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2010.02.12 (金)

外国人参政権問題提言(平成22年2月改訂版)

国家基本問題研究所提言

平成22年2月

 

◎ 外国人参政権問題提言(平成22年2月改訂版)

 

外国人への地方参政権付与に反対、
特別永住者に特例帰化制度を導入し、
永住許可要件を厳格化し永住外国人の急増を止めよ
 

 当研究所はすでに平成20年3月と平成21年9月に外国人への参政権付与に反対する提言を発表した。政府と与党ではいまだに参政権付与を目指して様々な動きを見せている。当研究所は、これまでの議論を踏まえ現時点での総合的な見解をまとめた。
 本提言では新たに、平成10年に一般永住許可要件が在日20年から10年に大幅に緩和された結果、一般永住者が5倍増えて約50万となり特別永住者を上回ったこと、その中で最も多いのが14万人の中国人であることを指摘し、「永住許可要件を厳格化し永住外国人の急増を止めよ」との提言を追加した。(文中、下線部が主な追加部分あるは変更部分である。)

 

【提言】

  1. 国政選挙、地方選挙を問わず、参政権行使は日本国籍者に限定されるべきである。
  2. 昭和20年以前より引き続き日本に在留する者とその子孫である特別永住者への配慮は、外国人地方参政権を認めることではなく、時限立法による特例帰化制度導入でなされるべきである。
  3. 平成10年に法務省が実施した永住許可要件の大幅緩和の結果、一般永住者が5倍以上に急増し特別永住者を上回った。入管法の規定「その者の永住が日本国の利益に合すると認められること」を厳格に適用し永住外国人の急増を止めよ。

【本文】
 日本の地方選挙では、米軍基地問題や原子力発電所建設問題などに代表されるように国家政策の根幹に関わる問題がしばしば争点となる。将来日本に深刻な影響を及ぼしかねないそのような選択については、日本国籍を持つ者が責任を持ってなさなければならない。公務員任用においても「公務員に関する当然の法理として公権力の行使または公の意思形成への参画に携わる公務員となるためには日本国籍を必要とする」(昭和28年内閣法制局)とする政府見解を厳守しなければならない。
 日本に在留する外国人(外国人登録者)は平成20年末現在で221万7,426人である。永住者は90万8365人、そのうち昭和20年以前より引き続き日本に在留する者とその子孫である特別永住者が41万6309人、それ以外の一般永住者が49万2056人である。

 特別永住者は韓国・朝鮮籍が99%を占める。その中には「(北朝鮮の)チュチェ思想を指導的指針としてすべての活動を繰り広げている〈( )内引用者補、以下同〉。」(朝鮮総連ホームページ)朝鮮総連の加盟者が数万人含まれる。日本政府は韓国籍が過半数を超えた70年代初めより韓国籍、朝鮮籍別の統計を公表しなくなった。現在の朝鮮籍は5万人以下と私たちは推計しているが、情報公開を強く求めたい。

 一般永住者は中国共産党の影響下にある中国人が一番多く14万人で、続いてブラジル11万人、フィリピン7万人、韓国・朝鮮5万人である。

 平成22年1月に実施された沖縄県の名護市長選挙は1588票差の接戦だった。自衛隊誘致を争点とした平成21年8月の与那国町長選挙はわずか103票差だった。米軍基地、自衛隊誘致、領土問題など日本の主権と安全保障に直結する選択について、金正日政権や中国共産党の直接、間接の介入を許すことは、東アジアの平和と安定、日米同盟や日韓友好関係を損なう危険性が高い。
 永住外国人への地方参政権付与問題が浮上したのは、平成7年の最高裁判決の中で「地方自治体の選挙に関して、外国人のうち永住者などに選挙権を与えることは現行憲法で禁じられていない」と述べられたことが契機となっている。しかし、その記述は拘束力を持たない傍論に過ぎない。判例として残る同判決本文は「地方公共団体が日本の統治機構の不可分の要素をなすものであることも併せ考えると、憲法93条2項にいう(地方選挙権を持つ)『住民』とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当」として、外国人の地方参政権要求を明確に退けている。

 

 韓国が平成17年に永住外国人への地方参政権を付与したことから、「互恵主義に基づき日本も韓国籍永住者へ同じ措置をとるべきだ」という議論がある。しかし、
① 韓国で永住が認められるのは主として韓国人の配偶者やその子弟であり、日本とは実情が根本的に異なる。
② 在韓日本人永住者は2、903人(平成19年10月1日現在、外務省「海外在留邦人数調査統計」)であるのに対し、在日韓国人特別永住者は約41万人であり、互恵主義が成立する条件が欠如している。
 推進派がよく例に出すのが、約40カ国が外国人参政権を認めているという点だ。しかし、世界190余カ国のなかで認めている国は4分の1以下であり、必ずしもそれは世界の趨勢ではない。認めている国は、
① 条約で加盟国相互に地方参政権を認めることが義務づけられている欧州連合(EU)諸国、
② 長期間外国人労働者を誘引する政策をとってきた北欧諸国、
③ 在留英連邦国民に国政・地方参政権を与える英国(英連邦は英国王を元首とする旧植民地国との緩やかな国家連合)、
などだ。日本はEUのような連合体に加わっていないし、外国人労働者の受け入れを進める政策をとったこともないし、韓国などが天皇を元首としていることもない。したがって、同一基準での議論はできない。

