平成21年10月26日(月)発表した政策提言(東アジア共同体)について、
産経新聞(10月27日付2面)に記事が掲載されました。

平成21年10月26日(月)発表した政策提言(東アジア共同体)について、
産経新聞(10月27日付2面)に記事が掲載されました。

平成21年10月26日
[提言]
1、理念なき「共同体」論で同盟国の不信を煽るな
2、非民主主義国とは一線を画せ
3、中国中心の「華夷秩序」を警戒せよ
4、米国を構想から排除するな
1、理念なき「共同体」論で同盟国の不信を煽るな
鳩山由紀夫首相が唱える「東アジア共同体」論には理念が全くない。自由と民主主義の理念を重視する国内外の人々が不信感を抱き、怒りや軽蔑すら覚えるのは当然であろう。
鳩山氏は「Voice」2009年9月号に寄稿した論文「私の政治哲学」で、東アジア地域こそ「わが国が生きていく基本的な生活空間」であると強調し、この地域に安定した「経済協力と安全保障の枠組みを創る努力を続けなくてはならない」と述べた。つまり、日本が「アジアに位置する国家」であるという一点をもって、日中が「共同体」を形成すべきだと単純に考えているらしい。
米国には、鳩山論文の「覇権国家でありつづけようと奮闘するアメリカと、覇権国家たらんとする中国の狭間で、日本は、いかにして政治的経済的自立を維持し」というくだりに強い反発がある。
鳩山氏は米中両国を「覇権国家」という言葉で同一視しているが、これは旧ソ連、中国共産党のような全体主義勢力と対抗してきた日米同盟の意義を理解しない発言と言わざるを得ない。このような姿勢は日米同盟の根幹を揺るがしかねない危うさを持つ。
鳩山首相は、自由と民主主義という基本的価値観を共有し、全体主義勢力を脅威ととらえる国々との連携強化を、日本外交の基本として銘記すべきだ。
2、非民主主義国とは一線を画せ
鳩山首相が東アジア共同体構想の手本にしていると思われる欧州の地域統合は、キリスト教を共通の基盤とし、民主主義を共通の理念として進展を遂げてきた。これに対して東アジアは、こうした共通の基盤がない。また、共産党一党独裁の中国を抱え、共通の理念が欠落している。
域内の貿易を自由化する自由貿易協定(FTA)を含む経済連携協定(EPA)の締結、域外との共通関税を設ける「関税同盟」への移行、さらには単一通貨を導入する「経済共同体」への発展といった経済統合のプロセスは、理念の共有がなければ難しい。ましてや、次の段階の「政治・安全保障共同体」の形成となると、理念や価値観の共有がなければ実現不可能である。
鳩山首相は中国を共産党一党独裁体制のままで東アジア共同体に受け入れる意向のようだが、理念の共有が欠落したままで共同体の形成がいかにして可能になるのかを内外に説明しなければならない。
また、経済共同体の段階で、ヒト、モノ、カネが自由に移動できる環境がつくられる可能性がある。中国は日本の10倍以上の人口を擁する。民主党は外国人への参政権付与に「前向きに取り組む」と公言している。全体主義政党の統治下に置かれた人々が大量に日本に流入し、参政権まで持てば、中国による日本への「内政干渉」がさらに強まりかねない。最低限「民主主義国家であること」を共同体の参加要件とすべきではないか。
3、中国中心の「華夷秩序」を警戒せよ
中国は建国100周年に当たる2050年前後に「中華民族の偉大な復興」を成し遂げることを長期的な国家戦略としており、東アジア共同体自身が中国中心の東アジア秩序(華夷秩序)に転化しかねない危うさをはらんでいる。 a
2050年ごろといえば、米国の中国軍事力専門家リチャード・フィッシャー氏が「中国の究極的目標は21世紀半ばに世界の支配的な軍事大国になることだ」と警鐘を鳴らしている時期と重なる(フィッシャー氏の発言は、櫻井よしこ編『日本よ、「戦略力」を高めよ』文藝春秋刊161ページに収録されている)。
鳩山首相は、東アジア共同体構想の推進が中国の長期的国家戦略に利用される可能性があることを警戒すべきだ。
4、米国を構想から排除するな
岡田克也外相は10月7日、日本外国特派員協会で講演し、東アジア共同体について「日本、中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)、インド、オーストラリア、ニュージーランドの範囲で(構成を)考えたい」と述べ、米国を加えずに創設を目指す考えを表明した。
オバマ米政権はこの発言に懸念を強めている。10月14日にはカート・キャンベル国務次官補(東アジア・太平洋担当)が北京での記者会見で、「安全保障、経済、商業問題に関する重要対話は米国を含めるべきだ」と述べ、米国抜きの共同体構想を牽制した。
中国は一時期、「東南アジア諸国連合(ASEAN)+3(日中韓)」を核とする(つまり米国を排除する)東アジア共同体創設に意欲を見せていた。しかし、中国の影響力拡大を警戒する日本の主導でASEAN+3にインド、オーストラリア、ニュージーランドの3有力民主主義国を加えた「東アジア・サミット」(EAS)が2005年に初めて開かれたころから、東アジア共同体創設を目指す中国の熱意は冷めてきたように見える。
それと相前後して、胡錦濤国家主席の外交ブレーンといわれる鄭必堅・中国改革開放フォーラム理事長が、権威ある米外交専門誌フォーリン・アフェアーズ(2005年9―10月号)に寄稿し、「(東アジア共同体形成の)プロセスから米国を排除することは中国の利益にならない」と、米国の共同体参加を歓迎する意見を発表した。
数年前からの中国のこうした微妙な変化を知ってか知らずにか、鳩山首相は北京で10月10日に行われた日中韓3カ国首脳会談で、東アジア共同体構想の核となるのが日中韓の3カ国だと協力を求めた。これに対し、温家宝中国首相は「東アジアでは既存メカニズムの協力が進んでいる。積み重ねが大事だ」と指摘し、慎重な対応に終始した。
鳩山政権は、米国も参加するアジア太平洋経済協力会議(APEC)と別の地域限定的な多国間機構をつくる必要性について説明すべきだ。
このほか、鳩山政権は、東アジア共同体構想で台湾をどう位置づけるのかを明確にすべきだ。そもそも、域内では日本、中国、韓国、インドネシアに次ぐ経済力を持ち、民主主義体制の台湾を排除した共同体は考えにくい。台湾は、APECには加わっている。
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a 東アジア共同体評議会「東アジア共同体構想の現状、背景と日本の国家戦略」(2005年8月)17ページ
平成21年10月23日(金)研究所会議室にて、藤野彰 読売新聞東京本社編集委員と意見交換を行いました。

