【第1171回】総裁選候補者は自らの安全保障観を語れ
国基研企画委員・麗澤大学特別教授・元空将 織田邦男 来月の自民党総裁選に、現時点で12名の議員が名乗りを上げている。総裁選は、自民党が政権与党である限り、首相を選ぶ選挙であり、同時に自衛隊最高指揮官を選ぶことを意味する。かつて自衛隊高級幹部会同で、「ここに来る前に六法全書を調べたら、私が最高指揮官だった」と述べた首相がいた。こういう人は総裁になる資格がない。 ●防衛...
【第1170回】国民の信頼失った首相の退陣は当然だ
国基研理事長 櫻井よしこ 再選の可能性を模索した岸田文雄首相が自民党総裁選出馬を断念した。評価すべき実績は少なくない。それでも不出馬の決断は正しいだろう。国民の信頼を回復できないまま、首相が低支持率に喘ぎ続けた理由は明らかだ。 2021年10月の政権発足以降、岸田氏は衆参両院の選挙で圧勝し、次なる選挙の心配をせずに、日本をまともな独立国家にするための憲法改正や皇位継承安...
【第1169回】ぎりぎり事実を曲げなかった佐渡金山の展示
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学特任教授 西岡力 佐渡の金山が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録された。韓国も賛成した。 登録決定直前まで日韓両国は水面下で折衝を進めていた。日本政府は当時の国際法に違反するような「強制労働」はなかったという立場を固守し、韓国側は「強制労働被害の現場」だったことを展示せよと迫った。その結果、①登録決定直後に現地の相川郷土博物...
【第1168回】非核ミサイルで戦術核攻撃を抑止せよ
国基研企画委員・元陸上幕僚長 岩田清文 拡大抑止に関する日米閣僚会合が7月28日、東京で開催された。核を含めた米国の拡大抑止に関して、これまで十数年にわたり事務レベルの会合が行われてきたが、閣僚である政治レベルで議論されたのは初めてである。 閣僚会合後の共同発表には、「閣僚は、米国の核政策及び核態勢並びに同盟における核及び非核の軍事的事項の間の関係性について緊密に協議す...
【第1167回】日銀は脱デフレのチャンスを潰すのか
国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男 日銀は7月31日の金融政策決定会合で、政策金利を0.25%に引き上げると同時に、国債の新規買い入れの減額を決めた。消費が停滞している中で金利と通貨発行量の両面で金融を引き締める。これでは、ようやく迎えた30年デフレからの脱出のチャンスを潰しかねない。 ●円安是正優先でタブー失念 植田和男日銀総裁は記者会見で利上げについ...
【第1166回】米大統領選が拉致問題に与える大きな影響
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学特任教授 西岡力 米国のトランプ前大統領は7月18日、共和党大会での大統領候補指名受諾演説で、「北朝鮮の金正恩委員長と仲良く過ごした。核兵器を持つ者と仲良く過ごすことは良いことだ」と語った。23日、北朝鮮国営の朝鮮中央通信は論評を出し、「国家の対外政策と個人的感情は厳然と区別すべきである」として、トランプ氏に距離を置く立場を表明した。 金...
【第1165回】原発の新規制基準を改定せよ
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 日本原子力発電が再稼働を目指している福井県の敦賀原発2号機に関し、原子力規制庁は26日の審査会合で、原子炉建屋近くの「K断層」が将来動く可能性があるかという「活動性」と、建屋真下の「D1断層」がK断層とつながっているかの「連続性」の二つについて、原電の主張が曖昧で、科学的根拠に乏しく、2号機が原発の新規制基準に適合しているとは認め...
【第1164回】トランプ政権復活の経済的影響
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 米大統領選挙はトランプ氏対ハリス氏の構図になる見込みで、その行方に世界が注目する。ハリス氏の政策は基本的にはバイデン政権を引き継ぐだろう。問題はトランプ政権復活の場合だ。経済面を見てみよう。 7月18日の共和党大会でトランプ氏は大統領候補指名受諾演説を行った。経済政策は、①インフレ危機の終結②金利の引き下げ③大規模減税④関税引き上...
【第1163回】中国の生産力増強は世界の脅威だ
国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男 中国共産党が5年に一度、経済の基本路線を決める第20期党中央委員会第3回全体会議(3中全会)は7月18日、国有企業を柱に経済を成長させる方針を打ち出して閉幕した。内需不振の中、国有企業を軸にサプライチェーン(供給網)と生産能力を増強し、安値輸出攻勢をさらに強める。反発する西側各国には重要原材料の供給力を武器に脅す。 ●GD...
【第1162回】トランプ戦略の重要ポイント
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学名誉教授 島田洋一 米国でトランプ政権が復活する可能性が高まっている。また、トランプ氏暗殺未遂事件の影響などで共和党員の投票率が上がると見られる中、民主党の大統領候補選びの混乱もあって、議会の上下両院も共和党が多数を占める可能性が強まってきた。従って、第1次政権時以上に、トランプ共和党の目指す政策が高スピードで実現されていくと見ておくべき...