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2010.12.22 (水) 印刷する

【詳報】 第3回 会員の集い シンポジウム「民主党政権と日本の展望」

国家基本問題研究所は平成22年10月26日に東京・紀尾井町のホテルニューオータニで第3回の「会員の集い」を開きました。第一部のシンポジウム「民主党政権と日本の展望―菅内閣でこの歴史的危機を乗り越えられるか」には833人(会員484人、一般325人ほか)、懇親会には465人(会員324人、一般111人ほか)がそれぞれ参加し、例年通り盛大な集まりとなりました。シンポジウムでは櫻井よしこ理事長のほか、国基研の中国研究(『中国はなぜ「軍拡」「膨張」「恫喝」をやめないのか』の書名で10月に文藝春秋社から研究成果を刊行)で主査を務めた田久保忠衛副理事長と北村稔立命館大学教授、そして長島昭久民主党衆院議員がパネリストとして登壇しました。シンポジウムの詳報は以下の通りです。

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パネリスト 左から櫻井理事長・田久保副理事長・北村稔客員研究員・長島昭久衆議員議員

櫻井 国基研の設立から3年たち、私たちは着実に力をつけてきています。きょうは、民主党政権でこの国は持つのかということをテーマにシンポジウムを開きます。私は日本が国際情勢の中で危ないところに立っているという危機感を抱いています。戦後65年間、日本は国家の基盤を揺るがせにしてきたツケが噴き出そうとしているのではないかと感じます。

田久保 日中関係は混乱していますが、これを鳥の目で見る必要があります。今から46年前、後に米国大統領となるニクソンが来日し、大磯で吉田茂元首相と会いました。立会人となった朝海浩一郎元駐米大使によると、吉田さんがニクソンに「米国はまさか中国と仲良くならないでしょうね」と尋ねたところ、ニクソンは言葉を濁した。朝海さんはこれにびっくりした。朝海さんは日中関係や日ソ関係を二国間のものとして見ず、鳥のように上から見ていた人でした。米中が手を握ることは彼の悪夢となりました。ニクソンは大統領になると、中国との関係正常化に道をつけました。ニクソンの訪中発表で日本がどれだけ驚き、慌てふためいたことか。以来、私は大局的にものを見る必要があると考えるようになりました。

それでは今、米中関係はどうなっているでしょうか。オバマ大統領を含め、米国は一貫して中国に「握手とパンチ」の二路線で来ています。経済、政治、文化の分野では仲良くするが、軍事分野は別というものです。この二つの路線を、時に応じて案配しています。握手だけ見ていると米中は仲良くなったように感ずるし、パンチだけ見ていると米中は戦争になるかもしれないという感じがありますが、米国はもうアジアで戦争をするつもりはないと思います。ただ、過去1年間で、パンチの方が少し強くなってきました。

中国は13億人の国民の生活水準を上げないと大変なことになる。そのためには資源が必要で、北はエネルギー資源や木材を求めてロシア極東部に進出しています。西はカスピ海からエネルギー資源をパイプラインで送ろうとしている。南はインド洋のシーレーンを確保するため、インドの周辺に港湾施設の建設を名目に事実上の基地を造り、これが「真珠の首飾り」と呼ばれています。

南シナ海ではベトナムやフィリピンなどと喧嘩を始めた。中国からはまず漁船が出てきて、トラブルが起きると監視船が、さらにトラブルが起きると海軍が出てきて、結局は(その海域を)実効支配してしまう。ベトナムは7月にハノイで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フィーラムの会合で、クリントン米国務長官を引き込みました。クリントン長官はASEAN側の立場に立ち、「南シナ海の航行の自由は米国の国益」と述べたのです。これに対して中国の楊潔外相は「南シナ海の問題は中国と関係国の二国間で交渉する」と盾付きました。

同じことは東シナ海でも起きつつあります。日本とASEANは共通の領海問題を抱えているのです。これは菅政権には神風のようなものです。菅直人首相や仙石由人官房長官は、国際関係のX軸、Y軸の中で日本がどこに位置するのか分からないと思いますが、米国は各国と喧嘩をするわけにいかないから、日本と仲良く、ASEANとも仲良く、インドとも仲良く、ロシアとも対立ばかりせず、全体として中国を包み込むように、しかも、「封じ込め政策ではない」と言いながら二路線方式を続けている、というのが今の状況です。

