公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研 講演会

2010.03.08 (月) 印刷する

【詳報】 月例研究会 「民主党の経済政策で生き残れるか」

国家基本問題研究所は平成22年2月12日、東京・星陵会館で、月例研究会「民主党の経済政策で日本は生き残れるか」をシンポジウム形式により開催しました。パネリストとして大塚耕平内閣府副大臣と竹中平蔵慶応大学教授を招き、国基研の櫻井よしこ理事長と大岩雄次郎企画委員が討論者を務めました。参加者は344人(会員285人、一般59人)の大盛況となりました。研究会の模様は時事通信が記事にして配信しました。詳報は次の通りです。

櫻井 この20年間、日本経済は成長していません。日本が停滞している間に、中国をはじめ世界は目覚ましく成長しました。日本経済はどうすれば活性化するのか。個々の企業や個人の努力が国家としてなぜ実を結ばないのか。どこに問題があり、何をしたらよいのかを、パネリストのお二人に語っていただきたい。

大塚 1990年を起点に「失われた20年」という言い方をするが、90年ごろ、日本を取り巻く環境は、経済、政治両面で大きく変わった。それまでの日本は、人口が増え、経済成長は続き、アジアにライバルはいなかった。しかし、人口は減り始め、経済は90年を境に低迷し、アジアには21世紀の超大国・中国が登場した。この三つの変化に対処しきれず、今日に至った。
 経済成長に関しては、日本は成熟国家であるがゆえの低成長のトレンド以上に低迷しているのではないかという点が問題だ。

 72年の経済協力開発機構(OECD)報告書によると、日本の高度成長期の「三種の神器」は、①終身雇用②年功序列賃金③企業内労働組合―だった。85年から90年にかけてのバブル経済の時期には、別の三種の神器があり、それは、①円安②金融機関と企業を守った「護送船団方式」③保有する株や土地の資産力を背景とする「含み経営」―だった。
 ソ連の弱体化に伴い、東西冷戦の終結が視野に入り始めると、もう日本を経済的に特別扱いしなくてよいという西側のコンセンサスの中で、二番目の三種の神器にくさびが打ち込まれた。円安は85年のプラザ合意で特別扱いが認められなくなった。護送船団方式と含み経営も、88年のバーゼル合意で自己資本比率規制が始まり、そのころ国際会計基準の本格的導入も始まった。これにより、日本を取り巻く経済環境が大きく変わったが、それをきちんと認識して対処することができなかった。(2001年に)小泉政権が誕生し、竹中大臣も頑張ったが、残念ながら大臣の思い通りには効果を発揮できずに、今また大きな節目を迎えている。

竹中 80年代に日本経済は4.5%ずつ成長した。90年代に成長率は1%になった。豊かになれば成長率は落ちるが、90年代には3%に達してもよかった。それができず、金融危機になって、どうなるんだという状況になって小泉政権が誕生した。その時、わたしが考えたことは二つだった。一つは、どういう社会をつくるのかということで、これは小泉さんがよく言ったことだが、明治維新の時にリーダーたちが読んだ1冊の本がある。スマイルズという人が書いた『セルフ・ヘルプ』(自助論)だ。どんな時代でも、自助自立という精神をなくしたら社会は成立し得ないというのは、全くその通りだと思う。「天は自ら助くる者を助く」で始まる自助論。私たちの社会は一人ひとりがしっかりしないと成り立たない。自ら立つ人が多いほど、自ら立てない貧しい人にちゃんとした手当てができる。だから小泉さんは痛みを伴っても、民間でできることは民間で、地方でできることは地方で、というやり方を取ろうと言った。
 それには理由があって、90年代の自民党はそうでなかったからだ。(大塚さんの)直接の上司だから名前を出すと申し訳ないが、亀井(静香)さんが「公共事業出してやれよ」と言って、どんどん赤字国債を発行して、その場しのぎで、目の前の景気を浮揚することだけをやった。小泉さんがいなくなった後、自民党はそれに戻った。麻生内閣は徹底的なポピュリズム内閣だった。100年に一度の不況で大変だからといって、生活給付金を出した。自助自立を忘れてポピュリズムに走ったという意味では鳩山内閣も同じだ。麻生内閣と鳩山内閣はマクロ経済政策では非常に似ている。政権交代してお金を出す先が、今までの業界団体から農家や家計に変わっただけだ。困ったことがあれば助ける結果、財政赤字がどんどん拡大し、将来どうなるか、わたしたちは不安になっている。

