【第1067回】外交無策が続く中国の水産物禁輸への対処
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 中国による日本産水産物の禁輸に対して、日本外交の無策が続いている。岸田文雄首相は漁業関係者への支援策ではスピード感重視だが、中国に対する行動は躊躇するばかりだ。外交当局者は「中国を刺激しない」を繰り返す。しかし水産物禁輸は中国の「経済的威圧」であり、中国がそれを対日外交カードとして利用しようとすることを前提に、日本政府は早急に行動すべ...
【第1066回】ウクライナへの武器支援に踏み切れ
国基研企画委員・元陸上幕僚長 岩田清文 かつての武器輸出三原則や、改定後の防衛装備移転三原則などの自己規制は、長年にわたり日本の安全保障政策において自らの手を縛り続けてきた。これを改善すべく、昨年12月に閣議決定された「国家安全保障戦略」では、海外への装備移転が日本にとって望ましい安全保障環境の創出のための重要な政策手段になるとの認識が示された。併せて、防衛装備移転三原則な...
【第1065回】中国の日本産水産物禁輸に戦略的行動を
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 中国が日本からの水産物の禁輸を発表した。1か月前、中国による日本の水産物の全量検査に対して「日本は対抗措置を」と本欄で提言した。しかし、岸田内閣は何らそうした対応を行わないまま、東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出に至った。 岸田文雄首相も野村哲郎農水相もそろって中国による禁輸を「想定外」とコメントしたことには驚きを禁じ...
【第1064回】中国の金融危機でリーマン級災厄の恐れ
国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男 中国の金融界が揺らいでいる。ノンバンク(非銀行系)の大手信託会社が支払い不能に陥ったからだ。習近平政権は危機深刻化を防ぐ手だてを持たない。最悪の場合、リーマン・ショック級の金融危機を引き起こしかねない。 中国の中央銀行、中国人民銀行はすべての金融機関が手がける投融資を「社会融資総量」として分類している。日本円に換算すると、ノン...
【第1063回】靖國神社の御霊に応えよ
国基研理事・第26代海上幕僚長 古庄幸一 岸田文雄首相が5月7日から2日間、韓国を訪問した。報道によると、政府専用機でソウルの韓国空軍基地に降りて、裕子夫人と共に、韓国の歴代大統領や朝鮮戦争の戦死者などを追悼する国立墓地「国立ソウル顕忠院」を訪れ、顕忠塔に献花して焼香を行い、黙祷を捧げた。首相は帰国前の記者会見で、「シャトル外交を再開して、日韓両国の信頼関係を強化し、新しい...
【第1062回】早すぎた金融政策の「柔軟化」
国基研企画委員・元内閣官房参与 本田悦朗 日銀は7月27~28日の政策決定会合で、アベノミクスの「第一の矢」である「大規模な金融緩和」の手段として実施している長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)の「柔軟化」を決定し、即日実施に移した。即ち、従来、10年物国債の利回りの上限が0.5%であったのに対し、これを1.0%に引き上げたのである。 この新しい運用は2...
【第1061回】中国のガリウム輸出管理に過剰反応は禁物
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 中国は米中対立の主戦場である半導体をめぐり対抗策を繰り出している。5月に米半導体大手マイクロン・テクノロジーの製品調達を禁止したのに続き、8月からは半導体材料にもなるガリウムやゲルマニウムを輸出許可の対象とした。米国などへの牽制が目的だ。 米国は昨年10月に対中半導体規制を打ち出し、さらに強化しようとしている。日本も7月23日から...
【第1060回】日銀は国債投機を勢いづかせるのか
国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男 日本銀行は7月28日の金融政策決定会合で、長期金利の許容上限を1%に事実上引き上げた。4月に就任した植田和男総裁は、黒田東彦前総裁時代に始めた長短金利操作(YCC)の修正に着手したわけだが、国債や外国為替の投機を勢いづかせかねない。 ●金利上昇の負の効果 日本経済は異次元金融緩和などアベノミクスの遺産のおかげで今、着実...
【第1059回】バイデン政権の対中宥和外交の危険
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学名誉教授 島田洋一 米国のケリー気候変動問題担当大統領特使が7月中旬、中国を訪問し、外交トップの王毅中国共産党政治局員らと会談した。 気候変動対策は他の政治案件とは切り離して進めるべきだと訴えたケリー氏に対し、王氏は、米中関係は全ての問題がリンクしており、特に台湾問題で米側が中国側の意に沿う行動を取らなければ、脱炭素で踏み込んだ合意な...
【第1058回】中国による水産物輸入規制に対抗せよ
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出に対して、中国は日本からの輸入水産物への放射性物質の検査強化を打ち出した。これまでのサンプル検査から全量検査に切り替えたのだ。その結果、鮮魚などが税関で留め置かれる事態が発生している。さらに香港は海洋放出されれば輸入を禁止する方針も打ち出している。中国、香港向けは日本の水産物輸出の約4割を...