 

 在日コリアン特別永住者は、かつて「日本国民」として「内地」に移住し、戦後、自らの意思で日本にとどまった人たちとその子孫だ。昭和20年に約200万人いた在日コリアンのうち約60万人が残留した。在日コリアンは「強制連行によって日本に連れてこられた者とその子孫」という説があるが、終戦時に戦時動員され就労していた労働者は32万人であり、そのほとんどが戦後すぐに帰還した(昭和34年版『入管白書』)。
 占領軍司令部は在日コリアンを「戦勝国民」として認めず、「日本国籍を保有する者」とする一方、参政権を停止し、外国人登録を適用するという一見矛盾する政策をとった。そこには北朝鮮を支持して暴力的闘争を展開していた在日本朝鮮人連盟を取り締まるなどの治安上の必要があった。
 昭和27年に日本が主権を回復した際、日本政府はサンフランシスコ講和条約によって彼らを日本国籍から離脱したとみなした。これに対して「国籍選択権を与えなかった」という批判が近年出ている。しかし、激化する冷戦の下、当時は韓国と北朝鮮の双方とも、「在日コリアンは全員自国民であり、日本国籍選択権付与は独立を認めないことだ」と強く主張していたことなどが背景にあった点にも留意すべきであろう(註1)
 今日、3世、4世の時代を迎えている在日コリアン(と少数の台湾人)の法的地位はいくつかの変遷を経て平成3年に現在の「特別永住者」とされた。この間、おおよそ次のような待遇が一貫してとられてきた。
① 本人が希望すれば無期限で在留を認める
② 一般就労を含むどのような活動をすることも許す(一般の外国人は在留資格に認められた活動以外はできない)
③ この法的地位を子孫にも与える
 社会保障などにおいては制度的「差別」が存在した時期もあった。しかし、日本が難民条約に加入し社会保障における内外人平等を実施した昭和57年頃から、それはなくなった。なお、①と②および社会保障における内国人待遇は特別永住者だけでなく、一般永住者にも認められている。③が特別永住者にだけ認められている。

 

 日本定住が長期化し世代交代が進む中、在日コリアンは外国籍を持ちながらも心理的・文化的に本国から切り離された存在となってきた。韓国外務省李在春アジア局長が「日本で生まれ、大部分が日本の教育を受け、思考方式も行動様式もまた日本社会のそれと異なることはない」(民団発行「韓国新聞」1989年5月30日〜6月20日掲載論文)と語っている通りだ。その結果、90年代半ばから日本国籍を取得する人が年間1万人程度となり、帰化者累計は平成18年までに30万人を超えている。日本人との結婚も急増し、90年代以降、全体の婚姻の80%以上となっている。
 一部の在日コリアン知識人や民団活動家らは「『国籍』こそ、日本へ吸収・同化から民族的アイデンティティーを守るさいごの砦」(在日歴史学者・姜在彦氏が「統一日報」95年8月15日に寄稿)などとして、外国籍のまま内国人並みの権利を獲得することを要求している。先述の最高裁判決で敗訴した原告らも、「自分たちは国籍以外日本人との違いがないから参政権を与えよ」という主張を開陳していた。このように急速に進む外国人意識の希薄化が、地方参政権要求の背景にある。
 地方を含む参政権は国家への忠誠が前提であり、民団が組織防衛のためこの問題を利用しているという批判が、本国専門家や良識的在日韓国人の中でも出ている(註2)。
 日本で生まれ育ち本国への帰属意識を持たない大多数の在日コリアンにとって、国籍を維持することがアイデンティティーの砦になりうるのだろうか。私たちはそうした考えに反対である。鄭大均首都大学東京教授が主張するように「外国籍を持ったまま日本の参政権を行使するというのでは、国籍とアイデンティティーのズレを永続化してしまう」のであり、帰化をしてコリア系日本人として参政権を行使する道こそが自然であり、国際的常識というべきだろう。それは日本社会の多様化、国際化を進展させることにもつながる。

 