 「失われた20年」というが、実際は「失われた12年と、下げ止まった5年と、最も失われた3年」だ。90年代は公共事業を国内総生産(GDP)比26%も積み増して1%成長しかできなかったが、小泉内閣の5年半は公共事業を減らしながら2.2%も成長して、その7割は内需だった。その間に株価は80%上がって、失業者は100万人減った。一般に言われているのとは違って、格差は拡大しなかった。貧困の人が増えたとか、若い人でワーキングプアが生まれたという問題は解決しなければならないが、90年代を通してずっと下がってきたものが、あの5年間に間違いなく下げ止まった。
 民主党への政権交代にわたしは期待する。自民党の中で政策を担当した時、族議員と官僚と業界団体の癒着のため当たり前のことができなかった。民主党の大臣や副大臣がうらやましい。手あかのついている人が、まだいないからだ。前原国交相のオープンスカイ政策(羽田のハブ空港化)も「事業仕分け」も、政権交代があったからできた。しかし、できているのはこの二つだけだ。

 どこまで自助自立でやって、どこまで政府が助けるのかをちゃんと議論した方がいい。私は自助自立でないとだめだと思う。子供手当もいいが、金額が無茶苦茶に大きい。そういうことをしていると財政が成り立たなくなって、政策の大転換をせざるを得なくなる。大転換の前に市場は破裂して、(株、円、債券の)トリプル安のような大きな問題が起きる。市場が変化する前に、大転換を政治的に行ってほしい。
 それを行ったのはフランスのミッテラン政権だ。ミッテランは81年に大統領に就任して社会主義建設をやった。やったことは今の民主党と似ている。一部企業を国営化したのは、郵政の再国有化と似ている。家族税制を出したのは子供手当と似ている。そして、賃金を変えないで労働時間を短縮した。その結果、フランス経済はガタガタになった。そのためミッテランは82年に政策を大転換し、自由主義経済にシフトした。結果的にミッテランは14年の長期政権になった。民主党は参院選後、政策の大転換を余儀なくされる時に、ちゃんと大転換してほしい。鳩山さんには日本のミッテランになってほしい。

櫻井 民主党は財政経済政策として何をしようとしているのか、その時にどんな日本の姿を描いているのか、が見えてきません。

大塚 第1に「基本的には自助自立」「社会的弱者については政府がある程度サポートしなければならない」という考え方は、わたしどもも一緒だ。わたしは構造改革という言葉に引かれて2001年に政治の世界に入ったが、そもそも構造改革という言葉を先に使ったのは民主党だと思う。
 第2に、これからどうするかという点だが、例えば今、新しい需要が生まれる分野は医療なのに、供給サイドの関係企業や産業が育っていない。その理由を明らかにして解決することが政治の仕事だ。日本では新しい医療機器や新薬の治験期間が長すぎてコストもかかり、いつまでも認可が下りないのであきらめてしまい、その繰り返しで日本の医療産業が育たない。そうした障害を除去していくのが成長戦略のカギだと思う。
 第3に、郵政の再国有化は考えていない。しかし、民意は大切にしなければならない。今回の選挙で郵政民営化は行き過ぎの面があったという民意が出たので、修正すべき点は修正するという作業を今やっている。
 『坂の上の雲』の時代、日本人は「近代化」というキーワードを共有してわが国はああいうふうに(近代国家に)なっていった。今日、新たなキーワードを探すのが最大の課題だと思っている。竹中さんもわたしも「改革」という言葉を共有しているが、「近代化」と違って、何をもって改革と呼ぶか、価値観によって差が出てくる。そこが難しいところだ。

櫻井 選挙の結果を民意として受け止めるのは当然ですが、昨年の民主党の大勝は郵政など民主党の政策への支持というより、自民党への反発だったと思います。308議席を取ったからといって、いま民主党が行っている政策を国民が支持して大勝させたと考えると、これからの日本の導き方にひずみが出てくるのではないかと思います。そういう気持ちが国民の間にあることを心に刻んでおいてほしいと思います。

