立憲君主国家である日本にとって、今年は極めて重要な年になりそうだ。
現行の皇室典範のままだと皇族数が激減していくことになる。そうした危機感を背景に令和3年、菅義偉政権が「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」に関する有識者会議を設置。有識者会議は令和4年1月に報告書をまとめた。この報告書において政府は「歴代の皇位は、例外なく男系で継承」されてきた先例を重く受け止めると共に、皇族数の確保を図ることは喫緊の課題だとして次の三つの改革案を提示した。
(1)内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとする
(2)皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系男子を皇族とする
(3)皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とする
要は女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案と、「皇統に属する男系の男子」が皇族になる案を提示したわけで、いずれも何らかの法整備が必要になる。この「皇統に属する男系の男子」とは、現行憲法制定下の昭和22年10月まで皇族であった伏見宮、閑院宮、山階宮、北白川宮、梨本宮、久邇宮、賀陽宮、東伏見宮、竹田宮、朝香宮、東久邇宮の、いわゆる十一宮家に属する男系男子のことを指す。
●反応早かった維新
衆参両院議長はこの報告書(以下「政府案」と呼称)に対する意見を各党に求めた。最も対応が早かったのは、日本維新の会だ。令和4年4月、意見書を提出、(1)案については皇位継承資格を女系に拡大しかねないと懸念を表明する一方、(2)(3)案を高く評価した。
各党の動きが鈍いことから昨年末、額賀福志郎衆院議長は各党に対し、通常国会(つまり今国会)中に立法府に議論の場を設ける方針を伝え、各党内の早急な意見集約を要請した。
岸田文雄首相も1月30日、施政方針演説で「早期に『立法府の総意』が取りまとめられるよう、国会において積極的な議論が行われることを期待します」と表明した。そして政府は3月15日、第2次安倍政権において上皇陛下の譲位や天皇陛下の即位の式典事務作業を取り仕切り、皇室制度を担当する内閣官房参与を務めた山崎重孝・元内閣府事務次官を皇室制度連絡調整統括官に再任する人事を発表、皇室の伝統、先例を重視した制度改正を進める布陣を整えた。
●与野党の大勢が政府案容認
一方、各党はと言えば、今年に入って、NHKから国民を守る党、国民民主党、有志の会、公明党が政府案にほぼ賛成する意見書を提出した。一方、いわゆる「女性宮家」を強く主張していた立憲民主党は党内に(2)(3)案を強く支持する伝統重視派議員が少なからず存在することから意見集約を断念し、両論併記の「論点整理」を提出した。よって与野党の大勢が政府案に賛成、または政府案を容認する方向で足並みを揃えたことになる。
皇室を政争の具にしないという良識が発揮されたことを歓迎すると共に、皇室の伝統、先例を踏まえた制度改正が速やかに進むことを期待したい。(了)