解散すべくして解散したと言っていい。自民党の最大派閥、清和政策研究会(安倍派)のことである。会長だった安倍晋三元首相という「羅針盤」を失い、後継会長をめぐり迷走した上、政治資金収支報告書への派閥パーティー収入の不記載見直しを安倍氏が指示したにもかかわらず、従わなかったからだ。
●幹部の責任うやむやに
「解散は安倍さんの天の声だ」と語るのは安倍氏の元側近だ。令和3(2021)年11月に派閥会長に就任した安倍氏は、派閥パーティー券の販売割り当て(ノルマ)を超えた分の還流(キックバック)不記載を知り、やめるよう指示した。
元側近によると、知名度が高い安倍氏は、自身が派閥パーティー券を売ると他の議員のノルマを圧迫してしまう、と自ら集めた別の資金からノルマ分を派閥に寄付していた。会長になるまで還流の慣例を知らなかったという。令和4(2022)年になって還流不記載の事実を知り驚き、すぐにやめるよう指示した。にもかかわらず、同年7月に安倍氏が暗殺されると、9月の国葬の準備が行われているさなかに派閥幹部たちは復活させた。
「この時やめていれば、今回のような事件は起きなかったはずだ。後継会長選びに現を抜かした幹部らが『安倍さんに申し訳ない』と言うなら、還流再開を主導したことを正直に白状しろと言いたい」と元側近は憤る。幹部の責任が問われたが、派閥解散によって有耶無耶となった。
●改憲実現で安倍氏の遺志を継げ
タイミングを見て、派閥創始者の孫である福田達夫元総務会長を中心に「政策集団」として集まろうという声があるが、笑止千万である。単なる数合わせでは今と変わらない。
安倍氏は戦後レジームから脱却し、誇りある国を創るため、志を同じくする議員らと全国運動を展開するための組織「創生『日本』」を結成、これが平成24(2012)年12月に発足した第2次安倍政権の母体となった。清和政策研究会ではなかったのである。
自民党所属議員の4分の1を占める約100人の派閥メンバーは、このままでは故安倍氏に合わせる顔がないだろう。では何をすべきか。安倍氏は令和2(2020)年8月の退陣会見の際、やり残したこととして拉致問題、ロシアとの平和条約、そして憲法改正を挙げた。「志半ばで職を去ることは断腸の思い」と表現した。ロシアとの平和条約、拉致問題は相手国があるが、憲法改正は日本単独で達成できる。安倍氏の遺志を継ぐという初心に戻り、憲法改正実現に向けて尽力すべきである。(了)
第513回 憲法改正に向けて段取りを進めよ
今こそ政治のリーダーシップが必要です。「政治とカネ」はもちろん重要ですが、それだけが重要課題ではありません。岸田政権からは政策実現の道筋が見えてきません。派閥解消は自民党が真の政策中心に生まれ変わるチャンスです。憲法改正に向けた段取りを進めていきましょう。