公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

奈良林直

【第724回】学術会議こそ学問の自由を守れ

奈良林直 / 2020.10.05 (月)


国基研理事・北海道大学名誉教授 奈良林直

 

 日本学術会議が推薦した会員候補105人のうち6人を菅政権が認めなかったことは学問の自由を侵害するとして、朝日新聞などで連日批判的に報道されている。しかし、安倍政権時代の2016年にも、首相官邸が会員候補に難色を示し、70歳定年の下で、3人の欠員が補充されなかった。2018年11月には、学術会議が推薦した人を任命する義務は政府に無いことを内閣法制局が了承している。

 ●6人は安保・治安立法に反対
 すでに6人の教授の氏名・所属と活動履歴が報道により判明している。いずれも、集団的自衛権の行使を限定的に容認した安全保障関連法など安保・治安立法に反対した人物である。
 東大A教授(政治思想史)は2013年に成立した特定秘密保護法に反対し、「安全保障関連法に反対する学者の会」の呼び掛け人。早大B教授(行政法)は「安全保障関連法案の廃止を求める早稲田大学有志の会」の呼び掛け人で、沖縄県辺野古の米軍基地建設をめぐり政府の対応に抗議する声明を発表。東京慈恵医大C教授(憲法学)は安保関連法案について「歯止めのない集団的自衛権の行使につながりかねない」と廃案を求めた。東大D教授(日本近現代史)は学者らによる「立憲デモクラシーの会」の呼び掛け人で、改憲や特定秘密保護法に反対。立命館大のE教授(刑事法)は2017年の改正組織犯罪処罰法案を「戦後最悪の治安立法」と批判。京大のF教授(キリスト教学)は「安全保障関連法に反対する学者の会」や、安保関連法案に反対する「自由と平和のための京大有志の会」の賛同者である。

 ●軍事研究を拒否し中国とは学術協力
 一方、学術会議が力を入れているのが、「軍事研究の禁止」を旨とした防衛省関連研究の否定である。実例を一つ挙げる。北大は2016年度、防衛省の安全保障技術研究推進制度に応募し、微細な泡で船底を覆い船の航行の抵抗を減らすM教授(流体力学)の研究が採択された。この研究は自衛隊の艦艇のみならず、民間のタンカーや船舶の燃費が10%低減される画期的なものである。このような優れた研究を学術会議が「軍事研究」と決めつけ、2017年3月24日付の「軍事的安全保障研究に関する声明」で批判した。学術会議からの事実上の圧力で、北大はついに2018年に研究を辞退した。
 学術会議は、日本国民の生命と財産を守る防衛に異を唱え、特定の野党の主張や活動にくみして行動している。優秀な学者の学術集団でありながら、圧力団体として学問の自由を自ら否定している。これに対し、国立大学協会会長の永田恭介氏(筑波大学長)は今年3月26日の記者会見で、「自衛のためにする研究は(募集する)省庁がどこであれ正しいと思う」と学術会議に批判的な見解を述べている。筆者も含め賛同する研究者は多い。
 さらに学術会議は2015年、中国科学技術協会と相互協力する覚書を締結している。中国による少数民族の抑圧、香港の弾圧、南シナ海の軍事基地化といった強権的行動に国際的な批判が強まる中で、日中学術協力の抜本的見直しが必要ではないか。(了)

【訂正】
 当初の原稿では「学術会議幹部は北大総長室に押しかけ、ついに2018年に研究を辞退させた」としましたが、学術会議幹部が北大総長室に押しかけた事実はありませんでしたので、「学術会議からの事実上の圧力で、北大はついに2018年に研究を辞退した」と訂正します。