公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2022.10.11 (火) 印刷する

核シェルターの早期普及を 奈良林直(東京工業大学特任教授)

10月4日午前、北朝鮮から弾道ミサイル1発が発射され、東北地方上空を通過して約4600キロ飛行し、日本の排他的経済水域(EEZ)外側の太平洋に落下した。我が国の数か所で「Jアラート」(全国瞬時警報システム)による緊急情報発信が行われ、警戒の必要がない地域に誤って発信されたり、ミサイル通過後に警報が出されたりするなど、トラブルが相次いだ。しかし、北朝鮮は水爆をすでに所有し、運搬手段の大型の弾道ミサイルを開発中だ。核攻撃の脅威は現実に存在する。

迎撃ミサイルの能力には限界があり、複数のミサイルや多弾頭ミサイル、極超音速ミサイル、変則軌道ミサイルなどによる核攻撃は防ぎきれないことが明らかになりつつある。そこで必要なのは、核攻撃を受けた場合に国民の命を守る核シェルターの普及である。

スイス100%、米国82%、日本0.02%

世界各国の核シェルターの普及率を調べてみると、スイス、ノルウェー、イスラエルは全国民を収容できる100%に達している。一戸建ての住宅では、キッチンの床を開けると地下に核シェルターが設置されている。集合住宅の地下には住人を全て収容できる地下シェルターが設けられている。米国の普及率は82%、ロシアが78%、英国は67%である。しかし我が国はわずか0.02%だ。

憲法9条があれば、世界の紳士的な国は我が国に攻めてこないと主張する「九条の会」などの護憲団体や、国民の命を守る国防の研究を禁止している日本学術会議などによって、我が国は他国からの核ミサイル攻撃に脆弱な国となってしまった。

危機管理産業展に出展

東京や大阪などの大都市の上空で核爆発が起きたら、多くの国民が命を落とす。核シェルターを設置すれば、被ばく線量は200分の1になる。

筆者らは10月5~7日の3日間、東京ビッグサイトで開催された「危機管理産業展(RISCON)2022」に、空気浄化システムとそれを組み込んだ有事のためのシェルターを展示した。開催前日のJアラートは、まさに出展の号砲となった。

筆者は東京電力福島第1原子力発電所事故で、あってはならない地元の汚染が発生したことに鑑み、銀ゼオライトのメーカーであるラサ工業や木村化工機などと共に、経済産業省の補助事業として「原発事故の際に地元や原発敷地内の汚染を防ぐフィルターベントの高度化」の研究開発を推進してきた。これにより、空気浄化システムに必要な放射性ヨウ素のフィルターや付帯設備をシステムとして一体化して作動させることを可能とした。また、若手技術者が学会で発表して質疑応答をこなし、査読を通過した正規論文を日本機械学会論文誌に複数掲載できるように指導した。さらに、汚染された空気をノズルで水と混合し、微細でかつ膨大な数の水滴を生成し、その表面積の総和を大きくして遠心力で放射性物質やウイルスなどの有害物質を除去することができる「高性能スクラバノズルに関する研究」の学位論文研究を指導した。厳しい複数回の査読を経て日本混相流学会の正規論文として掲載され、この研究者は東工大から博士(工学)の学位を授与された。

空気浄化システムを開発

これらの除去手段を組み合わせることにより、核攻撃や核テロなどで生じた放射性物質や、サリンなどの毒ガス、ウイルスや細菌を除去できる空気浄化システムを実用化した。小さな核シェルター内に設置する小型のものから、地下鉄の駅や地下駐車場、地下街などの避難場所に設置する大型のもの、さらには大型トレーラーに搭載して日本全国どこにでも陸送できるようにしたものまで、各種の空気浄化システムを展示した。ウイルスを含むエアロゾルの拡散・吸引と不活化のコンピューターシミュレーションや、高い殺菌力のある高純度次亜塩素酸水を作る可搬型の電解装置も、東工大と共同研究を実施しているワンテンス社の協力により展示・実演した。

多数の来場者が熱心に展示を見てくれ、「なぜこのように優れたものをもっとPRしないのか」と激励の言葉をもらった。中には反原発の立場の人もいたが、説明を理解してくれた。出展の重要性を改めて感じた。(了)
 
 

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第228回 北のミサイル発射でJアラートが発動

北朝鮮のミサイル脅威に加え、ロシアの核恫喝も。核シェルター普及率0.02%という日本に緊急普及の要あり。地下だと被害が200分の1になる。皇統を守る皇居にシェルターはあるのか。いざという時に備えよ。