジョイントスターズ)の機能を兼ね備えた装備である。

 ●早期警戒機撃墜で戦況変化も
 西側情報筋によると、開戦前、ロシアはA50を6~9機保有しており、故障が多く稼働率は5割以下といわれる。昨年2月にはウクライナによるドローン攻撃で1機を地上で失っている。制空権獲得、対地攻撃、空地連携などの作戦には不可欠で、しかも数が少なく、高価であるため、ロシア軍にとっていわば「虎の子」である。これを新たに1機失ったこと、特に十数名の熟練クルーを同時に失ったことは、ロシア軍にとって大きな痛手となる。
 ウクライナ軍は二つの致命的な弱点を抱える。制空権を獲得できないことと、外国の武器弾薬支援に大きく依存していることである。
 今年夏にはF16戦闘機約40機が北大西洋条約機構(NATO)諸国からウクライナに供与される。これが戦力化されると弱点が補強され、戦況は大きく変わる可能性がある。ロシアはF16が戦力化される前に、これを地上で壊滅させようとするだろう。この作戦にA50は欠かせない。
 米国からの武器弾薬の支援は、議会で予算が通らずストップしているが、欧州連合(EU)は4年間で総額500億ユーロ(約8兆円)の支援を決めた。支援物資が現場に届く前に地上で叩くのが作戦の常道である。この作戦にもA50は必須である。
 今回の撃墜で、ロシア軍によるA50の24時間運用はますます困難となり、警戒監視に空白が生じることが予想される。ウクライナ軍は当然その間隙を突いて行動するだろう。ここに一筋の光明が差す。

 ●日本ができる間接軍事援助
 日本は、この一筋の光明を増幅すべく、今こそウクライナに強力な支援を実施すべきである。先ずは、昨年末の防衛装備移転三原則の運用指針改正で米国への輸出が可能になったライセンス生産品の地対空ミサイル「パトリオット2」(PAC2)を大幅に増産し、対米輸出を継続することだ。ウクライナへの軍事支援で足りなくなった米軍の備蓄を日本からの輸出で補えば、日本にとって間接的な対ウクライナ軍事支援となる。同様なやり方で砲弾の支援も検討すべきだろう。
 ウクライナ戦争は、ロシアの「力による現状変更」、つまり明白な侵略戦争である。これを成功させれば国際秩序は崩壊する。中国による台湾侵攻、尖閣、沖縄への侵略を促す可能性もある。日本はあらゆる支援を検討し、ロシアに勝たせてはならないのだ。(了)
 
 

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