 現在、特別永住者は帰化する際に、原則的には一般の外国人と同じ手続きを課されている。また、帰化の際に使用が許される漢字のリストには、例えば「崔」「姜」「尹」「趙」などコリアンの姓としてはありふれたものがいまだに入っていないなどの不備がある。
 日本において、特別永住を認められている外国人が、帰化により日本国民としての権利を獲得し、義務と責任を果たそうと決断した場合、①本人確認(「本国戸籍謄本」等と「外国人登録済み証明書」)②帰化意思確認(「帰化許可申請書」「帰化の動機書」と、法律を守り善良な国民となることを誓う「宣誓書」)を求める特例を認めることを提言したい。
 もちろん、この場合も一般帰化と同じく許可制をとることはいうまでもない。すでに法務省は、平成15年7月ころから特別永住者の帰化申請で、帰化の動機書、在勤証明書、給与証明書、最終学歴を証する書面の提出を免除するなど手続きの簡易化を実施しているという(本研究所が平成21年6月、法務省民事局秋山実民事第1課長から聞き取り)。行政の判断でなし崩しに手続きを簡易化するのでなく、特例期間を限定する時限立法が望ましい。
 帰化とは、あらたに日本国という政治的運命共同体の正式メンバーになるということを意味する。特例帰化制度を含むすべての場合に、「帰化の動機書」と「宣誓書」は厳格に扱われなければならず、宣誓書提出にあたり何らかの厳粛な儀式を実施すべきである。ところが前述のように法務省は平成15年7月以降、特別永住者に対して「帰化の動機書」提出を求めることをやめている。法務省は早急に「帰化の動機書」提出免除を取り止めるべきだ。
 戦前から在住する者とその子孫にだけ認められる特別永住制度については、特例帰化の実施後に一般永住への統合を含めあらためて見直すべきだ。

 

 民主党は、戦前から日本に在留する者とその子孫である特別永住者だけでなく、一般永住者にも地方参政権を与えようとしている。一般永住者は約50万人いるが、一番多いのが中国人14万人で、続いてブラジル11万人、フィリピン7万人、韓国・朝鮮5万人である。
 一般永住者が平成10年以降、5倍以上に急増していることはあまり知られていない。平成10年末に一般永住者は9万3364人だったが、平成20年末には49万2056人となった。10年間で5倍、約40万人増えている。中国人一般永住者は3万1591人から14万2469人とやはり約5倍となっている。
 特別永住者は10年間で11万人減少し41万6309人である。この趨勢で行けば数十年以内に姿を消す。したがって、外国人参政権問題の焦点は、急増する一般永住者、その中で最も多い中国人永住者が日本の内政に関与することを許すのかという問題に移りつつある。
 一般永住者急増の背景には入管行政の方針変更がある。平成10年2月に永住許可の要件を日本在留20年から10年に大幅に短縮した。この大幅要件緩和は、法改正なしに法務省の行政判断により行われている。そのため、ほとんど議論のないまま永住外国人が急増していった。入管法22条は永住許可の要件として
(1) 素行が善良であること
(2) 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
(3) その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
と記している。法務省入管局は「永住許可に関するガイドライン」を定めてこの3要件の公的解釈を公開している。在日歴の大幅短縮は(3)に関する法務省の解釈の変更により実行された(平成19年版『入管白書』30ページ参照)。行政による恣意的な法運用がなされないように、入管法を改正して永住要件をより具体的に定めるべきだ。
 永住許可要件の安易な緩和は国家の基本を揺るがしかねない重大な問題をはらんでいる。
 永住許可を得ると外国籍のまま、無期限でかつ活動制限のない在留が認められる。デモや集会などの政治活動も自由に行える。中国共産党がその気になれば日本国内に朝鮮総連のような組織を作ることも可能だ。北京オリンピックの聖火を守るために在日中国人が長野で集団暴力行為をはたらいた事件は記憶に新しい。観光ビザや留学生ビザなどであれば、資格外活動として取り締まることができる。しかし、永住者は「資格外活動」での取り締まりはできない。その上、極端な場合、スパイ活動や政治目的の破壊活動を行った場合でも、自国大使館に逃げ込んだり、自国に逃げ帰るならば逮捕することが困難となる。
 国内に外国政府や外国政党に忠誠を誓う外国人集団を永住者として抱え込むことは入管法に定める永住許可要件「日本国の利益に合すると認められること」に反している。少なくとも、一党独裁体制をとる中国人への永住許可の要件は、米国や韓国など我が国と価値観を同じくする自由民主主義国国民と同一であってはならない。中国国籍者でも民主化運動家、チベット人、ウイグル人など共産党の弾圧から逃れてきた者へは政治亡命者として永住許可を優先的に出すべきだ。永住許可要件を抜本的に見直し永住外国人の急増を止めなければならない。

 
註1 昭和24年10月7日、韓国の李承晩政権は駐日韓国代表部金溶植大使名義でマッカーサー連合国司令官に対して「国籍選択権云々はやはり絶対に不当な見解であると論断せざるをえない。そして、在日大韓民国人の中に日本国籍の取得を希望する者が全くないとは言えず、万一いたならばそれは単純な“帰化”問題であり、国籍選択権と混同して錯覚してはならない」とする見解を伝えている。同見解(韓国語)は民団発行『民団30年史』68〜69頁に全文収録されている。西岡力著『コリア・タブーを解く』に全訳収録。
註2 たとえば、洪熒・早稲田大学客員研究員(在日韓国大使館元公使)「在日韓国民団の日本『地方参政権』獲得運動に対する所感」統一日報ブログ。