東京大学総合文化研究科の阿古智子准教授は3月7日、国家基本問題研究所企画委員会の中国研究会で、「中国の公民社会と民主化の行方」と題して報告すると共に、企画委員と意見交換を行った。
阿古准教授は大阪外語大、名古屋大などを経て香港大学院で博士号を取得、北京の日本大使館で専門調査員を務め、一般の中国人の中に入って生活を共にするなど民衆の目で見る中国の社会、政治を調査、研究している。
阿古准教授によれば、中国では公平、公正な競争がないため腐敗がなくならず、モラルは低下、人心は荒廃しており、戸籍制度や土地制度の改革、権力濫用を制御するシステムの構築が最重点課題となっているという。
一方、民主化がほとんど進んでいない中国ではあるが、近年、インターネットの発展で世論が作られ、ある程度の影響力を持ち始めている、と阿古准教授は述べている。
また、同准教授は「公民社会」について、英語の“Civil Society”の訳語で、政治権力からも経済利益からも一定の距離を置き、公共の利益のために行動する人々や民間組織、或いはそのネットワークであると説明。党・政府の支持者としての「人民」と相対する概念であるという。この公民社会は、2000年代に入りソーシャルメディアを活用したネットワーク形成に発展している。党・政府は200万人のネット監視員を動員してチェックしているが、すべてをコントロールするのは不可能だ、という。微博(ミニブロッグ)や微信(We Chat)などの人気も高く、ネットユーザーに多大な影響力を持つオピニオンリーダーも次々と誕生しており、将来の可能性を感じさせる、と阿古准教授は述べている。(文責・国基研)