大塚 十分刻ませていただくし、そういう視点で政策を再点検する謙虚さは民主党にあると信じている。調整すべき点は調整する。

竹中 自助自立は賛成と言う大塚さんに聞いてみたい。どの程度自助自立をやるかというのは、どの程度「大きな政府」をつくるかということだ。これは将来の消費税率をどのくらいにするつもりか、ということにつながる。消費税をいま上げないのは当たり前だが、いずれ上げなければいけないのは分かりきっている。税率を十数%に抑えたいのか、25%、30%まで持って行くのか、どちらかだと思う。民主党が今のようなことをやっていたら、消費税率はすぐ30%になる。そこまでやるか、ということだ。
 内閣府の試算では2009年度の財政赤字は53兆円だが、これを消費税で埋めるとしたら税率は25%になる。今は消費税を5%しか払っていないが、本当は消費税率25%が日本の財政の実力だ。それなのに子供手当を支給すると言う。財政をもっと削らないと駄目なのに、あれもこれも増やせと言う。マクロ経済管理を民主党政権が行っていないところが一番気になる。大塚さんはよく分かっていて、苦しい立場だと思う。
 (自公政権は)2002年から毎年1月に中期経済財政展望を出し、国債発行見通しや財政赤字縮小の展望を示していた。ところが民主党政権は今年、44兆円の国債を発行するのに中期展望を出さなかった。これはすごいことだ。世界のマーケットはそんな国の国債を買わない。
 また、内閣府は基礎的財政収支(プライマリーバランス)つまり国債費を払う前の収支の赤字が40兆円になったと発表した。わたしが経済財政政策担当相になった2002~03年には28兆円だった。この赤字を10年間で解消しようと、どんどん減らして、2年前に赤字は6兆円にまで減った。これが麻生内閣と鳩山内閣の予算で、何と40兆円になった。これを大塚さん、何年で解消しますか。消費税の引き上げなしに解消しないと、今後高齢化の問題など出てくるので大変なことになる。
 大塚さんが規制緩和に言及したので、民主党は進歩したと思う。総選挙のマニフェストに規制緩和は一言も書いていなかった。でも、医療のことを言うなら、混合診療を解禁しよう。お金を払ってもいい診療を受けたいという人には、払ってもらえばいいではないか。ところが今の制度は社会主義のように、全部一律で保険の中でないといけないという。

大塚 自民党政権も改正できなかったのでは。

竹中 改正できなかったのは族議員と官僚と業界団体のせいだ。お金を払う用意のある人に払ってもらうことが本当にお金を必要とする人にお金を回す最大の要因であり、それが最大の規制緩和なので、これをぜひ大塚さんにやってもらいたい。

大岩 大塚さんには、民主党はどこまで自助自立(市場システム)に委ねようとしているのかと尋ねたい。政策によっては、市場に委ねればもっとうまくいくものがたくさんある。竹中さんへの質問は、小泉政権の構造改革はどこまで経済立て直しにつながったのかという点だ。デフレの下で構造改革を行ったタイミングは正しかったのか。構造改革の効果をどう評価するか。

竹中 大塚さんの答えに含めてほしいことが二つある。大岩さんの「政府はどこまでやるか」という質問は、「どのくらい大きな政府を許容するか」「どのくらいの消費税率を許容するか」ということだ。消費税率についてどのようなイメージを持っているのかを答えてほしい。「政府はどこまでやるか」の象徴的な事例、日本航空(JAL)に対する政策の考え方も答えに含めてもらえるとありがたい。

大塚 消費税の引き上げを次の総選挙で掲げない政党は信頼できないと国民は受け止め始めている。総選挙で(引き上げを)提示して国民の審判を受けることになると思う。
 自助と共助と公助の使い分け、境界線の線引きは難しい問題だ。個人的には、医療・介護分野については供給サイドの成長を阻害している要因を除去しつつ、国が面倒を見られるような国を構築したい。ただ、青天井ではない。混合診療の解禁には賛成だ。そうしたことを通じて、大き過ぎない政府をつくる。しかし、大き過ぎない政府の中でも、政府が担うべき役割は社会保障分野が中心であるべきだ。産業分野や経済分野では、天下り先や不合理な規制主体となるような余計な独立行政法人、公益法人が温存され、供給サイドの成長や新しい企業や産業を育てる障害になってはならない。その障害を除去するのが政府の仕事になる。どこまで政府が面倒を見ることを認めて、どこまでは認めないという線引きは、消費税率とともに、次の総選挙で二大政党が明示をする段階にきたと思う。