それでは日本はどうするか。日本は戦後、普通の国家ではありませんでした。憲法前文に書いてあるように「平和を愛する諸国民の公正と信義」を信頼して国家の安全を保つことにし、カネだけ稼いで軽武装でいこうとしたのです。自衛隊は本当の軍隊になっていません。要するに、武装以外のことで何とかやっていけると思ったのです。ところがこの虚構は、われわれの眼前でつぶれました。尖閣問題で、ソフトパワーは関係がないことが分かったのです。

では、日本は何をしなければいけないか。私は、本当の軍隊をつくり、日本にちょっかいを出したらやけどをするという「拒否力」をつけるのが第一歩だと考えています。

櫻井 中国は尖閣も南シナ海も全部、中国のものだと言います。9月の領海侵犯事件でも、中国の領海に中国の漁船が行ったところ、日本の海上保安庁の船が取り囲んでぶつけてきたという事実と正反対のことを新華社が報道し、中国国民はそれを信じている。中国はどうしてこういううその情報を流すのか、理解を超えています。中国と中国人をどのように理解したらよいのでしょうか。

北村 今回の尖閣での事件は、幕末の黒船のように、日本国民を覚醒させる効果があったと思います。

以前は、日本と中国は同じ漢字を使っているので「同文同種」といわれました。しかし、実は日本人は中国人のことをそれほどよく知りません。日本の中国研究者も多くの人が社会主義の中国が好きで、中国共産党の社会主義は人類史の先端を走っているかのような思い入れがあったために、中国を批判的に見ることができませんでした。

尖閣の問題でもそうですが、中国が事実に反することを平気で言うのは、どこに来源があるのでしょうか。それは中国古代の兵法書である『孫子』です。『孫子』と言えば、日本では「敵を知り己を知れば百戦危うからず」だけが知られていますが、実は、孫子は一番大事なのは謀略(諜報戦)であり、戦争でなく謀略で相手を破るのが一番いいと言っているのです。日本の縄文時代に中国ではこんなことが唱えられていたのです。

1964年の日中記者交換協定で、日本の特派員は報道にタガをはめられ、中国に批判的な記事を書けない体質がマスコミに生まれたのではないかと思います。一方的な情報が中国から入ってくるだけで、真の情報は伝えられなくなっているのではないでしょうか。これに対して、中国側は「相手を徹底的に調べろ」という『孫子』の教えを実践しています。日本としても、相手を知ろうというスタンスを持つことが大切です。

『中国はなぜ「軍拡」「膨張」「恫喝」をやめないのか』の中で、金谷譲氏はなぜ中国は民主化できないのかを論じていますが、この論文を読むと、中国人がいかに身勝手で、自分たちと別の価値観があることを考慮しないかが分かります。坂本龍馬で有名になった国際法解説書の『万国公法』にしても、当時の中国(清朝)は相手の国が強い時には活用するが、相手が弱いとなると使わないというご都合主義です。共産党が政権を握る前から、中国はそういうことをしてきています。

最近の民主活動家・劉暁波氏へのノーベル平和賞授賞で、中国はテレビの場面を真っ黒にして通信妨害をしましたが、似たようなことを国民党時代からやっています。東洋一の電波塔(ドイツ製)を南京に作って外信をチェックしていたのです。これらのすべては、情報をコントロールし都合のいい情報だけを流すという発想に基づいています。

日本はそういう謀略に無防備です。日本政府は中国に関する情報を蓄積し、弱みをつかんだ上で外交を展開するように持って行かないといけないのに、国全体としてそういう体制ができていません。

櫻井 日本は中国との関係で苦境に立っています。1週間ほど前の首相動静を新聞で見ると、菅直人首相は姜尚中東大教授、辻元清美衆院議員、福田康夫元首相と同じ日に会っています。このような相手と話していたのでは、日本の立場を守るというより、日本が譲って仲良くするという世界に傾いてしまうのではないかと心配です。日本はどのような外交・安保政策で難局を切り抜けることができるのでしょうか。菅政権は何をしようとしているのでしょうか。

