奈良林直の記事一覧
温暖化防止でも再エネの力不足は明らかだ 奈良林直(東京工業大学特任教授)
世界的に原油や天然ガス、石炭のエネルギー価格が高騰を始めている中、「原子力発電所の進歩に関する国際会議」(ICAPP)が10月16日~20日、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで開催され、筆者も総会での講演を頼まれ、オンラインで参加した。 この会議は、世界中の原子力コミュニティーのリーダーたちが、新しい原子力発電の展開と将来の方向性やニーズについて議論するフォーラムだが、すでに再生可能エネ...
【第843回】ミサイル防衛に日本の先端技術を活用せよ
国基研理事・北海道大学名誉教授 奈良林直 中国や北朝鮮など周辺諸国が極超音速ミサイルの開発を加速し、日本への軍事的脅威を増す中で、我が国には日本を脅かすミサイルに対する防衛システムを構築できる先端科学技術がある。しかし、日本学術会議による軍事研究禁止が足かせとなって、その技術を活用できない。今ほど学術会議の抜本的見直しが必要な時はない。 ●周辺国で進む極超音速兵器の...
日鉄はなぜトヨタを訴えたのか 奈良林直(東京工業大学特任教授)
日本製鉄が大口顧客であるトヨタ自動車と電磁鋼板の提供元である中国鉄鋼最大手・宝武鋼鉄集団の子会社、宝山鋼鉄を特許侵害で提訴した。両社にそれぞれ約200億円の損害賠償を求めるとともに、トヨタに対しては対象製品を使った電動車の製造販売差し止めの仮処分を申し立てた。国内の鉄鋼最大手が、長年の盟友関係にある最重要顧客を提訴するのは極めて異例だが、この電磁鋼板は2050年カーボンニュートラル(二酸化炭素排出...
中国の深刻な電力危機 奈良林直(東京工業大学特任教授)
CNNや米誌ニューズウイーク、NHKなどのほか、中国紙までが、中国各地の深刻な電力危機と工場への操業に影響が出ていることを報じている。猛暑とエネルギー価格の高騰が原因で、石炭火力発電でもこの危機が長期化する見通しだ。このような電力危機や停電は、我が国でも1月に発生した他、米国のカリフォルニア、テキサス両州のほか、オーストラリア、フランスでも多発している。 再エネ優先策も一因か 報道によ...
【第834回】河野氏の恫喝発言を裏読みする
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 週刊文春が暴露した河野太郎行政改革担当相の資源エネルギー庁幹部に対する恫喝で、河野氏は原子力発電所が北朝鮮のミサイル攻撃を受けたら危険だとまくし立てている。その河野氏は防衛相時代に、北朝鮮などのミサイル攻撃を防ぐ陸上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の建設を取りやめた張本人だ。原発をミサイル攻撃の危険にさらし、廃棄に持ち込も...
【第828回】河野氏は脱原発を封印していない
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 河野太郎氏は9月10日、自民党総裁選出馬表明の記者会見で、脱原発に関する質問に対し、「(原子力発電所の)安全性を確認して、使えるものは再稼働して使っていく」と答えた。このため大手各紙は「総裁候補として脱原発を封印」と報じたが、とんでもない誤報だ。河野氏は脱原発路線を封印などしていない。 ●再処理施設の運転開始阻止を主張 ...
第6次エネルギー基本計画は見直せ 奈良林 直(東京工業大学特任教授)
菅義偉首相が事実上の退陣を表明した。ならば拙速の念が消えない「第6次エネルギー基本計画」の閣議決定についても、自民党の新たな総裁が選ばれ、その後の総選挙で新政権が発足まで判断を延期すべきと思う。 産業凋落して、地球温暖化あり 「基本計画」は日本として将来の電力調達先をどこに求めるか、事前に明確にしておくという極めて重要な計画である。菅政権が閣議決定を目指してきた「6次計画」では①203...
【第822回】アフガンの鉱物資源を狙う中国
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 アフガニスタンの地下には、膨大な量の鉱物資源が眠っている。バイデン米政権がアフガニスタンから米軍の拙速な撤退を行い、タリバンの実権掌握を許したことで、この鉱物資源が中国の手に転がり込む恐れが出てきた。 ●レアアースも確認 アフガニスタンの鉱物資源の調査は、米地質調査所(USGS)のジャック・メドリン氏のチームによって2...