中央 藤野彰 読売新聞東京本社編集委員
平成21年10月20日(火)星稜会館にて開催した月例研究会
「CO2 25%削減は可能か
~民主党、財界、研究者の代表が徹底討論~」について、
産経新聞(10月21日付11面)に記事が掲載されました。

平成21年10月20日(火)星稜会館にて月例研究会「CO2 25%削減は可能か~民主党、財界、研究者の代表が徹底討論~」を開催しました。詳報は後日掲載いたします。

会場風景
平成21年10月14日
[提言]
1、市場経済に対する確固たる信頼の上に立つ将来ビジョンを示せ
2、受益者負担の原則を貫き、中・長期的な成長戦略を策定せよ
3、恒久的政策の確かな財源を示せ
4、財政再建目標の設定と再建計画を策定せよ
5、規制緩和・構造改革の意義を再認識し、大胆に実行せよ
1、市場経済に対する確固たる信頼の上に立つ将来ビジョンを示せ
21世紀の日本では、人口の減少、少子高齢化の進展、巨額の財政赤字に伴
う経済的負担の増大は不可避であり、同時に、今後一層拡大すると予想されるグローバリズムに対峙しなくてはならない。この状況に対応するには、国際競争力を向上させ、持続的な経済成長による再分配のパイの拡大が不可欠である。
しかしながら、新政権の経済政策は、一言でいえば、「成長なき再分配政策」であり、それ故に行き詰まった社会民主主義的な旧福祉国家の政策を思い起こさせる。歴史的に見て、市場経済はより多くの富を創造してきた。少なくとも、市場経済を凌駕する別のシステムはこれまでのところ見当たらない。現時点で、考えられる制度のうちでは市場システムが最も効率的である。
確かに、市場競争は、近年、社会的・経済的格差を拡大させたが、より効率的な生産方法を創造し、それ以上に多くの果実をもたらしたことは明らかである。a
持続的な安定成長への移行と少子高齢化に対応する社会保障を両立させる新たな制度設計、それを実現するための構造改革(高生産性部門への資源の移動)という二つの根本的な課題の解決には市場経済を深化させることが重要である。したがって、21世紀の日本経済のビジョンは、 市場経済に対する確固たる信頼の上に構築されるべきであり、その上で適正なセフティー・ネットを組み込む工夫が必要である。
2、受益者負担の原則を貫き、中・長期的な成長戦略を策定せよ
| ① | 「脱官僚依存」だけでは、経済の再生への道筋は見えてこない。無駄をなくすことは重要であるが、それが再分配的な政策に支出されるだけでは、経済の回復も成長も困難である。供給面の強力な政策により潜在成長率を引き上げることが必要である。 |
|---|---|
| ② | 「子育て支援」「高校の実質無償化」「高速道路の原則無料化」などの特定の個人もしくは団体へのバラマキ政策は、大きな経済拡大効果を期待できない。 これらの問題は、「社会全体で負担すべきもの」と「個人で負担すべきもの」との価値の再構築を伴う根本的な問題であり、当然、将来ビションに関わる問題である。一時的な社会・経済環境の変動を理由に、安易で、なし崩し的な再分配政策は許されない。 |
| ③ | マクロ経済政策(短期の景気対策、長期の成長政策)が欠落している。 「子育て支援」などは「再分配」であり、新規の民間需要の拡大がない限り、景気回復どころか経済成長も不可能である。新規の需要創出には、大幅な規制緩和・構造改革による供給側の改革が必要であり、とくに農業や医療・介護分野などの構造改革が必要である。b 今年度後半に向けて、経済状況の一層の悪化が懸念されている。現在、議論されているのは、ほとんどが新年度予算の問題であり、目の前の景気対策がほとんど示されていない。 |
