公益財団法人 国家基本問題研究所
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2021.10.29 (金) 印刷する

『専門家』のウソと欺瞞 飯山陽氏

イスラム思想研究者の飯山陽氏が10月29日、国家基本問題研究所企画委員会に来所し、『「専門家」のウソと欺瞞 イスラム問題が理解できない本当の理由』と題して語り、櫻井よしこ国基研理事長をはじめ企画委員らと、意見を交換した。

【概要】
わが国ではイスラム問題について、専門家の解説を鵜呑みにする傾向がある。その結果は、いつまでもモヤモヤしたまま。その偏った専門家の意見を聞く構造こそが、イスラム問題を理解できない原因だという。

多くの専門家が語るウソの一つ、それは「タリバンとアフガニスタンは同一」だという作り話。たとえば、ある専門家は「アフガン人はタリバンそのもの」と言う。タリバンはアフガニスタン人口の半数を占める女性の権利を認めない。迫害もする。少数派のハザラ人を虐殺、迫害する。歌舞音曲を認めず歌手を殺害する。旧政府関係者も強制移住させる。このような自国民を迫害するタリバンがアフガニスタン人そのものであるはずはない。

一様に彼ら専門家はタリバンを擁護する。何故か。ODA予算や資源獲得といった経済的誘因もさることながら、彼らの持つ反米感情も無視できない。米国を中央アジアから追い出したタリバンなら、手を差し伸べるべきだという理屈なのだろう。

第2のウソは、「イスラムは平和の宗教」だというもの。その根拠は、「イスラム」はアラビア語で「平安」を意味する「サラーム」から生まれたとの説にある。しかし、これ(Salam → Islam)は正しくない。アラビア語の語源は「SLM」という3つの子音で、そこから「Aslama(引き渡す)」→「Islam(服従する)」となる。

それでは、イスラム教における「平和」とはどういう意味を持つか。非イスラム教徒なら、戦争の無い状態を一般に平和という。だが、イスラム教徒は、イスラムが支配する状態と認識する。コーランは「騒乱がなくなるまで、そして宗教のすべてが神のものとなるまで戦え」という。つまり、イスラムが全世界を席捲するまでジハードは継続されるのである。

最後に氏は、日本人は「親日」という言葉に騙されやすい。いくらタリバンやイスラム国などが親日だと専門家に言われても、そこには必ず裏がある。これ以上、甘い言葉に騙されてはならないと注意を促した。

【略歴】
1976年東京生まれ。イスラム思想研究者、アラビア語通訳、博士(文学)。
上智大学文学部史学科卒。東京大学大学院人文社会系研究科アジア文化研究専攻イスラム学専門分野博士課程単位取得退学。TwitterやNoteでイスラム世界の最新情報などを随時更新している。著書に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『イスラム2.0』(河出新書)、『イスラム教再考』(扶桑社新書)、『イスラームの論理と倫理』(共著、晶文社)がある。『エジプトの空の下』(晶文社)が11月19日に発刊予定。 (文責 国基研)