国基研理事である山田吉彦・東海大学教授は7月8日、国家基本問題研究所企画委員会で、「南シナ海の諸問題」について語った。この中で山田教授は、来るフィリピン対中国の南シナ海に関する仲裁裁判の裁定に対し、中国が真摯に向き合わなければ海洋秩序全体を揺るがすことになると述べた。
教授は千葉県出身。学習院大学経済学部を卒業、埼玉大学経済科学研究科博士課程を修了。現在、東海大学海洋学部海洋文明学科主任教授。専門は、海洋政策、海洋安全保障、海賊問題、国境問題など幅広く、海洋に関する知見豊かな海洋問題の第1人者。
教授は、仲裁裁判の裁定を控え敏感に反応している中国の現状を解説。今後過激な反応がますます活発化することが予想されると指摘。また、中国にとり厳しい裁定が予期されるが、国際裁判の限界として、順守を強制する手段がないことも事実であり、いかに守らせるかが今後の大きな課題になるという。
さらに、もう少し踏み込むなら、南シナ海では複数の国々が小さな岩礁の領有権を主張し、それらが入り乱れて存在するがため、領域の境界画定が大変困難である。それゆえ、解決策として複数関係国による共同監視という方法が一案であるとも指摘した。
次に、教授が指摘したのは海賊問題である。ソマリア沖の海賊が国際問題としてクローズアップされる中、CTF151など多国籍軍の共同オペレーションが成果を上げ、ソマリア海賊が減少している一方、ここ数年で東南アジアの海賊発生件数が伸びてきていることを紹介。これへの対策も急務であるという。
(文責 国基研)