【第1041回】広島サミット成功と浮かれていいのか
国基研副理事長 田久保忠衛 「核なき世界」への決意を新たにしたとか、「広島で平和へのコミットメントを確認した」といった空々しい表現が日本のマスメディアに躍った。その中でウクライナのゼレンスキー大統領の広島入りが投じた「国際政治の現実とは何か」の一石は貴重な価値を持つ。お祭り騒ぎや日本式のおもてなしではどうにも片付かない冷厳な現実が待ち受けている。 ●トランプ氏再登場...
【第1040回】原子力規制委の抜本的改革が必須
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 原子力規制委員会は17日、東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)の事実上の運転禁止命令を解除しないことを決めた。テロ対策不備に関して 改善を要求した6項目のうち2項目の改善が不十分との理由だった。 規制委による現在の規制は、かつて米国のSALP(サルプ)という規制手法が許認可権限を振りかざして、全米の原発の大小トラブルに制裁を...
【第1039回】ビジョンだけで国防や軍縮は達成できない
国基研評議員兼企画委員 太田文雄 主要7カ国(G7)首脳による広島サミットは、核軍縮に関する共同文書「広島ビジョン」を発表した。世界最初の被爆地、広島を地元とする岸田文雄首相の願望である「核兵器のない世界の実現」を「究極の目標」として盛り込んでいる。 しかし、ロシアによる「核兵器使用の威嚇」を文書でいくら非難しても、ロシアはウクライナに対する核恫喝をやめないであろう。「...
【第1038回】「軍事大国」ではだめなのか
国基研企画委員・月刊正論発行人 有元隆志 米誌タイム(5月22―29日号)の表紙に岸田文雄首相が登場し、首相とのインタビュー記事の電子版には当初、「岸田首相はかつてパシフィスト(平和主義)だった日本をミリタリーパワー(軍事大国)に転換しようとしている」との見出しが付けられていた。岸田首相本人が「記事の中身と見出しがあまりに違う」(中国新聞のインタビュー)と異議を唱えたため、...
【第1037回】「人道支援てこに拉致被害者救出」方針を米は理解
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 5月初め、北朝鮮拉致被害者の「家族会」、支援組織「救う会」、超党派の「拉致議連」の訪米が4年ぶりに行われ、筆者も「救う会」会長として参加した。「親世代の家族が存命のうちに全拉致被害者の一括帰国が実現するなら、我が国が北朝鮮に人道支援を行うことに反対しない」とする家族会と救う会の新運動方針への理解と支援を求めるのが訪米の主目的...
【第1036回】韓国大統領の必死の国防決意に学べ
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 韓国の尹錫悦大統領が米国を国賓訪問し、4月26日、バイデン米大統領と共に、米国の拡大抑止強化を盛り込んだワシントン宣言を公表した。尹大統領は共同記者会見で「私たち2人の首脳は北朝鮮の核ミサイルの脅威に直面し、相手の善意に期待する偽物の平和ではなく、圧倒的な力の優位を通じた平和を達成するため、両国間の拡大抑止を画期的に強化する...
【第1035回】日本政府も中国「派出所」摘発を
芥川賞作家 楊逸 このほど、ニューヨークのチャイナタウンで在米華人を監視するための「派出所」(警察署)を運営していた米国籍の中国秘密警官が2人逮捕された。喜ばしい知らせに拍手を送りながら、ここ数年、我が身に起きた様々なことが脳裏に蘇った。 ●本出版後に相次いだ嫌がらせ 中国出身で日本に帰化した私が中国から嫌がらせを受けるようになったきっかけは、全世界を襲ったパン...
【第1034回】米韓合意で際立つ非核三原則の非常識
国基研副理事長 田久保忠衛 中国、ロシア、北朝鮮がいずれも核保有国だという事実を考えるだけで、日韓両国は世界で他に例のない危険な国際環境に置かれていると断定できる。だから日韓両国はひたすら米国の拡大抑止力に依存してきた。その米国の威信が揺らぎ始めた。 尹錫悦韓国大統領は国民の核武装賛成論を背景にバイデン米大統領との間で従来の拡大抑止の「グレードアップ」(格上げ)に成功し...
【第1033回】インドは次の世界大国になるか
インド政策研究センター教授 ブラーマ・チェラニー 世界最大の民主主義国インドは最近、英国を抜いて世界5位の経済大国になった。今、インドは人口で中国を抜き去ろうとしている。中国が世界一の人口大国でなくなるのは、少なくとも3世紀ぶりとなる。 インドの経済は中国より小さいが、成長が速い。世界銀行によると、インドは世界の主要国で最速の経済成長を遂げている。今後5年間にインドは全...
【第1032回】中台平和統一も日本の一大事
国基研企画委員・麗澤大学特別教授 織田邦男 フランスのマクロン大統領は4月5日訪中し、習近平国家主席と会談した。帰国の途次、マクロン氏は台湾問題に関して、欧州は中立的であるべきだとの見解を示し、「欧州を代表する見解ではない」と批判を浴びた。帰国後、「現状変更を認めないというフランスや欧州の立場は変わらない」と軌道修正したものの、欧州にとって「台湾有事」は所詮「対岸の火事」と...