長島 今回の尖閣問題で、中国人船長の処分保留・釈放という一報を聞いて、本当にショックを受け、悔しく思いました。そこで、同僚の与党議員に呼び掛け、建白書を仙谷由人官房長官に手渡しました。建白書は、菅政権の対応を批判するばかりではなく、これからわが国はこの困った隣人(中国)にどういう構えで臨むべきか、そして、今までやらなければならなかったことをやりきれなかったがゆえに今回の事態を招いたことから、今後、国家としてどういう努力をすべきなのか、を8項目の提言にまとめました。

今回のような事例を検察に丸投げするやり方は、国民の納得を得られないと思います。船長を逮捕した瞬間から外交案件であることは紛れもない事実で、こんなことを全部背負わされたら検察もたまりません。船長を釈放する必要があるなら、政府が堂々と説明すべきだったと思います。

(中国に供給を一時止められた)レアアース(希土類)の問題にしても、私たちはこうした戦略資源についてリスクを分散する努力をこれまで怠ってきました。中国との「戦略的互恵関係」についても、どこが戦略的で、どこが互恵なのかを厳しく問わなければならない時代を迎えたと思っています。というのは、戦略的互恵関係と言いながら、実は「日中友好」が目的になっており、中国のような自己主張の強い国と友好を維持するとなると、相手の嫌がることは言えないので、とにかく譲るということになりかねないからです。

今回も民主党政権の対応は基本的には友好第一で、中国に正式な抗議を一つもしていません。だから、野党も国民も、民主党のやり方に納得できないのです。

今の時期、最も大事なのは「国家の意志」をはっきりさせることです。冷戦終了から20年たち、新しい国際秩序をつくる時期にきています。新しい国際秩序の形成に必要なのは国家の意志です。これからつくられる秩序の中で、わが国の主権はここまで、領土はここまで、国民としての意志はこういうものだ、ということをはっきりさせることが求められています。中国はむき出しの意志を示してきた。韓国も台湾も東南アジア諸国連合(ASEAN)も皆やっています。やっていないのは日本だけです。

中国が力を付けると同時に、米国はアジア・太平洋地域でのプレゼンスを減らしています。2000年にこの地域に10万人いた米軍は、いま7万人です。米国が引く一方で、中国がのしてきている。その中で日本は厳しい立場に置かれているという時代認識に立って、年末にかけて「防衛計画の大綱」の見直しに臨みたい。

(大綱見直しでは)南西方面の、尖閣を含め2600もある島々を日本の力でどう守るかが課題です。米国に頼むような話ではなく、日本の守りは日本人が責任を持つという国防の原点に立ち返る時がきました。150年前、日本人は4隻の蒸気船にびっくりしたが、今回はわずか1隻の漁船に右往左往させられています。日本がやるべきことははっきりしています。

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会場風景

櫻井 戦後、自分の国を自分で守るまともな国家でなかった日本は、まさに崖っ縁に立っているわけです。長期的には憲法を改正しないといけないし、中国や米国の風下に日本は立たないという精神的な自立もしなければならないのですが、取りあえず眼前の危機(尖閣・中国問題)にどう対処すべきでしょうか。

田久保 長島さんが言った通りのことをやればいいと思いますが、もっと大きなところを言えば、日本の国の体質がおかしいのです。菅首相は6月の所信表明演説で、自分の師の1人として、故永井陽之助青山学院大学名誉教授の名前を挙げました。永井さんは「吉田ドクトリン」という言葉を発明し、日本は軽武装で経済大国を求めればよいと言った人です。その永井さんを菅首相は信奉している。それだけで、日本の今の体質が分かると思います。

永井さんと同じような考え方の持ち主が、元外務事務次官の小和田恒さんです。小和田さんは日本を「ハンディキャップ国家」と呼び、日本は軍事貢献ができないので、他国の2倍、3倍のカネを出して勘弁してもらう、と言った。こういう考え方が政府部内とくに外務省に多いと思います。こういう方がいると、激変する国際情勢、とりわけ台頭してきた中国に対抗できません。

