バイデン米大統領は2月24日、重要部材の供給網の問題点と対応策を検証する大統領令に署名した。半導体、高性能電池、医薬品、レアアース(希土類)が重点4品目だ。バイデン氏は「米国の国益や価値観を共有しない外国に依存できない」と強調した。むろん中国を念頭に置いてのことだ。バイデン政権も前政権と同様に、中国に厳しく臨むのだろうか。
重点4品目は米議会の関心分野でもある。検証結果を100日以内にまとめるが、半導体やレアアースは既に対策が動き出しており、今更の感がある。対中政策で「やってる感」を出すアリバイ作りか、あるいは行動が伴うのか見極める必要があるだろう。
●半導体は日米台連合へ
今回の供給網見直しの狙いを日本のメディアは「脱中国依存」とするが、十把一からげに論じるのは正しくない。
半導体については、むしろ中国にとって低い自給率がアキレス腱となっているので、中国は自給率を高めようと躍起になっている。対する米国は優位性を確保すべく、半導体供給網を同盟国も含めた自陣営に囲い込もうとしている。台湾の半導体受託製造最大手TSMC(台湾積体電路製造)の工場をアリゾナ州へ誘致したのはその一環だ。さらに米議会も2021年度の国防権限法で、信頼できる供給網の開発・構築のための多国間の基金を設立する。
日本もTSMCを誘致して、日本の強みである製造装置メーカー、部材メーカーとの共同開発プロジェクトを開始しようとしている。こうして半導体分野では既に日米台の供給網構築の手が着々と打たれつつある。
●レアアースで反撃狙う中国
半導体というアキレス腱を持った中国が反撃を狙う分野がレアアースだ。昨年10月、中国共産党理論誌・求是に掲載された習近平国家主席の講話がそれを示している。同主席は「国際的な産業チェーンで中国との依存関係を強めさせ、外部からの(人為的な)産業チェーンの断絶に対して、強力な反撃力と威嚇力を構築する」と述べた。
米国もレアアースが軍事用途に直結するだけに、手をこまねいているわけではない。以前から中国に依存しない供給網を構築しようとしており、例えば、豪州企業は米国防総省の資金援助を得て、米国に工場を建設する。日本もレアアースから高性能磁石を生産する技術で、供給網を重要プレーヤーとして支えている。
蓄電池も日米が協力できる分野だ。脱炭素を掲げ、電気自動車(EV)の普及を急ぐバイデン政権にとって、EVの基幹機器である蓄電池の対中依存を脱却すべく、有力電池メーカーを抱える日本との連携は不可欠だ。日本も次世代の電池開発に乗り出して、脱炭素で米国と協力できる布石を打っている。
100日かけた検証もいいが、こうした同盟国との連携した動きは既に始まっている。供給網の見直しこそ日米協力の好機だ。(了)