新エネルギー基本計画を危惧する 奈良林 直(東京工業大学特任教授)
政府が見直しを進めている国の新たな「第6次エネルギー基本計画」原案概要が明らかになった。報道によると、その骨子は ①2030年度の総発電量に占める太陽光や風力など再生可能エネルギーの比率を、現計画の22~24%から36~38%に高める ②原子力については20~22%を維持し、「安全性の確保を大前提に、重要なベースロード(基幹)電源」と位置づけているが、新増設や建て替えについては明記せず、「可能な...
【第813回】太陽光発電に原発並みの規制を
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 7月3日、静岡県熱海市伊豆山地区で発生した土石流の起点近くに、大規模な太陽光発電所(メガソーラー)が設置されている。土石流との因果関係は今のところ不明だが、政府は調査に乗り出した。災害を引き起こす可能性のある山間部での設置が今後規制されれば、太陽光発電推進政策に影響を及ぼす可能性がある。 ●土石流の主因はずさんな盛り土 ...
震災から10年の福島・双葉町を訪ねて 奈良林直(東京工業大学特任教授)
7月1日に櫻井よしこ理事長の「日本国の基盤・エネルギー問題」と題する講演会に参加し、その日の午前中に双葉町長の伊澤史郎町長とハッピーロードネットの西本由美子理事長の案内で、福島第一原発の敷地に隣接する双葉町の復興状況を詳しく視察することができた。 子供たちの笑顔をコンセプトに 2011年3月11日、福島県双葉町は、東日本大震災の地震と大津波の来襲、そしてそれに続く福島第一原発の事...
【第808回】再稼働の40年超原発は新品同然
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 運転開始から44年経つ関西電力美浜原子力発電所(福井県美浜町)3号機が10年ぶりに再稼働した。朝日新聞と東京新聞はこれを「老朽原発」と決めつけ、すぐにも事故が起きそうな印象操作をした。 しかし、2013年に改正された原子炉等規制法により、運転開始から40年を経過した原子炉は、運転期間を1回に限り最大20年延長することが認められ...
【第806回】台山原発希ガス漏洩にみる中国の隠蔽体質
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 中国南部の広東省にある台山原子力発電所1号機から放射性物質が漏洩した。1号機は2018年に運転を開始した最新鋭の欧州加圧水型原子炉(出力165万キロワット)で、漏洩について中国当局の情報開示が遅れ、隠蔽体質を感じさせる事例となった。 ●情報開示は報道の2日後 漏洩が明るみに出たのは6月14日、原子炉を中国に輸出したフラ...
【第805回】再エネ推進に立ちはだかる鉱物資源の制約
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 国際エネルギー機関(IEA)は5月、地球温暖化対策のため再生可能エネルギーを推進する場合に、風力発電や電気自動車、蓄電池に必要な鉱物資源の量が膨大に増え、環境破壊なども問題になるとの報告書を発表した。これを基に米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが同月11日付で、バイデン米大統領が数兆ドルを注ぎ込もうとしているエネルギー転換政策は...
【第800回】万全の感染対策で東京五輪を成功させよう
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 東京五輪の開催が1カ月半後に迫り、「命と五輪とどちらが大事か」という二者択一の議論が国会やマスコミをにぎわしているが、五輪の感染対策を万全にすることで、命と五輪を両立させるという三つ目の選択肢があることを指摘したい。なぜ、国会で「あらゆる感染対策をして五輪を成功させよう」という議論がされないのであろうか。国基研の櫻井よしこ理事長が...
カーボンニュートラル先進県・福井の心意気 奈良林直(東京工業大学特任教授)
菅義偉首相は、2030年に向けた温室効果ガスの削減目標について、2013年度比で46%減を目指すと表明し、さらに削減目標の前倒による国際協力の必要性を訴えている。 バイデン米大統領も、2025年までに2005年比で26%~28%削減する従来目標を大幅に引き上げ、2030年までに50%~52%にすると表明した。中国の習近平国家主席は、2030年までに二酸化炭素(CO2)の排出量を減少に転じさ...