日本は早く「戦後」から脱却しないといけない。自民党でそれを言ったのは安倍晋三元首相だけです。日本は大きく転換すべきです。国の体質を変えることを真剣に考えないといけない。憲法9条への賛否を政治家のリトマス試験紙にして一点突破しないと、日本は生き残れません。だた、9条改正には時間がかかるので、自衛隊を軍隊に近づける工夫をいろいろしなければいけません。

櫻井 中国のこれまでの振る舞いを見ると、東シナ海でも必ず尖閣諸島と天然ガス田を取りに来ると思います。(中国が一方的に開始したガス田「白樺」の掘削を)今のまま続けると、間もなくガス田そのものに到達し、実際にガスを取り始めるかもしれない。しかし、民主党政権はいまだに掘削の事実を確認しません。日本政府は中国がガス田を掘り始めたらしかるべき措置を取ると言ってきたのに、しかるべき措置を取って中国が強硬な行動に出た場合にどう対処したらよいか分からないために黙っているのではないかと推測してしまいます。東シナ海で大量のレアメタル(希少金属)が発見されたというニュースもあり、この海域の重要性は増すばかりです。日本はどうやって東シナ海を守ることができるのでしょうか。

長島 あの海域に限らず日本周辺の「海底熱水鉱床」にレアメタルがたくさん眠っていることは、だいぶ分かってきました。中国が尖閣を1971年に領有宣言したのは、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)が石油・ガスが尖閣近海に埋蔵されていると発表した直後で、その瞬間から資源をめぐるせめぎ合いがこの海域で始まったのです。75年に米国がベトナムから撤退すると、南シナ海では中国とベトナム、フィリピンとの間で小競り合いが起き、今や中国は数千ある島々の実効支配をほぼ完了している状況です。南シナ海の航行の安全は日本にとっても死活的利益ですから、米国と一緒になって、この海域を国際法の下に置くという原則に立ち返る努力をしないといけません。口で言っても通用しないので、台頭する中国を押し返す力を私たちは養わないといけません。

米軍が過去10年間に3割もプレゼンスを減らす中で、今や中国は最新鋭の潜水艦と駆逐艦をそれぞれ30隻以上持ち、第4世代の戦闘機を480機保有しており、米国が空母を派遣しようと思っても、どこに潜水艦が潜んでいて、いつミサイル攻撃を受けるか分からない状況ですから、この海域になかなか接近できない。中国はこの「接近拒否」能力を着々と整備しているのです。いわゆる「第一列島線」(琉球諸島―台湾―フィリピン―ボルネオ)から「第二列島線」(小笠原諸島―グアム―サイパン―テニアン―パプアニューギニア)へと中国が張り出してきて、第二列島線に接近拒否のラインを引かれたら、日本も韓国も台湾もフィリピンもすっぽりとその拒否エリアに入ってしまう。

今ならまだ間に合う。だからこそ米国は今年2月に「4年に一度の国防計画の見直し」(QDR)を発表し、この海域で米国の「空と海の力」を回復しないといけないと言っているのです。

一方、沖縄本島や尖閣諸島を含む南西諸島に対する日本の守りは極めて手薄です。陸上自衛隊は沖縄本島に2100人いるだけで、それより西にはいません。警戒監視レーダーは宮古島より西にはありません。「防衛計画の大綱」見直しの中で、こういう点を補強していきます。自分のことは自分でやるということを前提として、米国とこの海域での協力関係を深めていく、そういうことがあって初めて中国への最大の抑止力になると考えています。

櫻井 菅政権が予算の各省庁一律10%カット方針を打ち出す中で、防衛省予算は逆に増やさないといけないと思うのですが。

長島 年末に向けて予算編成をする前に、防衛大綱の見直しでいま言ったロジックをはっきり打ち出し、その上で財務省と勝負するつもりです。防衛省予算が1割カットされれば、中国にも米国にも誤ったメッセージを与えます。

