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2022.03.04 (金) 印刷する

『ポーランドから見るウクライナ情勢』 パヴェウ・ミレフスキ・ポーランド共和国大使

ポーランド共和国のパヴェウ・ミレフスキ駐日大使は、3月4日、国基研に来所し、緊迫したウクライナ情勢を含む欧州の状況などを説明し、櫻井理事長をはじめ企画委員らと意見交換をした。

【概要】
冒頭、隣国ウクライナがロシアからの侵略を受け、原子力発電所にまで戦火が及んでいるという報道を紹介。

ポーランドの地政学的環境について。東の国境をロシア、ベラルーシ、ウクライナと接するNATO加盟国。先の大戦中はナチスドイツやソ連から攻められ、現代はロシアの脅威に常に晒されている。中国、北朝鮮、ロシアの脅威がすぐそばにある日本に似ている。

プーチン大統領の認識を分析する。
国内的要因:国内の政治的基盤を強化するために、外敵を作り攻撃することは、プーチン氏にとって妥当な判断。彼が不安を感じてウクライナに戦争を仕掛ける理由の一つは、ロシアを統一し、自分の人気や正当性を高める敵を作ることだから。ロシア国内でのプーチン人気は必ずしも高くはないが、ウクライナ統一を人気取りの手段としてとらえている。しかし、今回の侵攻作戦を見る限り兵士の士気は低く、国内でも反戦デモが起き、人気は更に低下している。

国外的要因:他国をどう見るか。英国はBREXITで反EU、独はエネルギー依存度が高くロシアに友好的、米国バイデン大統領はトランプ氏よりハト派でアフガニスタンからも撤退した。西側は今なら弱いと見る。

個人的要因:大統領が70歳になるタイミングで偉大なるロシアの復活という歴史的事業を成し遂げたいと思っても不思議ではない。

現在の状況について。ウクライナから国外に避難する難民が約100万人に上り、そのうち半数がポーランドに避難し、ポーランド国境警備隊は全力を尽くして支援している。また、ポーランドはEUの中で最初にロシア航空会社の自国領空通過の禁止措置をとった。その後、同種の措置はEU全域に及び米国に拡大している。経済制裁も行われ、SWIFTからのロシア排除は効果を上げつつある。

日本への期待について。日本が経済制裁への参加や難民受け入れを表明したことは高く評価する。領空通過の禁止措置など、より多くの積極的支援をお願いしたい。今は国際社会が一致団結して無法な侵略者と戦う時である。今日のウクライナを明日の台湾、日本にしないために。

【略歴】
1975年生まれ。1999年アダム・ミツキェヴィッチ大学にて中国学修士号を取得後、1996年より首都師範大学(中国)、続いて1997年より厦門大学(中国)に留学。2003年ワルシャワ経済大学国際経済研究室研究課程(PG Dip)修了。

1999年ポーランド共和国外務省入省。2003年から2009年、駐中国ポーランド大使館にて書記官、参事官。2009年より外務省アジア・太平洋局東アジア・太平洋課長、2011年、同局副局長。2013年に駐豪大使に就任、同時に駐パプアニューギニア大使を兼任。2017年、同省アジア・太平洋局長に。2019年10月から現職。

(文責 国基研)