国連の女子差別撤廃委員会は10月29日、皇位を男系男子に限る日本の皇室典範について、女子差別撤廃条約と「相いれない」と改正を勧告した。委員会の審議に参加したNGO「なでしこアクション」の山本優美子代表は、怒りを込めて次のように主張している。「リベラルフェミニスト思想の委員と日本の左派が意気投合した内容がそのまま反映されたものだ。そんな勧告を有難く受け入れる必要は全くない。勧告を受け入れないと『国際社会に後れをとる』などと言うのは、委員会の実態を知らない浅はかな意見だ」。
●皇室典範は女性差別?
委員会は数年に1回、女子差別撤廃条約加盟国の条約履行状況を審査し、勧告を出す。23人の委員は加盟国代表ではなく、専門家が個人として任命される。日本政府は今回を含めて6回審査を受けた(1988年、94年、2003年、09年、16年、24年)。勧告は、①加盟国政府が報告書を委員会に提出②委員会が政府に質問③政府が回答④審査会の開催―というプロセスを経て出される。勧告に対して、⑤政府は追加情報を委員会に提供する。②④⑤の段階でNGOが意見書を提出できる。また、審査会ではNGOが委員に意見を述べる機会もある。
委員会が皇室典範を取り上げたのは、2003年の審査でフィリピン人委員が、天皇皇后両陛下のご長女愛子さまが天皇になるような法改正を検討しているかと質問したのが最初だった。この時は勧告には入らなかった。2016年の審査で、皇室典範は女性差別だとする勧告が出そうになったが、審査の過程で取り上げられなかった内容を勧告に盛り込むのは手続き違反だと日本政府が抗議して削除された。
ところが、2020年3月9日付で委員会が発表した「日本政府への事前質問リスト」に「現在は皇位継承から女性を除外するという決まりがあるが、女性の皇位継承が可能になることを想定した措置についての詳細を説明せよ」という内容が入った。日本の左派NGO「自由人権協会」が皇室典範を女性差別だとして委員会で取り上げるべしとする意見書を出しており、それを委員が採用したと見られる。今回の勧告はこの質問の延長線上で行われた。
●条約脱退を検討せよ
危機感を持った別のNGO「皇統を守る国民連合の会」(葛城奈海会長)が意見書を提出し、ジュネーブでの会議に参加して発言、追加意見書も送付し、日本の皇室と男系男子の伝統について丁寧に説明したパンフレットを委員たちに直接手渡した。日本政府も「我が国の皇室制度も諸外国の王室制度もそれぞれの国の歴史と伝統を背景に国民の支持を得て今日に至っているものだ。皇室典範に定める我が国の皇位継承のあり方は国家の基本に関わる事項だ。委員会が我が国の皇室典範について取り上げることは適当ではない」と反論した。しかし、勧告では、皇室典範が女性差別だと書かれてしまった。
山本氏は、勧告を無視し、女子差別撤廃条約からの脱退を検討せよと提案している。その提案を全面的に支持したい。山本氏の報告はここで読める。(了)