【第1134回】「失われた4か月」を取り戻せ
国基研企画委員・月刊「正論」発行人 有元隆志 派閥の政治資金規正法違反事件に絡み、自民党は39人の所属国会議員を処分した。岸田文雄首相(党総裁)はこれでこの問題に一区切りをつけたい意向だが、党内に生じた亀裂を修復するのは容易でない。事件が大きく報道されるようになった昨年12月1日から今日まで、「失われた4か月」を招いたのは岸田首相その人だからだ。 ●「三つのJ」 ...
【第1133回】北の揺さぶりに日本は原則を曲げるな
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学特任教授 西岡力 北朝鮮の金正恩政権の対日姿勢が突然硬化した。岸田文雄政権はこれまでと全く変わらない原則的なことを言っているだけなのに、北朝鮮はそれを問題視し、いかなる接触も交渉も拒否すると高官が繰り返し表明している。 ●金与正氏が態度一変 3月25日、金正恩国務委員長の妹で実質的な権力ナンバー2の金与正朝鮮労働党副部長が談話を出...
【第1132回】トカゲの尻尾切りで再エネ疑惑の幕引くな
国基研理事・北海道大学名誉教授 奈良林 直 太陽光や風力発電は、原子力に代わる安全でクリーンな再生可能エネルギーとして持て囃されてきたが、世界的に再エネの力不足が認識され、資源問題や土砂崩れや環境破壊も引き起こし、再エネ事業者と地元住民とのトラブルも多発している。そのような中で、河野太郎行革担当相の肝いりで設置された再エネ規制総点検タスクフォース(再エネTF)の会議資料に中...
【第1131回】日銀に金融緩和維持へ強い決意を望む
国基研企画委員・元内閣官房参与 本田悦朗 日銀は3月19日の金融政策決定会合で、金融政策の基準となる無担保オーバーナイト・コールレート(銀行間で資金を一晩融通する時の金利。以下「コールレート」)をマイナス金利(直前の平均はマイナス0.008%程度)から0~0.1%程度で推移するように改め、利上げに転じた。同時に、10年物国債の利回りの上限の目処を1.0%とする長短金利操作(...
【第1130回】憲法改正なくして岸田氏再選なし
国基研企画委員・月刊「正論」発行人 有元隆志 岸田文雄首相は今年9月までの自民党総裁の任期中に憲法改正実現を目指すと繰り返し表明してきた。もちろん実現を強く望むが、最近は党内の保守派の支持をつなぎとめるための単なるスローガンとなっているのではないか。掛け声だけで何ら指導力を発揮しないと、とても9月までに改正は実現しない。 ●条文化、なぜ「今国会中」でないのか 岸...
【第1129回】日銀はデフレを再発させない決意を示せ
国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男 日銀は18、19日開催の金融政策決定会合でのマイナス金利政策解除に向け、著しく前のめりだ。連合集計の春季労使交渉賃上げ率が5.28%と33年ぶりの高水準で、2%の物価上昇目標達成のメドが立ったとの判断によるが、現実には国内需要の回復は弱々しい。利上げ決定以前に、デフレを再発させない確固とした決意と十分な説明を日銀に問いたい。 ...
【第1128回】岸田首相の訪朝あり得るか
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学特任教授 西岡力 私は2月19日の本欄で「近く、岸田(文雄)首相訪朝があり得る」と書いた。2月15日に北朝鮮の事実上の権力ナンバー2である金与正労働党副部長が訪朝の可能性に言及する談話を出したことを受けたものだった。ところが、マスコミと専門家の多くは、談話では拉致問題を障害物としない限り、という前提条件を付けているとして、訪朝の可能性を疑った...
【第1127回】中国の経済衰退が促す対外膨張を警戒せよ
国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男 3月11日に閉幕する中国の全国人民代表大会(共産党主導の疑似国会)で、習近平政権は不動産バブル崩壊不況に対し、根拠に乏しい高経済成長見通し以外に有効な政策を示せなかったが、警戒すべきは別にある。経済衰退の焦燥が習氏を対外膨張路線へと駆り立てることだ。 ●ウォール街に見放された 本欄1月22日付で論じた通り、中国の国内...
【第1126回】米のウクライナ早期追加支援を期待する
国基研企画委員兼研究員 湯浅博 バイデン米大統領が7日に行った一般教書演説は、自由と民主主義が「国内外の両方で同時に攻撃にさらされている」と警鐘を鳴らし、ウクライナ支援を力強く打ち出した。侵略国家ロシアの優位は、力で現状変更しようとする中国を勇気づけるから、ウクライナ支援は日本の国益とも合致する。バイデン氏が議会に呼び掛けたように、これ以上ロシアのプーチン大統領を喜ばせない...
【第1125回】日本は核の議論から逃げるな
国基研企画委員・元陸上幕僚長 岩田清文 ウクライナ侵攻直後、プーチン・ロシア大統領が核兵器を「戦闘態勢」に移行すると発言したことを受け、英BBCは「これによりロシアが『戦術』核兵器を使用する恐れが高まった。全面的な核戦争とまではいかないが、劇的な展開だ」と報じている。バイデン米大統領も昨年6月、「プーチン氏が戦術核を使うことを懸念している」と述べ、危険性は「現実のものだ」と...