【第1091回】自衛隊明記の闘いから逃げてはならない
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学特任教授 西岡力 岸田文雄首相は、自身の任期内に憲法改正を実現すると繰り返し公言している。首相の自民党総裁としての任期は来年9月までだ。それまでに衆参両院の3分の2の賛成で憲法改正発議案を通し、国民投票を実施して過半数を得なければならない。残された時間は限られている。具体的にどの条文を改正するのか確定させるべき時が来ている。 自民党は、①...
【第1090回】最高裁裁判官の選任方法を再考せよ
国基研副理事長・弁護士 髙池勝彦 性別変更に関する最近の最高裁判所の判断など、その内容に国民の意識とかけ離れてゐると感じられるものが少なくなく、最高裁裁判官の資質や意識について疑問が感じられる。そこで、最高裁裁判官の選任について再考する必要がある。 ●形骸化する内閣の指名・任命権 最高裁裁判官は、長官とその他の裁判官14人で構成されてゐる(裁判所法5条)。うち、...
【第1089回】植田日銀は市場に惑わされるな
国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男 植田和男総裁体制の日本銀行は外国人投資家を中心とする市場の投機勢力に押されている。このまま市場の後追いを続けると、急激な円安や金利高で回復基調の経済の失速を招きかねない。植田日銀は市場の思惑に動じない姿勢を示すべきだ。 ●足元を見透かす投機筋 投機勢力が目をつけるのが2016年9月に始めた長短金利操作(イールドカーブ・...
【第1088回】「帝国の慰安婦」無罪判決の二つの意味
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学特任教授 西岡力 10月26日、韓国最高裁判所は朴裕河・世宗大学名誉教授の著書『帝国の慰安婦』の記述は「学問的主張ないし意見表明」であって名誉毀損罪で処罰される「事実の摘示」と見ることは困難だとして、罰金1000万ウォン(約110万円)を宣告した2審判決を無罪趣旨で破棄し、高裁に差し戻した。学問の自由の観点から歓迎したい。 ●学問の自...
【第1087回】手術で性別を変更できることが問題
国基研企画委員兼評議員・福井県立大学名誉教授 島田洋一 最高裁が10月25日、一定の条件の下で性別変更を認めた現行の性同一性障害特例法のうち、生殖腺(内性器である精巣又は卵巣)の「不機能化」を条件に定めた3条1項4号は違憲という決定を下した。 「性同一性障害者に対し、強度な身体的侵襲である生殖腺除去手術を受けることを甘受するか、又は性自認に従った法令上の性別の取扱いを受...
【第1086回】岸田首相に「パッション」はあるのか
国基研企画委員・月刊「正論」発行人 有元隆志 これが岸田政権の終わりの始まりなのか。自民党の世耕弘成参院幹事長が10月25日の参院本会議代表質問で、「支持率が向上しない最大の原因は、国民が期待する『リーダーとしての姿』が示せていないことに尽きる」と述べ、岸田文雄首相の指導者としての資質に公然と疑問符を突き付けた。 ●党幹部が異例の苦言 世耕氏は冒頭でこそ「首相支...
【第1085回】日本経済再生へ消費税の時限減税が必要
国基研企画委員・元内閣官房参与 本田悦朗 政府が近くまとめる新たな経済対策の原案はその柱として、「供給力の強化」と「国民への還元」を掲げている。前者は対策の軸足を需要拡大から供給力の拡大に移すことを意味する。確かに総需要が潜在的供給力に近づいており、需給ギャップは縮小しつつあるが、デフレの後遺症が続く中で依然として低成長が続いており、過去に実現した低い国内総生産(GDP)を...
【第1084回】中国で逮捕された邦人の救出に全力を尽くせ
産経新聞台北支局長 矢板明夫 「スパイ行為」を行ったとして今年3月に北京で中国当局に拘束された日本の大手製薬会社の50代の男性幹部が今月中旬、正式に逮捕された。これから起訴され、非公開の裁判が行われるとみられるが、有罪判決が下される可能性が極めて高い。 この幹部は北京に20年以上駐在した経験があり、中国の貧しい地域に定期的に薬品を寄付するなど、思いやりのある人物だ。筆者...
【第1083回】核についての議論を活性化させよう
国基研企画委員・元防衛庁情報本部長 太田文雄 10月19日に米国防総省が中国軍事力に関する年次報告書を公表した。メディアは「2023年5月の時点で中国は500発以上の核弾頭を保有し、2030年までに1000発を超える」と、予測を遥かに上回るペースで核戦力の強化が進んでいることに着目したが、仔細に読んでみると、注目すべき記述はそれにとどまらない。 ●中国近海から米本土...
【第1082回】首相から危機感が伝わってこない
国基研副理事長 田久保忠衛 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスが、民主主義国家イスラエルに対して卑劣な大規模の奇襲攻撃を行った事件だ、と正確に理解する必要があると思う。 ●ハマスの背後にイランと中露 ハマスが事前にイランと協議し、承認を得て実行に移された、と一米紙が事件翌日に報道して世界を驚かせたが、その後サリバン米大統領補佐官は「広い...