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2011.07.07 (木)

辺野古地区の『本当の地元』は米軍の飛行場移設に賛成している 櫻井よしこ

辺野古地区の『本当の地元』は米軍の飛行場移設に賛成している

櫻井よしこ

 

日米両政府が4年ぶりに「日米安全保障協議委員会」(2プラス2)を開いた。双方から外務、防衛両大臣が出席して行う2プラス2の開催は2009年に民主党政権が成立して以来、初めてである。

今回の2プラス2は、東日本大震災で迅速かつ最大級の支援を実施した米国に日本が感謝し、日米関係が急速に改善され、安保条約の重要性も再確認されたなかで行われた。日米関係強化の主軸が中国の脅威に備えることに置かれ、以下の点についての合意を見た。

(1)中国に責任ある建設的役割と国際的な行動規範の遵守を促す、(2)航行の自由と安全なシーレーンの確保、(3)普天間飛行場の代替施設は2本の滑走路をV字形に配置する。

日本は本来なら、大国として米国とともにアジアの平和と安定に寄与しなければならない立場だ。中国に対しても、アジア全体のために抑止力を発揮するべき国だ。それが同盟国の米国のみならず、アジア諸国の願いである。だからこそ、日本の安全のためにも、アジアのためにも、民主党政権には右の合意事項を遂行する責任がある。

(1)と(2)の達成には、(3)を実行し、緊密な日米同盟を維持することが欠かせない。はたして民主党に出来るのか。

もともと、普天間飛行場の移設期限は14年だった。それを今回初めて正式に諦めた。だからといって、引き延ばし続ければ同盟に亀裂が走る。民主党は自らご破算にした辺野古への移転というもともとの合意を、政権政党の責任において実現しなければならない。どうすれば可能なのか。

まず、北澤俊美、松本剛明両大臣以下、担当者らが現地に足を運ぶことだ。現地とは仲井眞弘多知事のいる沖縄県庁でもなく、稲嶺進市長のいる名護市役所でもない。実際の受け入れ先、名護市辺野古地区である。

10年1月24日の名護市長選挙は辺野古への移転を受け入れるか否かが争点となり、受け入れ反対派の稲嶺氏が、容認派の島袋吉和氏に1,600票の差をつけて1万7,950票で当選した。だが、報道機関の出口調査では、辺野古地区有権者の70~80%が受け入れ容認派の島袋氏に投票していたことも判明した。

注意深く名護市を見てみよう。同市は低い山々を境にして東部と西部に二分される。辺野古は東部に、名護市役所や主な企業は西部に位置し、人口の大部分も西部に住む。代替飛行場の辺野古移転に反対したのはこの西部の有権者だった。「本当の地元」、つまり東部の辺野古の人びとは基本的に受け入れに賛成していながら、より大きな人口を擁する西部の反対に圧倒されて、反対派が市長選に勝ったのだ。

昨年春、辺野古区長の大城康昌氏らを取材したとき、彼らはこう語った。「西部の人は山の反対側にいるために、辺野古に飛行場が来ても騒音などとは無縁です。負担は我々が担うのです。『地元の中の地元』のわれわれの大半は条件付きで受け入れを了承してきたし、今回も同様です。それなのになぜ、久辺(くべ)地区に民主党は来ないのか」

移転先は正式には久辺地区と呼ばれ、辺野古、久志(くし)、豊原の三区で構成される。人口はそれぞれ約2,000、600、400で、計3,000人である。中国の潜水艦が先島諸島の日本の領海を侵犯したとき、中国の脅威を現実の脅威として自分の目で見、感じてきた人びとだ。

自分たちを守ってくれるのは、日米同盟に支えられた国防の力だと知っているのである。だから条件付きながら受け入れ派が多数を占める。この状況は今も同じだ。その声を、民主党は少なくとも聞くべきだ。しかし、民主党は、那覇詣でより先には進まない。これでは事態は動くべくもない。

普天間飛行場の固定化は、あらゆる意味で負の効果しか生まない。まず辺野古の意見をじっくりと聞くことだ。

『週刊ダイヤモンド』   2011年7月2日号
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