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奈良林直

【第1132回】トカゲの尻尾切りで再エネ疑惑の幕引くな

奈良林直 / 2024.04.01 (月)


国基研理事・北海道大学名誉教授 奈良林 直

 

 太陽光や風力発電は、原子力に代わる安全でクリーンな再生可能エネルギーとして持て囃されてきたが、世界的に再エネの力不足が認識され、資源問題や土砂崩れや環境破壊も引き起こし、再エネ事業者と地元住民とのトラブルも多発している。そのような中で、河野太郎行革担当相の肝いりで設置された再エネ規制総点検タスクフォース(再エネTF)の会議資料に中国の国営電力会社作成であることを示す透かしロゴが入っていたことが分かり、問題が発覚した。

 ●危機感ない内閣府の説明
 内閣府によると、3月22日と昨年12月25日の会議に再エネTFの民間構成員、大林ミカ氏から提出された資料に、中国最大の国営送電会社である国家電網公司の透かしロゴが入っていた。大林氏が事業局長を務める自然エネルギー財団の数年前のシンポジウムに国家電網公司の関係者が登壇した際の資料の一部を使用したため、ロゴが残ってしまったという。
 3月25日に緊急記者会見をした内閣府規制改革推進室の山田正人参事官は、提出資料について「内容には問題がない」と述べるとともに、「自然エネルギー財団と中国企業とは人的・資本的な関係はないと聞いている」と説明した。
 ところが、自然エネルギー財団は国家電網公司と一緒に「アジアスーパーグリッド」という壮大な国際送電網計画を進めていることを同財団設立者の孫正義氏(ソフトバンクグループ 代表)が盛んにPRしている。このことを山田参事官が知らない訳がない。同参事官の説明からは、電力供給を中国に支配される可能性への危機感がうかがえない。経済産業省と金融庁の会議体でも同じロゴ入り資料が提出されていた。

 ●国会で「再エネの闇」解明を
 河野行革相はかつて、資源エネルギー庁の幹部に恫喝まがいの発言をして再エネ最優先政策を推進したことで知られる。河野氏の一族が経営する企業は中国企業と合弁子会社を設立し、太陽光パネルの部品などを製造している。その中国企業のトップの陳炎順氏はエリート共産党員だ。河野氏一族の太陽光関連ビジネスが、中国共産党と深く関わっていることが懸念される。利益相反ではないか。
 国民民主党の玉木雄一郎代表は「大林氏提出の資料は、中国企業の作ったパワーポイントをベースにしており、言い逃れできない。エネルギー供給の生殺与奪を(中国に)握られてしまう」と懸念を示し、岸田首相に徹底調査を要求した。
 再エネによって我が国の電力を賄おうとすると、約1000兆円の費用がかかる。洋上風力発電は特に膨大な予算を必要とする。太陽光も風車も大部分が中国製だ。再エネ普及のため電気料金に上乗せされる再エネ賦課金だけで最終的に90兆円に膨らむと試算されており、既に全国の電気料金の引き上げが公表された。政治資金パーティー券の億円単位の追及に明け暮れる国会で、その数百万倍の「中国への貢ぎ金」政策阻止のため、「再エネの闇」の徹底解明が必要である。大林氏の再エネTF からの辞任という「トカゲの尻尾切り」で問題の幕引きをさせてはならない。(了)