細川昌彦の記事一覧
【第740回・特別版】RCEP署名で交錯した関係国の思惑
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 日中韓、東南アジア諸国連合(ASEAN)など15カ国が参加する地域包括的経済連携協定(RCEP)が署名された。人口、国内総生産(GDP)ともに世界の3割を占める巨大経済圏ができた。世界の内向き志向の中で、貿易自由化の進展は評価できる。しかし過大評価は禁物だ。貿易自由化のレベルは環太平洋経済連携協定(TPP)に比べてかなり見劣りする。関...
【第739回】「自由で開かれた」抜きでインド太平洋を語るな
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 14日、東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議を終えた記者会見での菅義偉首相の発言が波紋を呼んでいる。これまでの「自由で開かれたインド太平洋」と言わずに、「平和で繁栄したインド太平洋」と言い換えたのだ。 ●価値観外交のキーワード 「平和と繁栄」に反対する者はいないだろう。問題はそれをどうやって達成するかだ。軍事力を背...
【第737回・特別版】バイデン政権と「グリーン」で戦略的協力を
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 米大統領選でバイデン氏の当選が確実になった。バイデン政権における日本の対米戦略を考えるうえで、カギの一つは環境問題だ。バイデン氏は2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロを打ち出し、地球温暖化対策を目玉政策としている。具体的には、気候変動パリ協定に早期に復帰したうえで、クリーンエネルギーへの投資と環境規制の強化に力点を置く。 ...
中国との学術協力、政府自ら安全保障判断を 細川昌彦(明星大学経営学部教授)
米中による輸出管理をめぐる規制の応酬で、日本企業が翻弄されている。 中国の輸出管理法が10月17日、全国人民代表大会(全人代)で成立し、12月1日に施行される。中国に対して輸出管理を武器に振りかざす米国への対抗措置としている。米国に対峙する自信をつけた中国が「域外適用」を明確に打ち出したことは深刻だ。 米中という2つの大国が力を背景に他国を自国の判断に従わせようとする。日本など第三国...
【第696回】対中ビジネスに安全保障マインドを
国基研企画委員・中部大学特任教授 細川昌彦 米中対立が激化する中で、日本の経済界の安全保障意識が懸念される。もちろん巨大な中国市場のビジネスチャンスは無視できない。しかし、同時に安全保障リスクを頭に置かなければ、米国の虎の尾を踏むことにもなりかねない。 2018年8月、米国は2019年度国防権限法で、ファーウェイ(華為技術)など中国企業5社を安全保障上の懸念により政府調...
電通依存と役所の足腰劣化 細川昌彦(中部大学特任教授)
新型コロナによる売り上げ激減の中小企業などに給付する持続化給付金を巡って国会でも大問題になっている。769億円の事業を一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」が受託し、その97%にあたる749億円が広告最大手の電通に再委託されている。 これに対して、この協議会が不透明で、実体のない“幽霊法人”“トンネル法人”ではないかと報道されている。さらに政権と電通の癒着だと批判されている。果たしてそう...
【第669回】コロナ経済対策で戦略的な国家ファンド設立を
国基研企画委員・中部大学特任教授 細川昌彦 コロナショックによる深刻な経済的打撃を受けて、各国で巨額の経済対策が打ち出されている。その中で生活支援や失業対策ばかりが注目されるが、見逃してはならない動きがある。3月下旬、欧米各国では「対内投資規制の強化」と「国家ファンドの設立・強化」という企業の買収防衛策が相次いだ。コロナショックによる株価急落によって重要企業が外国企業に買収...
【第664回】コロナ経済対策は対象と目的を明確に
国基研企画委員・中部大学特任教授 細川昌彦 新型コロナウイルスの感染拡大の経済的影響は深刻になっている。中国から欧米に感染が拡大し、入国制限、外出禁止で人の移動が止まってしまった。また、いつまで続くのかが見通せないという不安から、世界の株式市場はパニックのように暴落している。日本国内でも外国人旅行客の減少、イベントや外出の自粛、サプライチェーン途絶など、需要、供給両面で急激...
【第663回】新型コロナ特措法で問われる知事の力量
国基研企画委員・中部大学特任教授 細川昌彦 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための新型インフルエンザ対策特別措置法改正案が成立し、施行された。 国会審議の焦点は「首相による緊急事態宣言」であった。宣言を出すにあたっては専門家による諮問委員会に諮ることになっているが、さらに付帯決議で国会への事前報告が求められた。私権を制限することに慎重であるべきであるとの意図は理解でき...
【第656回】新型肺炎から垣間見えた半導体ビジネスの危うさ
国基研企画委員・中部大学特任教授 細川昌彦 中国の新型肺炎の感染が拡大して、経済への深刻な影響が懸念されている。とりわけ発生源である武漢市は自動車産業の一大集積地で、自動車業界のサプライチェーン(部品供給網)への大きな影響にメディアの関心も注がれている。 しかし、忘れてはならないのが半導体産業だ。半導体産業は軍民融合を掲げる中国の産業政策「中国製造2025」の最重点産業...
マスコミ報道の歪みを問う 細川昌彦(中部大学特任教授)
最近、マスコミの在り方を考えさせられる案件相次いでいる。その中から2題。 ひとつは韓国への輸出管理の厳格化だ。7月に日本政府が発表した後、輸出管理への理解不足と思い込みによる報道が横行した。それが日韓関係を悪化させていった要因の一つでもあったと思う。 例えば、「韓国の半導体産業に大打撃」との報道だ。7月4日、日本政府は半導体材料の3品目の韓国向け輸出を個別許可にした。これは日本から韓国に...
【第640回・特別版】日韓の輸出管理対話をどう見るべきか
中部大学特任教授 細川昌彦 来週、日韓の輸出管理に関する局長級対話が開催されることに注目が集まっている。 今回の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を巡る騒動は韓国の独り相撲だった。当初、韓国の文在寅政権は日本の輸出管理強化への対抗措置としてGSOMIA破棄のカードを切った。そうすれば米国は破棄を回避するために韓国だけでなく日本へも働きかけ、日本を輸出管理強化の撤回へ追...
「捕らぬ狸」の日米貿易協定を斬る 細川昌彦(中部大学特任教授)
日米貿易協定が国会承認を経て来年発効する。焦点の一つは米国が日本の自動車・自動車部品にかけている関税の行方だったが、日本は結局、撤廃を実現できなかった。 日米両国の間で「自動車関税の撤廃について更なる交渉をする」と付属文書で明記された。日本政府は「合意は自動車関税の撤廃を前提としており、今後、撤廃時期などを交渉する」と説明している。しかし、それは強弁にすぎるだろう。 ●WTOルール...
【第609回】なぜ歪む、対韓輸出管理の報道
中部大学特任教授 細川昌彦 なぜ韓国の問題になると日本の報道は歪むのか。「半導体材料の事実上の禁輸」との報道や「世界貿易機関(WTO)協定違反の疑い」との批判もあった。いずれも輸出管理制度への無理解からくる誤解によるものだ。 国内では朝鮮人戦時労働者の問題を巡って、韓国への対抗措置を求める声が高まっていたので、今回の措置を事実上の対抗措置と見る人もいた。メディアはそれを...