櫻井 基礎的財政赤字を何年でどうするのか、消費税率をどんな規模で考えているのかを示してほしい。

大塚 党として数字を言うのは難しい。国民の意思を忖度(そんたく)すれば、20%は上げ過ぎという感覚になるのでは。ただ、一ケタで回っていく状況でもない。二ケタの20に至らないどのへんで何をやるのか、というのが現実的な数字だと個人的には思う。
 経済規模に比較すると世界最大の借金を日本は抱えているが、借金を減らす方法は三つしかない。毎年少しずつ減らすという基礎的財政収支の黒字化、インフレ、踏み倒す、の三つだ。三番目はやっちゃいけない。インフレは制御が難しい。となると、一番目しかない。基礎的財政収支を黒字にするには、歳出見直しとともに、歳入に手をつけないといけないので、消費税は次の総選挙で課題になる。
 JALと全日空(ANA)は1社でよいのではないかと個人的には思っている。そうならなかったのは、JALとANAはメガキャリアだから、一緒になったら独占禁止法に違反するという発想が霞が関にあるからだ。しかし、JALが旅客数で世界一だったのは83~90年だ。今日の国際競争の実情を前提とすれば、そのころの基準で考えることは適切ではない。

大岩 基礎的財政収支の黒字化を目指すと言うが、今の経済をどうにかするには財政支出しかないのでは。(借金を減らすことと経済回復を)両立させるにはどうしたらよいか。

大塚 今後は財政規律が高まるという認識が広まるだけでもずいぶん違う。基礎的財政収支の赤字が減り始めるという方向感を市場と共有しながら、当面は景気対策として財政政策をやっていくしかない。

竹中 問題意識を市場と共有するためには、中期の経済財政展望を出さないといけない。民主党政権が出さなかったのは怠慢だ。
 基礎的財政収支を回復させるために消費税を上げることは厳しい。将来、社会保障で消費税を上げざるを得ないのだから、基礎的財政収支の回復のために上げてしまっては、消費税は将来とてつもなく高くなる。
 大き過ぎる政府の象徴は子供手当だ。金額が多過ぎる。子供が3人いると16年間で1600万円もらえ、わたしの田舎の和歌山では家が建つ。こういう政策をやっていては、消費税は無茶苦茶に高くなる。
 政府がやるべきでないことをやっている象徴はJAL(救済)だ。政府が個別企業の再生に介入することが許されるのは、一つはシステミックリスクが発生する場合で、典型的な例は銀行だ。銀行は一行に取り付け騒ぎが起きると他行にも連鎖して、システム全体が溶解する。JALはこのケースに当たらない。もう一つのパターンは、その企業があまりにも大きく社会的影響が大きい場合だ。JALはそれほど大きくない。JALは従業員と国際線を十数%減らして、ピカピカの企業として戻ってくる。これではモラルハザードが起きる。つまり、JALという企業を救済して、航空産業をつぶす政策だ。

大塚 ダイエー(を自公政権で救済したこと)はどうなのか。

竹中 ダイエーは救っていない。あの時、わたしたちがつくったのは産業再生機構であり、企業再生機構ではない。JAL救済も産業再生だと割り切って、国際線をあきらめさせて、メガキャリアを日本に1社だけつくれば、産業再生になる。これは内閣府の仕事なので、(副大臣の)大塚さんにお願いしたい。
 改革はなぜ定着しなかったのかという大岩さんの質問に答えるのは簡単だ。政治のモメンタムがなくなったからだ。改革に反対する人は常にいる。改革で既得権を失う人がいる。郵政が典型で、郵政公社には何と219社のファミリー企業があって、2000人が天下っていた。
 大岩さんはタイミングの話をしたが、タイミングなんて選べない。もっと早くやったらよかったが、時間は戻せない。これ以上遅らせた方がよかったという判断はないと思う。
デフレの問題は解消できなかった。原因は、大塚さんの出身母体の日銀がちゃんとやってくれなかったから。日銀の責任は大きい。マネーの量を出さないと物価は下がる。
最後に、政府は名目3%、実質2%という成長目標を掲げたが、2%は低すぎる。成長戦略を作り直す必要がある。

