【第957回】日中首脳会談の「9.29」開催に反対する
国基研企画委員・月刊「正論」発行人 有元隆志 9月29日は日中国交正常化50周年の記念日にあたる。50周年を祝って、日中首脳がオンラインなどで会談する可能性が取り沙汰されているが、この日の会談には反対する。いまはとても50周年を祝う時ではないからだ。 中国は8月4日、日本の排他的経済水域(EEZ)内に初めて弾道ミサイルを5発撃ち込んだ。日本側は強く抗議したが中国から謝罪...
【第956回】首相の原発政策転換を歓迎する
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 ロシアのウクライナ侵略に対する西側諸国の経済制裁とロシアの報復により、石油、天然ガスをはじめとするエネルギー価格が高騰する中で、電力需給は今冬へ向けて厳しい状況が続く。エネルギー資源を持たない我が国にとって、原子力発電所の最大限の活用は国家存続の唯一の選択肢である。岸田文雄首相が次世代型原発の開発・建設の検討を指示するなどエネルギ...
【第955回】与那国島民の緊急避難計画を立てよ
国基研理事長 櫻井よしこ 8月4日、米下院議長ナンシー・ペロシ氏の台湾訪問への報復として、中国は台湾を取り囲む6海域で激しい軍事演習を開始し、人民解放軍(PLA)は沖縄の排他的経済水域(EEZ)にもミサイル5発を撃ち込んだ。着弾海域はわが国最西端の与那国島からわずか60キロほどだ。 専門家は、PLAの軍事演習は台湾侵攻を念頭に置いていたと見る。台湾有事は日本有事と喝破し...
【第954回】看板倒れの「有事の内閣」
国基研企画委員・月刊「正論」発行人 有元隆志 内閣改造に踏み切った岸田文雄首相は10日の記者会見で、改造内閣を「有事の内閣」と位置付けた。「有事」の具体例としてウクライナ戦争や台湾をめぐる米中関係の緊張を挙げたが、首相の口から有事という言葉が出てきた意味は重い。それだけ日本を取り巻く安全保障環境は厳しいとの認識には賛同する。しかし、当の首相がどこまで「有事」を自覚しているか...
【第953回】日米台軍事協議に必要な日本版台湾旅行法
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 2018年3月16日、米上下両院を全会一致で通過していた「台湾旅行法」がトランプ大統領の署名を得て成立した。中国政府が「米中関係のレッドラインを超える」と強く廃案を求めていた法案だった。意識的に何気ない名称を付されたこの法律が、なぜそれほど中国を刺激したのか。米国の議員やビジネスマンはそれ以前から頻繁に台湾を訪れていた。台...
【第952回】中国のハイブリッド戦に備えよ
国基研評議員兼企画委員 太田文雄 ペロシ米下院議長の訪台(8月2~3日)に伴い、台湾を威嚇する中国の軍事演習が実施されたが、中国が同時に行った非軍事面での「攻撃」にも注目すべきだ。軍事力と非軍事的手段を複合的に組み合わせた「ハイブリッド戦」への備えを我が国も加速させる必要がある。 まず2日夜、中国国営メディアは「人民解放軍空軍のSu35が台湾海峡を横断した」と報じた。こ...
【第951回】もはや米海軍だけで抑止は効かない
国基研企画委員・麗澤大学特別教授 織田邦男 ペロシ米下院議長の台湾訪問を受けて、台湾海峡情勢が一挙に緊迫した。 7月28日、習近平中国国家主席はバイデン米大統領との電話協議で、ペロシ氏の訪台があれば「深刻な結果」をもたらすと述べ、「火遊びする者は身を焦がす」と強く警告した。これより先、バイデン大統領は、記者団にペロシ氏訪台に関する米軍の懸念を語り、政権内に慎重論があるこ...
【第950回】学術会議の新見解は前進だが要注意
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 日本学術会議が軍事と民生の双方で活用できる「デュアルユース」(両用)の先端科学技術の研究を事実上容認する見解を示した。この見解は、小林鷹之科学技術担当相に軍民両用研究などへのスタンスを問いただされて回答したものであることに注目すべきだ。 この動きには二つの背景がある。 まず、学術会議は年間10億円もの血税を投入されながら、特定...
【第949回】台湾海峡危機への抑止力を高めよ
国基研評議員 岩田清文 ペロシ米下院議長の台湾訪問を巡り米中の駆け引きが続いている。バイデン米大統領と習近平中国国家主席による2時間の電話会談(7月28日)においても、習氏は「火遊びすれば必ず身を焦がす」と述べ、対抗措置も辞さない姿勢を示して、平行線に終わったと報道された。 ●懸念される米中軍機の衝突 大統領継承順位が副大統領に次いで2位の要職である下院議長の訪...
【第948回】日本は韓国に通すべき筋は通せ
国基研企画委員・韓国研究者 荒木信子 韓国は政権交代をしたが、日韓関係の今後はどうなるだろうか。この70年余りを振り返ることで考えてみたい。 日韓関係において歴史認識問題が登場したのは1980年代であり、決定的に比重を増したのは慰安婦問題が浮上した1990年代からである。 認識の問題であるから妥協点を見つけるのは難しいが、ますます問題が複雑になる理由は、韓国が情緒的...