公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

中川真紀

【第1230回】中国が対日攻撃可能ミサイルを増強

中川真紀 / 2025.03.03 (月)


国基研研究員 中川真紀

 

 近年、中国人民解放軍ロケット軍の人員・装備の増加が著しい。特に日本本土への攻撃が可能なミサイルが質量ともに増強されていることが衛星画像から確認された。

 ●日本の防衛網突破能力を獲得
 日本本土への攻撃が可能な通常弾頭ミサイルの部隊は、準中距離弾道ミサイル(MRBM)DF-17を保有する第614、627、655の3個旅団、地上発射巡航ミサイル(GLCM)CJ-10、CJ-100を保有する第635、656の2個旅団の可能性が大きい。
 DF-17は極超音速滑空兵器(HGV)を搭載し、軌道予測が困難なため、弾道ミサイルより迎撃が困難である。低空を飛行するためレーダーに捕捉されにくい巡航ミサイルのCJ-100は射程が3000~4000キロと、長距離を最高速度マッハ4の超音速で自律飛行し、目標をピンポイントで攻撃できる。
 これらの駐屯地の変化を衛星画像で比較すると、例えば第655旅団は、2024年に新たな駐屯地区が増設されDF-17旅団として運用されていることが分かる。他の4個旅団も2018~2019年以降、それぞれ1個旅団規模のミサイル関連施設が増築されており、2024年までにはおおむね完成し、既に運用されている可能性がある。
 これらのミサイル配備により、中国は日本の弾道ミサイル防衛(BMD)網を突破する能力を獲得したと言えるであろう。

 ●核ミサイル部隊も増強
 日本本土へ攻撃可能な核ミサイル部隊は、MRBMのDF-21Aを配備する安徽省の第611旅団と推定されていたが、2024年10月の中国の公式報道から、同旅団の装備がDF-21Aの2倍の射程を有する中距離弾道ミサイル(IRBM)DF-26に更新されたことが判明した。衛星画像からも、同旅団駐屯地へのDF-26の配備及び2024年に大規模な拡張工事の実施が確認された。
 また、日本を射程内に収めるDF-26配備部隊は他に3個旅団確認されており、日本だけでなくグアムも射程に入れ、更にDF-26は核、通常弾頭共に装着可能なため、どの部隊が日本を主に狙い、弾頭は核か通常弾頭なのかを判定することは容易でない。

 ●日本は反撃能力も強化を
 日本本土への攻撃可能なミサイル部隊は、質的にも量的にも増強され、脅威レベルが上がっている。加えてどの部隊が日本に対してミサイルを発射するのかの判定が困難になっているので、広く継続的に動向を監視し、対日脅威を見積もることが必要である。
 そして日本は、HGVや超音速巡航ミサイルへの防衛能力強化だけでなく、ミサイル防衛には撃ち漏らしもあるので、抑止のための反撃能力構築や防護のためのシェルター建設を現実の脅威に即して進めていく必要があるだろう。(了)