元台北駐日経済文化代表処代表の許世楷・津田塾大学名誉教授は来日中の4月4日、国家基本問題研究所企画委員会で、学生の立法院占拠と台中関係について講演、50万人にも膨れ上がった学生デモ(主催者側発表)は台湾が今”第三の危機“に直面しているとの見解を明らかにした。
許氏によると、第一の危機は、1949年、国共内戦に敗れた国民党が百数十万の軍隊と共に台湾に流れ込んできた時であり、第二が1970年の台湾の国連からの追放である。そして、今回の第三の危機は、3月17日、与党国民党が立法院の委員会で、中台間で調印されたサービス貿易協定を中身も審議せずに本会議に送付したことに端を発する。
協定は中台双方が互いのサービス産業の企業に市場参入を認めるもので、医療、印刷、運輸、娯楽など幅広い分野が対象となっている。
学生たちが問題視したのは、手続きが民主的ではないという点。中身がわからぬまま、馬英九政権が立法院に送り、無修正の可決を求めたことだ。野党民進党と国民党の院内交渉の結果、逐条審議となり、中身が判明するにつれ、対象となる業界が「中国の業界に席捲される」として反発、学生の反対運動に加わった。さらに、中国の投資企業に市民権を付与するとの詳細も明らかになり、「台湾が中国に呑み込まれる」という台湾側に基本的にある不安感を煽った。馬総統の任期はまだ二年半ぐらいあり、これからの二年間で、台湾を売りとばし、最終的にはアメリカなどに移住するのではないか、との怖れを抱いている反対運動家も多い、と許氏は指摘する。
許氏はさらに今回の学生運動が 1)国民党の分裂を加速させる 2)11月29日の統一地方選挙での去就を左右する(日本と違い、台北など5大市長は内閣閣議に出席できる権限を持っている)などの影響がある、と述べた。
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(文責 国基研)