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2009.01.30 (金) 印刷する

【詳報】 月例研究会 「オバマ新政権と日米関係」(田久保副理事長)

国基研は平成21年1月23日、東京・永田町の衆議院第一議員会館で月例研究会を開き、田久保忠衛副理事長が「オバマ新政権と日米関係」と題して講演しました。研究会には、平沼赳夫元経産相はじめ国会議員32名、議員秘書20名のほか、仙台など地方からも熱心な賛助会員や法人会員ら約30名が参加しました。講演の詳報は以下の通りです。


講演に耳を傾ける参加者


左より櫻井理事長、田久保副理事長、高池事務局長

田久保副理事長講演の詳報

 オバマ大統領の就任演説のキーワードは「再建」と「責任の時代に入った」だった。リンカーン、フランクリン・ルーズベルト、ケネディ、レーガンなど歴代大統領の名スピーチのような、胸を揺さぶる演説になると事前には期待されていたが、実際にはトーンダウンされていた。「責任」など当たり前のことで、内容のない空虚な演説でがっかりした。
 政治家の人気にもバブルがあり、オバマはバブルに恐れおののいていたのではないか。就任式典に200万人も集まったのは異常なことで、報道によると、その半分以上は黒人だった。オバマの実態を冷静に分析する必要がある。
 オバマ・バブル(=期待感の異常な高まり)の原因は、イラクとアフガニスタンの二つの戦争と金融危機で「ブッシュ疲れ」が起きたことと、アメリカ一極時代が終焉する可能性への不安が広がったことにあると思う。

 オバマ政権では「スマートパワー」という言葉が浮上してきた。駐日大使になると報じられたナイが最初、ブッシュ政権の軍事力優先路線を批判してソフトパワー(文化力、外交力など)重視を提唱したが、ソフトパワーとハードパワー(軍事力など)をブレンドしたものがスマートパワーだ。オバマやゲーツ(国防長官)がこれを口にしているし、ヒラリー・クリントン(国務長官)の上院公聴会証言で何度も出てくる。スマートパワーはオバマ政権のキーワードになるのではないか。いつかハードパワーを使わなければいけないのに、スマートパワーというブレンド物を使うのでは、いずれ化けの皮がはがれる。
 アメリカ一極時代は崩れる瀬戸際か、と言えば、そうではないと思う。新興国や非国家主体の台頭でアメリカの地位が相対的に下がるのはやむを得ないが、アメリカには底力があり、一極時代は崩れないのではないか。

 オバマは日米同盟に無関心ではないだろう。オバマ自身、安倍晋三首相(当時)訪米時に、上院でステートメントを読んでいる。ヒラリーも上院証言で「日米同盟はアメリカのアジア政策の礎石」と言っている。オバマ政権のアジア担当者に、知日派が並べば好ましい。
 ヒラリーは証言で中国について、国際情勢を一変させ得るアクターとして極めて重要だと述べ、新政権は中国と前向きな関係を結ぶつもりはあるが、これからは中国の将来の選択次第だと言っている。
 アメリカでは今や、中国は敵でも味方でもない関係が出来上がっている。同盟関係では、共通の敵がいること、価値観を共にすること、経済摩擦の少ないことが大切だ。日英同盟は20年で切れてしまった。日米同盟もオーバーホールをしないといけない。日米に共通の敵がいなくなり、(中国が)敵でも味方でもなくなると、自然に日米同盟は薄まっていくのではないか。
 ソマリア沖の海賊対策で、中国は軍艦を出し、台湾のタンカーを護衛する用意があると言っている。これでは事実上の中台統一になってしまう。韓国も軍艦を出す。危なくなったらシーレーンを中韓に守ってもらうのは、日本のプライドが許さない。日本国内にも、変化が出てくるのではないか。日本もやればできる。国基研は知的トレーニングを重ねていく。(了)