【第1127回】中国の経済衰退が促す対外膨張を警戒せよ
国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男 3月11日に閉幕する中国の全国人民代表大会(共産党主導の疑似国会)で、習近平政権は不動産バブル崩壊不況に対し、根拠に乏しい高経済成長見通し以外に有効な政策を示せなかったが、警戒すべきは別にある。経済衰退の焦燥が習氏を対外膨張路線へと駆り立てることだ。 ●ウォール街に見放された 本欄1月22日付で論じた通り、中国の国内...
【第1126回】米のウクライナ早期追加支援を期待する
国基研企画委員兼研究員 湯浅博 バイデン米大統領が7日に行った一般教書演説は、自由と民主主義が「国内外の両方で同時に攻撃にさらされている」と警鐘を鳴らし、ウクライナ支援を力強く打ち出した。侵略国家ロシアの優位は、力で現状変更しようとする中国を勇気づけるから、ウクライナ支援は日本の国益とも合致する。バイデン氏が議会に呼び掛けたように、これ以上ロシアのプーチン大統領を喜ばせない...
【第1125回】日本は核の議論から逃げるな
国基研企画委員・元陸上幕僚長 岩田清文 ウクライナ侵攻直後、プーチン・ロシア大統領が核兵器を「戦闘態勢」に移行すると発言したことを受け、英BBCは「これによりロシアが『戦術』核兵器を使用する恐れが高まった。全面的な核戦争とまではいかないが、劇的な展開だ」と報じている。バイデン米大統領も昨年6月、「プーチン氏が戦術核を使うことを懸念している」と述べ、危険性は「現実のものだ」と...
【第1124回】岸田首相は自民派閥解消の実現を
国基研企画委員・月刊「正論」発行人 有元隆志 自民党がガバナンス(統治)機能不全に陥っている。 衆院政治倫理審査会の開催をめぐって、出席者の人選や公開の在り方で与野党が対立し、最後は岸田文雄首相(党総裁)が自ら出席を申し出ないと事態を打開できなかった。国会対応の最終的な責任者である茂木敏充幹事長がほとんど動かなかったためである。 岸田首相が派閥による政治資金パーティ...
【第1123回】「43兆円」への固執は国際情勢が許さない
国基研企画委員・麗澤大学特別教授・元空将 織田邦男 円安、物価高騰の影響で、防衛装備品の調達価格が高騰し、「防衛力の抜本的強化」が危ぶまれている。2月19日、防衛省の有識者会議で、座長の榊原定征経団連名誉会長は「為替変動を考えると、5年間に43兆円の枠で防衛力強化ができるのか。現実的な視点で見直す必要がある」と問題提起した。 これに対し木原稔防衛相は20日、「必要な防衛...
【第1122回】韓国で露呈した法治の実情―尹大統領の「原罪」
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学特任教授 西岡力 韓国の尹錫悦大統領と与党「国民の力」トップの韓東勲非常対策委員長には「原罪」がある。2人とも政治家になる前は特捜部検事だった。著名なジャーナリスト趙甲済氏は2月上旬、私に「検事時代の2人は法と正義に基づいて巨悪に立ち向かった法律家ではなく、法を使って反対派を弾圧する法技術者だった。この2人を批判しない大多数の韓国の保守派は真...
【第1121回】宗教者は信教の自由侵害に沈黙するな
主の羊クリスチャン教会牧師・東京キリスト教神学研究所幹事 中川晴久 現在、盛山正仁文部科学相は旧統一教会の関連団体から選挙支援を受けたにもかかわらず「教団と関係がない」ことを強調し、一方で選挙応援をした旧統一教会信者は「捨て駒」同然の扱いに憤慨し、盛山氏との関係をマスコミにリークして対抗している。 事の始まりは、安倍晋三元首相が旧統一教会を憎むテロリストに暗殺され...
【第1120回】「拉致」と「核」の分離が平壌を動かした
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学特任教授 西岡力 「(岸田文雄)首相が平壌を訪問する日もあり得るであろう」。2月15日、北朝鮮の事実上のナンバー2である金与正副部長が、談話でこう述べた。1月5日には、兄の金正恩委員長が岸田首相に閣下という敬称を付けて能登半島地震の見舞い電報を打っている。これらの動きは、拉致問題を核問題と切り離して先に交渉しようという岸田首相のメッセージが北...
【第1119回】日本もトランプ政権復活に備えよ
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 今年の米大統領選挙で共和党候補としての指名をほぼ確実にしたトランプ前大統領が、防衛費をきちんと払わない北大西洋条約機構(NATO)同盟国への攻撃をロシアに促す趣旨の発言をして、物議を醸している。11月の本選挙で仮に当選すれば、日米同盟の在り方にも注文を付けてくる可能性が否定できず、日本としてもあらゆる事態を想定して対応を練っておく必要があるだ...
【第1118回】公明党は連立与党たる責任を果たせ
国基研企画委員・元陸上幕僚長 岩田清文 日英伊3か国共同による次期戦闘機の開発をめぐり、公明党首脳部が慎重姿勢を崩さず、連立与党の足並みを乱している。 ●盟友を増やす戦闘機第三国移転 高度な技術と先進的な運用ノウハウが要求される次世代戦闘機の開発は、もはや一国のみでは開発できず、それぞれの国の最先端技術と知見を統合することが主流となっている。この共同開発により、...