2024年7月の記事一覧
北で秘密資金持ち逃げ事件 西岡力(モラロジー道徳教育財団教授)
6月、朝鮮人民軍の政治警察である保衛局(保衛司令部から改称)の幹部が北朝鮮の独裁者、金正恩委員長の秘密資金3000万ドル(約48億円)を持ち逃げする事件が発生し、大騒ぎが起きている。 軍の外貨管理者が3000万ドル 今年春頃、北朝鮮は自国で生産する兵器の質を向上させるため、コンピューター制御で動かすCNC旋盤などの精密機械を中国から密輸することを計画した。そのために1億ドルをひそかに北...
パクス・アメリカーナの終わり 冨山泰(国基研企画委員兼研究員)
米共和党大統領候補に指名されたトランプ前大統領(78)は、年齢が自身の半分のバンス上院議員(39)を副大統領候補に選んだ。仮に11月の大統領選挙で大方の予想通りトランプ氏が当選すれば、「トランプ氏のクローン」(バイデン大統領)と呼ばれるバンス氏は次回2028年の選挙で共和党大統領候補となる可能性が大きい。憲法の規定により、トランプ氏の3選出馬はないからだ。これは、共和党の外交路線の基調として、トラ...
防衛白書は現場の苦悩も伝えよ 織田邦男(麗澤大学特別教授・元空将)
政府は7月12日、令和6年版防衛白書を公表した。令和6年は自衛隊発足70周年であり、また令和6年版防衛白書は初版から50冊目という記念すべき白書である。皮肉にも、ちょうどその日、陸海空の全幕僚長を含む計218人の処罰が発表された。 処罰に至った不祥事は、特定秘密の違法運用、潜水手当の不正受給、基地食堂での不正飲食、パワーハラスメントである。手当の不正受給や不正飲食は論外としても、特定秘密の違...
NATOが見据える「戦争の常態化」 佐藤伸行(追手門学院大学教授)
「既に第3次世界大戦が始まっている」との言説は今や特段、珍しいものではなくなっている。軍事と非軍事の境目が希薄になった国家間の戦いは、日々、多様な領域で繰り広げられている。 このほどワシントンで開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は、加盟国に対するロシアのハイブリッド攻撃やロシアを支える中国の動向に例年以上に神経を尖らせ、それを厳しく非難した。首脳宣言がウクライナの加盟について「不...