公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2019.12.26 (木) 印刷する

マスコミ報道の歪みを問う 細川昌彦(中部大学特任教授)

 最近、マスコミの在り方を考えさせられる案件相次いでいる。その中から2題。
 ひとつは韓国への輸出管理の厳格化だ。7月に日本政府が発表した後、輸出管理への理解不足と思い込みによる報道が横行した。それが日韓関係を悪化させていった要因の一つでもあったと思う。
 例えば、「韓国の半導体産業に大打撃」との報道だ。7月4日、日本政府は半導体材料の3品目の韓国向け輸出を個別許可にした。これは日本から韓国に輸出したものが行方不明になる不適切事案が頻発したので、きちっとチェックする国際的な義務があるからだ。

 ●“空騒ぎ”で不安煽る
 そもそもこれが韓国の半導体産業にどれだけ影響するのか。報道されたのが日本への輸入依存度だ。レジスト、フッ化ポリイミドは9割以上。これだけ見ると大変な影響だと思ってしまう。ところが輸出許可の対象になるのはそのうちのたった0.1%程度に過ぎない。現在量産化されている半導体製造に使われているものは、そもそも規制対象外で影響されない。そのことはいくら経産省が説明しても一切報道されない。
 またフッ化水素についてはほぼ全量個別許可の対象になるが、同様の個別許可を求められている台湾の半導体産業に何ら支障は生じていない。通常の取引は問題ないので許可されるのは当然だろう。
 こう見てくると、「韓国の半導体産業に大打撃」というのは明らかに不安を煽り過ぎだ。私は当初より“空騒ぎ”だと指摘していたが、マスコミは自説に合致する解説者のコメントだけを掲載する。
 日本の報道を受けて、文政権は反日を煽り、対抗策を講じた。しかし実態がわかるのは時間の問題であった。最近、韓国政府自身も「影響は限定的だ」と認める発表をしている。日本の歪んだ報道が不必要に日韓関係を悪化させてしまったようだ。

 ●横行する自虐的な報道
 先頃スペイン・マドリードで開かれた国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)での石炭火力問題もそうだ。小泉進次郎環境大臣が石炭火力発電事業の輸出制限を表明しなかったことで「日本は国際的に孤立した」などと報道された。
 「国際的」が意味するのは欧州や環境NGOなど世界の一部のことだ。米国、中国、カナダ、豪州など石炭火力への依存は日本以上だ。そしてインド、東南アジアをはじめ、多くの途上国は石炭火力に頼らざるを得ないので、石炭火力を目の敵にすることに反発している。
 大事なことは、日本が高効率の石炭火力を輸出しなくなると、中国がCO2排出量の多い石炭火力を輸出する。日本の国際的な貢献の仕方をもっと目を見開いてみなければ、単なる自己満足になってしまう。
 小泉環境相が「化石賞」という不名誉な賞をもらったことが連日報道されたが、これも環境NGOが会場の通路で学園祭のノリで行ったもので、これほどの自虐的な取り上げられ方は世界でも珍しい。自説に都合のいい、見たいものだけ見る視野狭窄症に陥ってはならない。エネルギー政策に必要なのはバランスだ。
 こうしたことが自らの首を絞めて、ますますマスコミ離れを加速しないだろうか。