公益財団法人 国家基本問題研究所
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2023.04.04 (火) 印刷する

六ケ所村視察報告 加藤康子・元内閣官房参与

国基研の理事兼企画委員の加藤康子・元内閣官房参与は3月31日(金)、国家基本問題研究所企画委員会において、櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員と意見交換した。

【概要】
 青森県のエネルギー前線基地を視察した模様を報告する。今回訪問したのは原燃サイクル施設六ケ所村、東通原発、大間原発、使用済み燃料中間貯蔵施設などである。

・六ケ所村では5つの施設の内、一部、建設中と未稼動のものはあるが、全てが稼動したなら、日本で初めて核燃料のリサイクル事業が展開される。

・東通原発は、震災後8年稼働しなかったが、あと2年で再稼働の予定。審査が遅れていた理由は、原子力規制委の「直下の断層が活断層なのでは?」という疑問に対し、事業者側に説明を求め、回答に時間がかかった。12~3万年の間に断層が動いてないという「悪魔の証明」を求められたというもの。

・大間原発(フルMOX発電所)は現在稼働に向け準備中。規制委が建設同意の対象を30キロ圏内と範囲を広げたところ、その中に函館市が入り、市長が行政訴訟を起こし裁判継続中である。ただし大間においても周辺施設では、徐々に準備が進んでいる。

上記以外、エネルギー施設周辺では再エネが目立っていた。六ケ所村のメガソーラーは広大な土地に建設され観光資源化しているが、冬期の運営は厳しく、雪が降ると当然ながら発電しない。風力発電の風車の多くも稼動していなかった。

他方、中国では現在原発が49基稼働し、将来的には100基体制を目指し、2030年には世界の80%のウラン燃料を使用する超核大国になることが予想される。

その中国の電力企業である上海電力が、日本に土地を取得してメガソーラー事業を展開しようとしている。青森県では3件、上海電力がFIT(固定価格買い取り制度)の認可をうけたことが確認されている。

・青森県むつ市では、使用済み燃料中間貯蔵施設の隣に、広大な空き地を所有。日本人女性名義であるが、SMW東北という合同会社が認可をとっている。合同会社の住所が上海電力と同じであることから、その実態は明らかである。

・むつ市城が沢では、海自大湊航空隊基地から10分ほどの場所に、上海電力の合同会社が所有している土地がある。
 
今回の視察で感じた点は、第1に原発事業において日本は先進的能力を生かせていないこと。エネルギー基本計画の根本が脱炭素のため、原発再稼働が遅れても意に介さない。これでは国益を損なうのを傍観しているだけ。したがって規制委の審査に時間的制約を課して、審査の遅延をなくす必要がある。

第2に、再エネ事業のFIT認可から、中国共産党のフロント企業を外すべきである。FIT賦課金として徴収される国民のカネが、中国企業に流れる状況は看過してはならない。他方、ドイツはFITをすでに取りやめ、産業用電力を安く設定して企業の国際競争力を上げている。欧州はすでに発想を変えた。日本も見直すべきである。

第3に、重要土地法案は役に立たないこと。原発や自衛隊の基地の周りに中国企業が土地を取得して建物を建てても、阻害行為が行われない限り売買を規制できないのが実情である。今こそ政治の力が必要なのではないだろうか。

【略歴】
東京都出身、慶応大学文学部卒業後、国際会議通訳や米CBSニュース調査員等を経て、米ハーバード大学ケネディスクール政治行政大学院修士課程修了(MCRP)。一般財団法人「産業遺産国民会議」専務理事、筑波大学客員教授、平成27年から令和元年まで内閣官房参与を務め、「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録に尽力した。現在は産業遺産情報センター長。 (文責国基研)