齋藤尚登・大和総研主席研究員は、6月9日、国家基本問題研究所の定例の企画委員会におけるゲストスピーカーとして、「中国経済の行方~中長期的な問題を中心に~」と題して、中国経済の現状と今後の見通しなどについて語り、櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員と意見交換した。
齋藤氏は、1990年山一證券経済研究所に入社、香港駐在を経て1998年大和総研に。2003年から7年間、北京駐在、2015年に主席研究員、経済調査部担当部長。
氏はまず、前回来所した際も提示した中国経済の発展段階を図示し、日米の経済構造が40年以上前に脱工業化したのと比較し、中国は2012年に転換点を迎えたと指摘。産業構造が変化し成長率の鈍化が続き、長期のダウントレンドに入っているとの見解を示した。
中国経済は、36年間続いた一人っ子政策の弊害が色濃くなる中で、投資効率が低下、企業債務など負債率の上昇、生産能力の過剰、住宅バブル崩壊のリスクなどの問題が噴出すると予想した。
特に「一人っ子政策」の弊害について、中国の若年層における女児に対する男児の割合が極端に多くなっていることを指摘。今後人口減少問題が激しくなるとのこと。すなわち、生産年齢人口が2011年をピークに減少するとともに、社会保障関連費が増大し、政府の歳出に占める割合も増えるという。
最後に、4月1日に発表された中国が設立を予定する新たな特区である「雄安新区」(河北省保定市)について、日本で言えば「つくば研究学園都市」に近いイメージで、「国家の大事」と位置付けられているが、深圳経済特区のように政府からの自由が保証されないかぎり、その成功に疑問の目を向けた。
(文責 国基研)