公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

有元隆志

【第1193回】石破首相は退陣せよ

有元隆志 / 2024.10.28 (月)


国基研企画委員・産経新聞特別記者 有元隆志

 

 27日投開票の衆院選で、自民、公明の与党は石破茂首相(自民党総裁)が「勝敗ライン」とした過半数(233議席)を下回った。にもかかわらず、石破首相や森山裕自民党幹事長は続投の意向を示した(同日段階)。2007年の参院選で自民党が大敗した際、続投を表明した安倍晋三首相(当時)に「選挙に負けたのに続投するのは理屈が通らない」と辞任を求めたのは他ならぬ石破氏だった。今回、自民党単独でも選挙前の247議席から50議席以上減らし191議席しか獲得できなかったのであるから、当時の「正論」を思い出し、石破首相は退陣すべきだ。

 ●党のガバナンスの欠如
 衆院選の最中、石破首相の遊説を見たが、何のために有権者に信を問うのか明確なメッセージが伝わってこなかった。衆院選は政権選択の選挙である。本来、デフレからの脱却を中心とする経済対策、中国の軍事的威圧など日本を取り巻く厳しい安全保障環境に対処するための抑止力の強化が最大のテーマであったはずだ。だが、石破首相は野党第1党の立憲民主党と「差別化」を図ることができなかった。むしろ、岸田文雄前政権と同様、一部世論の顔色をうかがう姿勢に終始した。これでは有権者が「お灸」を据えるため、野党に票を投じるのもやむを得ない。
 それを助長したのが森山幹事長らの相次ぐ判断ミスだ。石破首相は9月の自民党総裁選で、新内閣発足後、予算委員会を開いて議論を尽くすべきだと述べていたが、森山氏らの一日も早い選挙の方が有利との説得に応じて選挙日程を前倒しした。森山氏は政治資金パーティー券収入を政治資金収支報告書に記載しなかった候補をいったんは公認するとしておきながら、批判を浴びると12人を非公認とするなど混乱をもたらした。そして極め付けは、自民党が不記載を理由に非公認とした候補者が代表を務める政党支部に公認候補と同額の2000万円を支給したことだ。党のガバナンスが機能しておらず自滅したと言っていい。その最終責任を負うべきは総裁の石破首相である。

 ●高市、小林氏を中心に立て直しを
 自民党総裁選は党が変わるチャンスでもあった。女性初の宰相を目指す高市早苗前経済安全保障担当相、40歳代の小林鷹之元経済安全保障担当相が立候補していたが、大きな変化を望まない岸田前首相らの支援で石破総裁が誕生した。今こそ、高市氏や小林氏を中心に自民党は変わるべきである。有権者は絶妙のバランス感覚で、政権担当能力の到底ない立憲民主党には比較第1党の議席を与えなかった(148議席)。自民党に残された時間は多くない。この機会を逃すべきではない。(了)