4月10日の日米首脳会談で、「未来のためのグローバル・パートナー」と題する共同声明が発表された。11日、岸田文雄首相は米議会演説で、日本はグローバル・パートナーとして応分の責任を果たすと力説した。
グローバル・パートナーシップが日米首脳会談で取り上げられたのは、初めてではない。竹下登、海部俊樹、宮沢喜一各元首相の首脳会談でも取り上げられた。今回、ウクライナ戦争、イスラエル・ハマス戦争、中国の覇権主義的行動、北朝鮮の相次ぐミサイル発射など、安全保障環境が戦後最悪なだけに、メディアなどの注目は軍事面でのパートナーシップに集まっているようだ。岸田首相が「(米国と)共に大きな責任を担う」と大見えを切ったので、自衛隊は米軍と共に地球の裏側まで行って戦うのか、という誤解に基づく懸念の声も聞こえる。
●外交・防衛・経済・技術・情報で米と協働
2022年末に閣議決定された国家安全保障戦略では、外交力、防衛力、経済力、技術力、情報力の五つの手段を有機的、効率的に用いる戦略的アプローチで安全保障上の目標を達成するとある。なるほど同盟の中核は防衛力なので、米軍と自衛隊の指揮統制枠組みの向上、日米比三か国の安全保障協力強化、米国の拡大核抑止の強化などに注目が集まるが、共同声明には、防衛力以外の協働の方が多く盛り込まれている。
「外交力」では、日米韓、日米豪、日米英、米英豪(AUKUS)といった「志を同じくするパートナー」との協力枠組みを強化し、国連憲章の目的と原則の堅持を全加盟国に求めるとした。また「インド太平洋における誤解と誤算のリスクを低減」するため、「中国との率直な意思疎通の重要性」を強調した。
「経済力」では、イノベーションの促進、産業基盤の強化、日米経済政策協議委員会(経済版「2+2」)を通じた経済安全保障の強化、強靭なサプライチェーンの促進、経済的威圧の抑止と対処のための協力などがうたわれている。
その他、「技術力」では、①人工知能(AI)、量子技術、半導体等の次世代の重要・新興技術の開発と保護②日米防衛産業が連携する優先分野を特定するための定期協議の開催―などが挙げられ、「情報力」では、情報保全及びサイバーセキュリティに関する協力の深化などが明記された。
●自衛隊に地球規模の作戦は不可能
自衛隊は能力的にも法的にも地球規模での作戦行動はできない。だが、防衛力を含む五つの力を集積した総合国力でグローバル・パートナーとしての応分の責任を果たさねばならない。「未来のためのグローバル・パートナー」の実現には各省庁が関わる。国家安全保障局の強いリーダーシップの下、着実に責任を果していく必要がある。(了)