【第797回】発電プラント製造能力は存亡の危機
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 4月12日付で国基研政策提言「脱炭素の答えは原発活用だ」を発表し、①24基の原発の新増設②日本の進んだ火力発電技術の輸出により二酸化炭素(CO2)排出削減に貢献すること―を提案したが、どちらも実現のめどが立たない。その結果、日本を代表する重電メーカーの発電プラント製造能力は存亡の危機に直面している。 ● 原発も火力発電も頓...
【第787回】温室効果ガス46%削減目標に思う
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 菅義偉首相は4月22日の気候変動サミットのオンライン出席を前に、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減する目標を表明した。一方、米国は18日、米中高官級協議を経て、米中両国が国際的な地球温暖化対策に加わり、気候変動パリ協定の目標達成に取り組む共同声明を発表した。中国を温暖化対策の仲間に引き入れ、世界最大の温室...
東芝買収計画に見る深刻なリスク管理の不在 奈良林直(東京工業大学特任教授)
東芝の車谷暢昭社長兼CEOが4月14日、突然、辞任した。後任には前社長の綱川智・会長が復帰したが、事実上の解任と見られている。 東芝は4月6日に英投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズから買収提案を受け入れていた。車谷氏は三井住友銀行時代に辣腕バンカーとして知られ、東芝に移る前はCVC日本法人の会長を務めていた。車谷氏は古巣のCVCを使って東芝を非上場化することで自らの地位を守ろうとし...
処理水放出の風評被害排すには 奈良林直(東京工業大学特任教授)
菅義偉首相は4月13日、「廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚会議」で、福島第一原子力発電所で増え続けるトリチウムなど放射性物質を含んだ処理水について、政府を挙げた風評被害対策を前提に2年程度の準備期間を置き、海洋に放出すると表明した。昨年8月に経産省の有識者らによる小委員会から「海洋放出が現実的」との報告を受け、国際原子力機関(IAEA)からも科学的根拠に基づく措置と評価を得ていた。 筆者は...
司法に翻弄されない安全対策の構築を 奈良林 直(東京工業大学特任教授)
運転を認めなかった司法判断は、今回の日本原子力発電東海第二原発(茨城県東海村)に対する3月18日の水戸地裁判決までに7件あるが、大半がその後の高裁審理などで、運転容認へと覆っている。 同じ3月18日には、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)についても広島高裁が差し止め取り消しの決定を出している。これは去年1月、同じ広島高裁で「四国電力の活断層の調査は不十分で、阿蘇山噴火の想定も小さすぎる...
福島第一原発事故から10年 奈良林 直(東京工業大学特任教授)
福島第一原子力発電所の事故から3月11日で10年が経過した。この間に得られた教訓は何か、今なお原発に賛成する国民の割合が少数派にとどまっているのはなぜか―などについて反省点を整理してみたい。 政府は2050年までに二酸化炭素など温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指すとしているが。それを見据えつつ、原子力規制委員会が原発の安全安心の確保について2013年に...
半導体産業の復活とAI産業の構築急げ 奈良林直(東京工業大学特任教授)
新型コロナウイルス対策として、我が国でも大手企業だけでなく、町工場や大学などの教育機関でもオンラインによる在宅勤務や講義が、学会、シンポジウムまで急速に普及してきている。国際会議もいまや全てオンライン会議である。 このため、世界的にパソコンや半導体の需要が急速に高まり、IT企業の収益は大きく伸びている。半導体不足は、自動車メーカーの生産ラインにも影響を及ぼしているほどだ。米国では主要IT企...
「原子力問題研究会」政策提言から1年 奈良林直(東京工業大学特任教授)
国家基本問題研究所の「原子力問題研究会」が2019年12月4日に「日本に原子力発電を取り戻せ」と題して政策提言を行ってから1年余りが経過した。 提言は原発の重要性に対する国民の認識拡大に一定の成果をあげたと自負しているが、残念ながら国の政策に十分生かされてきたとまでは言い難い。以下、提言からの1年を振り返り、何が生かされ、何が問題点として残されたままかなどを改めて整理してみたい。 菅...