大塚 子供手当はフランスなどの例を参考に水準を決めた。子育ての終わった中高年と、(これから子育てをする)若者の感覚にはかなりギャップがある。また、20年近く前のフィンランドは今の日本と財政状況がよく似ていたが、教育予算を削らなかった結果、今日、子供の教育レベルは世界最高になった。そうした事例を参考にして考えた結果が子供手当だ。
 基礎的財政収支は、独立行政法人と特別会計の改革をやらないと黒字にならない。竹中大臣の時代に赤字が6兆円ぐらいまで減っても黒字にしきれなかったのは、小泉さんや竹中さんもメスを入れきれなかったものがあるためで、それを民主党政権はやらざるを得ない。独立行政法人とか公益法人とか特別会計の下で不要不急の政府の支出が行われ、知らず知らずのうちにその恩恵に浴している国民もたくさんいる。それをあきらめないと基礎的財政収支は黒字にならないという認識を共有してほしい。
 竹中さんはダイエー救済について産業再生だと言ったが、カネボウの救済もあった。それが悪かったとは言わない。救われた人がたくさんいるからだ。しかし、政策には百パーセント正しいものはなく、プラス、マイナスの両面がある。その両面に謙虚でなければならない。

櫻井 フランスの子供手当は充実しているが、税金がかなり高い。大塚さんは消費税の引き上げを前提に話していると思うが、政府は今、消費税引き上げを討議することなく分配政策に走っており、それを皆が心配している。
 民主党が前に進むのか後ろに進むのか分からない現象がたくさん起きている。医療分野では、地域医療を推進する新たな独法をつくるというとんでもない議論が民主党から出ている。民主党は、言っていることと、していることが違うのでは。どういう方向に進むのかを話してほしい。

大塚 見えにくい面はあるかもしれないが、企業や産業が成長するのを妨げる障害を除去することが政権の大きな仕事の一つだ。その一方で、政府の役割は困っている人に手を差し伸べること、ただし困っていない人に余計なおせっかいはしないことだと思っている。地域医療の拠点がなくなりそうな場合は、政府の役割として、やるべきことはやらなければならない。しかし、それがブラックボックスをつくるようなことであってはならない。

竹中 困っている人に手を差し伸べることが政府や政治(の役割)だと日本の政治家はよく言うが、わたしは違うと思う。JALの人は困っている。だが、放っておいたらいい。政策には、助けるための政策と解決するための政策がある。失業者など困っている人を政府がある程度助けるというのは分かる。特に弱い人は助けないといけない。しかし、解決するための政策は別のところにある。雇用問題を解決しようとするなら、成長するしかない。成長するためにしなければならないのは、規制緩和のほかに、企業に対する減税だ。税率が国際的にみて高すぎる。
 所得税をごまかしている人にまず払ってもらって、その財源で減税するというのが税の論理としても正しい。これは民主党だからできる。ぜひやってもらいたい。民主党の政策は支離滅裂というより「小さな前進、大きな後退」だと思っている。事業仕分けで1兆円を一生懸命削ったのは素晴らしい。そのお金で5兆円の子供手当をやろうとしている。
  「小さな前進、大きな後退」にならないためには、司令塔である国家戦略局を早く機能させないといけない。今年度の赤字が53兆円で、来年度予算の赤字が44兆円ということは、9兆円の緊縮財政になる。わたしが大臣なら、こんな予算は怖くて出せない。赤字は減らさなければいけないが、一気に減らしては駄目だ。これでは、間違いなく補正予算を組まざるを得なくなる。補正予算は審議時間が短いので、財政がいい加減になる。これは、まさに90年代の、亀井静香さんが政調会長をやっていた時のパターンだ。そうならないように、国家戦略局をやるに尽きる。国家戦略局には専門家を入れた方がいい。政治主導は重要だが、政治主導という名の素人主導になってはいけない。

大塚 国家戦略局は、内閣府が機能していればいらなかった組織だ。内閣府は各省庁の出向者を中心に構成されているが、国家戦略局は各省庁に指示権限のある組織でないと駄目だ。竹中さん、他人事みたいに言っていないで、日本をよくするために、こっち(民主党)に入ってくれとは言わないが、強力な野党(自民党)の一員として(政治の世界に)いてもらわないと困る。

大岩 政府が大きいか小さいかではなく、政府の信頼性がすべての政策の出発点だと思うが、どうか。

大塚 その通り。信頼してもらえる政府をつくるのが最大の仕事だ。反省すべき点は反省しなければならない。

竹中 日本の規模と成り立ちを考えるなら、大きな政府には絶対反対だ。人口が1億人を超える国で大きな政府を作ると、大変危険なことになる。社会保険庁のようにいい加減なことをされても分からない。それだったら、自助自立を徹底する方がいい。

櫻井 今日は対立する視点から忌憚のない御意見をいただき、ありがとうございました。(文責 国基研)