櫻井 日本が東シナ海を守ろうとした時に、中国は軍事力を使うのか謀略を使うのか、どんなことが考えられますか。そして、日本は何をすべきでしょうか。

北村 問題の半分以上は日本側にあります。「譲歩すればいい」という考え方を変えないと、どうしようもありません。謀略や情報戦の観点から見ると、日本国民の意識を高めるには報道の役割が大きいのに、マスコミには「中国の嫌がることは言わない」という暗示がかかっています。一方で、中国は日本の贖罪意識に訴えた上で友好を持ち出し、都合の悪いことを言わせないというやり方がうまいのです。また、歴史教育をきちんと行い、事実関係の誤りを正すことも大切です。若い人は真実を知りたがっています。マスコミや教育を正し、国民が対外的に自己主張できるようにならないと、中国にやられてしまいます。

櫻井 中国の脅威にきちんと対応し、日本国を守るには、最終的には憲法を改正し、自衛隊をまともな軍隊にして、日本が名実ともに独立国家にならなければなりません。しかし、菅政権に憲法改正へのイニシアチブを期待することは難しいし、中国との諸問題の解決を望むことも難しいと思っています。憲法改正や自衛隊のあり方について、長島さんの気持ちを聞きたいと思います。

長島 防衛大綱の見直しは、日本の安全保障戦略を考え直すいい機会となります。中国が台頭し、米国の力が低下する中で、日本が独立国家としてどうすべきかを示す、極めて重要な文書を年末までにまとめることになります。

それを支えてくれるのが主権者たる国民一人ひとりです。過去10年間に日本の海外留学生は半減し、それに対して韓国は2倍に、中国は3倍に増えています。海外における日本のプレゼンスは決定的に低くなり、将来を担う若い人が外へ出ようとしない国家になってしまいました。日本経済停滞の根本的原因は、国民特に若い人が内向きになっているところにあります。教育面でここにメスを入れることに取り組まなければいけないと思っています。日本の国力を挽回して中国と競争できる態勢をつくっていきたい。

田久保 中国(の行動)に奇妙な点が三つあります。中国と米国が今月、軍事交流を再開しました。中国は困っているのです。中国は米国に交流再開をずっと頼んできました。驚くべきことです。何かおかしいのだと思います。これが第一点です。

二点目はレアアースの問題です。中国が世界の供給の9割以上を占めるレアアースは、ハイブリッド車など民生用の需要のほか、米軍の戦車や戦闘機も依存しており、中国がレアアース(の輸出規制)を武器に使うと、日米欧など先進国を団結させてしまいます。中国は馬鹿なことをやったと思います。

三点目は、中国の民主活動家・劉暁波さんへのノーベル平和賞授賞で、中国はノルウェー政府に抗議したり、劉さんの夫人を自宅軟禁にしたりして、人権弾圧で全世界を敵に回しました。

米中軍事交流から見えるのは、中国は米国を敵にするのを非常に恐れているのではないかということです。レアアースの輸出規制は暴走です。世界中から袋叩きに遭うのを分からないでやっている。ノーベル賞問題では、世界の普遍的真理や道徳に反対したツケは大きいと思います。

これを、声を大にして言いたいのですが、これを言うと今の民主党政権は中国に強く出ないのではないか。自民党も同じです。自民党の宏池会的な考えをする人と、社会党的な考え方をする人が日本を過ってきたのではないかと思います。日本は今、第二の維新が迫っています。与野党を問わず、憲法9条改正に賛成する人で一点突破しないと、日本は生き残れないことを改めて強調したいと思います。

北村 中国には弱みがいっぱいあります。環境問題などで日本の技術が喉から手が出るほど欲しいはずです。中国の弱みをつかみながら、スタンスを変えて交渉していけば、いくらでも道はあると思っています。

櫻井 きょうのシンポジウムは「菅内閣でこの歴史的危機を乗り越えられるか」というサブタイトルを付けましたが、結論を言えば、菅内閣ではこの危機を乗り越えられません。日本の未来を確かなものにするために、菅内閣とは正反対の方向で日本の主張を内外に知らせ、その主張を通すための力を私たちはつけていかなければならない。そのための具体的な提言を国基研は続けていきたいと思います。(了)

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