【第749回・特別版】次亜塩素酸水の活用で医療崩壊を防げ
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。このため、政府が経済対策の目玉としたGoToトラベルも一時停止に追い込まれ、各種世論調査で菅政権の支持率は10ポイント以上も低下した。政権の危機になりかねない。しかし、我が国の感染防止対策は「3密」の回避とマスク着用、手指の消毒にとどまっている。現在の新型コロナ対策に欠落しているのは、サイ...
女川原発再稼働が示した地元の信頼 奈良林直(東京工業大学特任教授)
東北電力女川原子力発電所2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働をめぐり、宮城県の村井嘉浩知事は11月11日、女川町の須田善明町長と石巻市の亀山紘市長との3者会談を開き、再稼働の前提となる地元同意を正式に表明した。既に各紙が報道しているが、なぜか報じられていないものがある。女川原発が東日本大震災時に震源に最も近く、15mを超える津波を受けたにもかかわらず、冷温停止を達成し、一時避難所として地元住民...
【第735回・特別版】2050年脱炭素化には原子力活用しかない
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 10月26日、菅義偉首相は所信表明演説で、「2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにする脱炭素社会の実現を目指す」と宣言した。この基本方針には野党も表立って反論できない。加えて、菅首相は「安全最優先で原子力政策を進める」と明言した。脱炭素化に原子力発電所が必要なことをにじませ、安全な原発の新増設への端緒をつくろうとす...
最終処分場文献調査の応募の意義 奈良林直(東京工業大学特任教授)
原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分場の候補地を設定する第一段階である文献調査に北海道の寿都すっつ町と神恵内かもえない村の2町村が手を挙げた。これに対し北海道の鈴木直道知事が反対を表明し、朝日新聞なども「実現の見通しのない核燃料サイクルを前提とした現行の処分計画には、根本的な問題がある」(10月15日付社説)と事実上の反対論を展開している。 最終処分場の...
【第733回・特別版】学術会議を乗っ取った左翼組織
国基研理事・北海道大学名誉教授 奈良林直 「学術会議こそ学問の自由を守れ」と題した10月5日配信の「今週の直言」は大きな反響を呼んだが、今回はその続報として、日本学術会議を事実上乗っ取り、学術会議の権威を使って我が国の防衛研究を阻害してきた左翼組織の実態を明らかにしたい。 この組織は、大学での軍事研究に反対する団体と個人が参加して2016年9月に設立された「軍学共同反対...
【第724回】学術会議こそ学問の自由を守れ
国基研理事・北海道大学名誉教授 奈良林直 日本学術会議が推薦した会員候補105人のうち6人を菅政権が認めなかったことは学問の自由を侵害するとして、朝日新聞などで連日批判的に報道されている。しかし、安倍政権時代の2016年にも、首相官邸が会員候補に難色を示し、70歳定年の下で、3人の欠員が補充されなかった。2018年11月には、学術会議が推薦した人を任命する義務は政府に無いこ...
【第711 回・特別版】中国系IT企業の潜在的脅威
国基研理事・北海道大学名誉教授 奈良林直 トランプ米大統領は14日、中国IT企業の北京字節跳動科技(バイトダンス)に対し、同社が運営する動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国事業を90日以内に売却するよう命じた。米国の大統領は、安全保障の観点で対米投資を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の勧告に基づき、企業の合併・買収(M&A)の阻止や事業売却を命じる...
【第699 回・特別版】日本の先端技術を海外流出から守れ
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 理化学研究所と富士通が開発したスーパーコンピューター「富岳」が、計算速度などを競う世界ランキングで「4冠」を獲得した。旧民主党政権の事業仕分けで、「スパコンは2位では駄目か」と予算を大幅に削られ、2011年6月に「京」が出した毎秒8162兆回の記録の後、日本は中国に負け続ける状況が続いていた。富岳は既に新型コロナウイルス対策にも活...