| ④ | 金融モラトリアム(貸し渋り・貸しはがし対策法案(仮称))は、市場経済を否定しかねない。貸付資金の原資の多くは預金であり、金融機関の業績悪化や破綻を引き起こした場合に公的資金の注入ともなれば預金者だけでなく、一般国民への負担の転嫁となる。 また、日銀が、金融危機に対処するためにとっている各種の金融支援措置の終了時期や手順を探り始めたときに、この種の対策が実施されれば、自己資本比率規制強化と相まって信用収縮を引き起こすリスクは大きい。この問題は、政府系金融機関の貸し出しの増加や保証制度の改善で対処すべき問題である。 |
3、恒久的政策の確かな財源を示せ
一時的財源と恒久的財源の区別が明確でない。一時的財源は、早晩尽きることは明らかであり、そのとき増税以外の財源があるのか。マニフェストに掲げた5兆円の埋蔵金は、消費税に換算すれば約2%に相当する。現在のところ、財源確保の目途が立ったものの多くは、前政権の大規模な補正予算の中止・中断から捻出したもので、本予算の組み替えによる大規模な財源確保はいまだ不透明である。「予算の組み替えによる無駄遣いをなくす」だけでは成長はできない。成長戦略を提示せず、中・長期的な財源確保の方策も明示しないのは無責任である。
4、財政再建目標の設定と再建計画を策定せよ
財政再建なしでは、持続的成長への道筋は困難である。「無駄の削減」と「埋蔵金」は、新規施策の財源に充てるとしている以上、財政再建の財源は増税以外にない。四年間は消費税を上げないと明言しているので、最短でも、財政再建のスタートは2014年頃である。総合的な税制改革なしに、財政再建の実現は困難である。
持続的成長への道筋を付けるためには、まず、基礎的財政収支の回復の目途を立て、早急に財政再建の目標とその実現計画を策定せよ。
5、規制緩和・構造改革の意義を再認識し、大胆に実行せよ
民主党のマニフェストは、規制緩和・構造改革にはほとんど触れていない。グローバリズムの下での成長戦略の基本は、技術革新による新規需要開発、規制緩和、構造改革による競争力の向上にある。大きな需要の見込まれる農業や医療・介護分野の発展には規制の緩和に加え、補助金改革が不可欠である。
本来必要な構造改革を矮小化すべきではない。効率と公平は決して背反しない。グローバルリズムの下で成長を持続するには効率を追求するのは必然であり、それによって得られた成果を再分配する公平基準についての社会的合意を形成することが重要である。
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a 戦後の日本の名目国内総生産(GDP)および輸出と輸入は、ともに70年代までの30年間年平均+15%以上の成長を遂げており,この間の世界貿易額の伸び率も+12%以上であった。つまり世界貿易の拡大と軌を一にして日本は経済成長を達成してきた。そして,この自由貿易を背景に高度成長を実現し,日本を世界の経済一流国に押し上げた。経済復興を成し遂げ、経済活動が戦前の水準をほぼ回復したと言われる1955年当時、日本の一人当たり名目GDPは米国の1割程度に過ぎなかった。それから30年あまりを経て87年に米国を追い越した。日本の所得水準は、96年には米国を2割強上回り世界最高水準の所得を獲得するまでに至った。世界経済は、21世紀に入って年平均成長率7.9%と、1990年代の年平均成長率3.4%を大幅に上回る成長を示している。この高成長の大きな原動力となったのは、市場経済の拡大の下での貿易・投資の増加を通じた世界経済の一体化である。(通商白書1998年版、2008年版、 世界経済統計2009年版)
b 財政支援を通じた負担軽減により、家計の可処分所得を増やすという成長戦略の論理には限界がある。可処分所得を持続的に増やすには、企業の収益拡大により、個人所得全体が増大することが基本的要件である。家計に対する負担軽減が消費を刺激し、企業の売り上げ増に繋がる可能性はきわめて小さい。ましてや年間約40兆円に及ぶ「経済全体の供給力」と「総需要」の乖離(GDPギャップ)(4~6月期水準)を埋めるには程遠い。