公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

李宇衍

【第1203回】韓国は戦時労働者奴隷史観を克服せよ

李宇衍 / 2024.12.02 (月)


落星台経済研究所研究委員 李宇衍

 

 11月24日、世界文化遺産「佐渡島さどの金山」(新潟県)の労働者追悼式が現地で行われた。韓国政府は準備段階で日本側と意見が対立し、追悼式に参加せず、25日に別の追悼行事を催した。韓国内の大半の言論機関は24日の追悼式が「半分の追悼式」になったと報道した。 筆者はこの表現に拒否感を覚える。 佐渡金山の歴史は400年に近く、そのうち朝鮮人が戦時労働者として働いたのは6年にすぎない。 朝鮮人の役割がその程度なのに、式典の「半分」を占めるという主張は穏当なのか。

 ●佐渡金山式典挨拶めぐり日韓対立
 追悼式の準備段階で韓国が日本と最も大きく衝突したのは、日本政府を代表して出席する生稲晃子外務省政務官の靖国神社参拝の有無よりも、挨拶の内容だったと思われる。韓国の聯合ニュースよると、生稲氏の挨拶は概略次の通りだ。
 「(世界遺産登録という)輝く成果は、危険を伴う過酷な環境の中で、労働に従事した鉱山労働者をはじめとする先人の献身の産物である」
 「戦争という特殊な状況下であっても、(労働者は)故郷から遠く離れた地で愛する家族を思いながら、坑内の危険で過酷な環境で困難な労働に従事した」
 「鉱山労働者の中には、日本の戦時中の労働者(動員)政策に基づき、1940年代に朝鮮半島から来た多くの人々も含まれている。困難な労働に従事し、亡くなった方々もいる」
 「終戦まで故郷に帰れず、残念ながらこの地で亡くなった方々もいる」
 「世界遺産に登録された今こそ、先人たちがつくってきた歴史をよく考え、これを未来に継承していくという誓いを新たにしなければならない」
 「前の世代の苦労に心から敬意を表し、亡くなった全ての方々に深い哀悼の意を表したい」

 ●韓国が望む日本の「謝罪」
 日本側の立場では、朝鮮人戦時労働者を含む鉱山労働者に対する「感謝」とその中の犠牲者に対する「追悼」が短い挨拶の中で無難に表現された。
 しかし、韓国政府が望むのは感謝ではなく「謝罪」である。ここには朝鮮人戦時移動を「強制動員」、その労働を「強制労働」とする認識が前提になっている。しかし、これは事実ではない。
 1939年9月から72万人余りの朝鮮人戦時労働者が日本に渡ったが、同じ時期に168万人余りが戦争と関係なくただ短期出稼ぎのために日本へ向かった。戦時労働者の中でも50万人余りは自身の意思により日本の労働者動員に応じた。
 朝鮮人戦時労働者は応分の賃金を受け取り、日本人との差別は基本的になく、契約の範囲で自由に移動した。 1939〜1945年は朝鮮から日本への短期移民が爆発的に増えた時期でもあり、その中心は短期出稼ぎの移民労働者だった。
 来年以降も、佐渡金山の追悼式が開催されるだろうし、韓国で左派の「共に民主党」政権が誕生すれば、韓日は追悼式をめぐってさらに激しく対立するだろう。一方で、日本が足尾銅山、黒部ダムの世界遺産登録を推進する計画だというニュースがある。戦時労働者に対する「反日種族主義」の奴隷史観が克服されない限り、軍艦島(長崎県)と佐渡金山で起きた歴史騒動は繰り返されるだろう。(了)