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2024.06.03 (月) 印刷する

「尖閣諸島海洋調査を終えて」山田吉彦・東海大学海洋学部教授

国基研理事で東海大学海洋学部の山田吉彦教授は、尖閣諸島周辺海域で、石垣市が行った海洋調査について、その緊張高まる実態を定例の企画委員会で報告し、櫻井理事長をはじめ企画委員らと意見交換をした。石垣市の調査は、2022年以降、毎年行われ今年で3回目となる。

【概要】
山田教授は、石垣市が2022年以降、継続的に実施している尖閣諸島周辺海域での海洋調査について、動画とともに詳しく報告。今年も環境問題にテーマを絞り、効果的な調査活動ができたことを、協力してくれた関係各位に感謝した。また、今年は、初めて国会議員(5名、内自民党4名、維新の会1名)の乗船視察が行われた。

まず、前回の調査時と同様、中国の海警船からの妨害行為が想定された。今回は、領海内においては、14隻(目視された数)以上の海上保安庁船により2隻の海警船から防護するという体制であった。海保の巡視船艇は常に調査船の周辺に位置し、海警船の動きから守るように操船するなど、まさにプロフェッショナルの技を発揮し、大いに頼もしさを感じたという。ただし、中国海警による領海侵犯が繰り返されている事実を重く受け止め、政府としての対応の必要性を訴えた。

調査の内容としては、魚釣島の自然環境としては、大量のごみが中国方面から流れ着いた状態(海流の状況やごみの種類から中国のものと推定)であり、また山羊が多数繁殖している状況も認められた。海洋環境としては、魚群探知機にいくつかの魚影も確認され、漁場としての価値は引き続き高い状態と考えられる。植生環境としては、近年、山羊の食害で緑の面積が大きく減少していることが分かった。

さて、今回の調査に同行しようとした記者の中には、本社の指示で乗船を断念したという事案があった。やはり中国への忖度があったものと考えられる。他方、中国本土において本調査に関する報道はなく、尖閣のことは黙殺のような状態ともいえる。仮に中国側に立てば、「尖閣諸島は中国の領土であり、中国が実効支配している」と国内で説明していることに矛盾し、中国国内で報道することができないと考えられる。

ごみや山羊の食害を含めた環境問題は上陸しての調査が不可欠であり、今後も関係当局などに調査の許可を求めて実現したい。加えて海洋環境の保護は国際問題という側面がある。尖閣諸島周辺の生態系や環境保護のため国際連携を考慮し、国際調査チームを結成するなどして調査を継続していくことが一案であると提案した。

最後に、いずれ海警船だけでなく中国漁船団が海上民兵として尖閣沖に送り込まれる可能性があると指摘したい。そうなれば、海上保安庁だけでは対処困難な状況になると予想され、さらなる注意と十分な準備が必要である、と警鐘を鳴らした。(文責 国基研)