コロナ後の世界経済と我が国の産業強靱化 奈良林直(東京工業大学特任教授)
新型コロナウイルス肺炎が南半球にも拡大し、パンデミック(世界規模の感染拡大)は終息の見通しが立たない。このような中で、3蜜(密閉、密集、密接)を避けるような形での経済活動の自粛が続いており、消費増税に加え、「コロナ恐慌」に直面しようとしている。 ここで、明確になったのが、中国を「世界の工場」とした一国集中型のサプライチェーンの脆弱さである。わが国の経済は、グローバリゼーションの旗印の下で、...
【第688回・特別版】次亜塩素酸水への不当な誤解を解け
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 新型コロナウイルスに対するアルコールなどに代わる消毒液候補について、経済産業省の委託で独立行政法人、製品評価技術基盤機構(NITE)が行ってきた検証試験の中間結果(5月28日付)をめぐり、大きな社会的混乱が発生している。 中間結果の発表を受けて、次亜塩素酸水に消毒の効果がないかのように誤って報道されたのに加えて、文部科学省が次...
次亜塩素酸水めぐる拙速報道に苦言 奈良林直(東京工業大学特任教授)
新型コロナウイルスの消毒剤が逼迫している状況のなかで、経済産業省の委託を受けた製品評価技術基盤機構(NITE)は5月29日、アルコール消毒剤の代替となる複数の界面活性剤や次亜塩素酸水の試験結果を公表した。 次亜塩素酸水については、国立感染症研究所のpH5.0のサンプル液では、有効塩素濃度49ppm、噴霧後1分で99.99%の感染値減少の効果が確認されたが、北里大の検証試験では4つのサンプルで...
日本原燃の再処理工場「合格」の意義 奈良林直(東京工業大学特任教授)
原子力規制委員会は5月13日、青森県六カ所村に建設された日本原燃の再処理工場の安全審査で「審査書案」を取り纏めた。これは、2011年3月の福島第一原子力発電所の過酷事故を踏まえた厳しい新規制基準に対する追加要求も満たし、再処理施設としての事実上の安全審査の合格に相当する。今後、一般の意見公募(パブコメ)を経て、今夏中に正式合格となる見込みである。 ●原発40基分の使用済み燃料処理 再...
コロナ対策で活用広がる次亜塩素酸水 奈良林直(東京工業大学特任教授)
「今週の直言」や「ろんだん」で、次亜塩素酸水の利用を繰り返し提案しているが、国の積極的な利用がなかなか進展しない。「予防保全」の観点から感染の予防に力を入れる方が遙かに効果的であり、「事後保全」として発症した患者を医療により治療するのは大変で、医療従事者に大きな負担がかかることは明白である。医学おける予防保全は、ワクチンを開発することであるが、これには少なくとも1年以上の歳月と膨大な開発コストが...
【第673回・特別版】米空母をコロナ感染から救え
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林 直 米海軍の原子力空母で新型コロナウイルスの感染が相次いで確認され、これまでに「セオドア・ルーズベルト」をはじめ4隻の乗組員に感染者が出た。米空母は中国、北朝鮮、イランなどの脅威を抑止するために枢要な作戦行動を担っており、米空母のウイルス感染が拡大すると、インド太平洋地域を含む世界の安全保障に深刻な影響を与えかねない。そこで、空母で...
【第671回・特別版】川内原発の運転停止を再考せよ
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林 直 九州電力川内原子力発電所(鹿児島県)の1号機が3月16日に運転を停止した。航空機によるテロを想定した特定重大事故対処施設(特重施設)の完成期限が3月で切れてしまい、運転停止命令が出される前に、自主的な運転停止に追い込まれた。2号機も5月26日に停止する。 新型コロナウイルスの感染拡大で九州経済が落ち込んでいる中、原発の運転停...
新型肺炎の予防保全の重要性を訴える 奈良林直(東京工業大学特任教授)
2月17日の今週の直言「新型コロナウイルスの感染予防策を提言する」で提起した「新型コロナウイルスの感染予防策」がなかなか実行に移されていないことを残念に思う。この間にクルーズ船内での感染が広がり、さらにスポーツジムや病院での感染が広がっている。私は、原発の安全性・信頼性を高める活動を推進している日本保全学会の会長を4年間務めた「保全学」の専門家として、予防保全の重要性をあらためて説明したい。 ...