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2024.08.30 (金) 印刷する

総合安全保障プロジェクト 『「中国軍機による領空侵犯」及び「漢光演習40号」』 中川真紀国基研研究員

総合安全保障プロジェクトの月次報告。中国の軍事動向を分析する中川真紀研究員が、わが国領空に対する中国軍機による領空侵犯事案及び最近台湾が実施した軍事演習「漢光演習40号」の様子をブリーフィングしました。

早朝からの開催でしたが、国会議員をはじめ企画委員など多くの参加者がありました。

この総合安全保障プロジェクトの成果は、逐次、国基研チャンネルやホームページ上でも展開します。

【概要】
〇中国軍機による領空侵犯について
今回はまず、先日生起した中国軍機による領空侵犯事案について解説。防衛省の発表によると、8月26日、中国軍のY-9情報収集機が、長崎県男女群島沖のわが国領海上空を侵犯したことを確認した。

冷戦後の中国機に対する空自機の緊急発進の回数は高止まりだが、地理的には拡大している。Y-9情報収集機は今年に入り南西諸島に3回飛来、今回は長崎へ飛来した。地域の違いはあるが、いずれも自衛隊のレーダーサイトや海自・米海軍基地などの情報収集が目的と考えられる。

今回の領空侵犯が故意か過失かは不明だが、次の事象を考慮した可能性はある。

①7月30日に習近平総書記が重要講話で国境・海空域防衛力の整備を軍に指示
②7月4日に海自護衛艦「すずつき」が浙江省の中国領海を一時航行し中国から退去勧告
③8月16日に海保が魚釣島に上陸したメキシコ人を救助し書類送致したが、中国海警船の対応は確認できず

中国軍にとり習氏の指示は遂行必須であり、実績をアピールしたいとの思惑が垣間見える。加えて海自護衛艦の中国領海侵入を許し、魚釣島の事案にも有効に対処できていないとの批判を回避する上でも、今後も日本周辺での活動を活発化させるものと考える。

〇漢光演習40号
漢光演習は1984年に始まり今年で40回目となる台湾軍の演習(指揮所演習と実動演習)である。年毎に中国軍の侵攻様相の変化を想定に反映し、政府や民間も参加する戦時の国家の実情を考慮した訓練である。今回の実動演習は5日間の予定(実際は台風により1.5日短縮)で行われた。

今次の注目点は、ウクライナ戦争の教訓を考慮し、中国による侵攻のハードルが下がったとの認識のもと、政府・民間と軍が連携した実戦的な訓練を実施したことである。

特に実動訓練では、ミサイル攻撃からの退避、総統府への攻撃対処、内陸部への侵攻対処、海上封鎖への対処などが、全国レベルで実施された。実際に民間を含めた訓練場外の作戦行動や、平時・グレーソーンの事態から認知戦に対応した訓練も行われたことは注目に値する。 

対認知戦の演習では、各作戦区に民間の報道クルーを派遣し、国防部が演習地域から中継放送を行い、あるいはAIアナウンサーが18の言語で放送するなど、中国の偽情報流布に対し、国際的な発信力を高め、正しい情報を直接発信する努力が見られた。

漢光演習は、防衛体制を国家全体で確認するとともに、中国の威嚇に対する継戦意思を国際社会にアピールする狙いもある。(文責 国基研)

資料PDF 中国軍機のよる領空侵犯について

資料PDF 漢光演習40号

 

関 連
国基研チャンネル

中国軍機(Y-9 情報収集機)による領空侵犯 軍事情報のスペシャリストが解説

8月26日に中国軍機(Y-9 情報収集機)が日本領空を侵犯した。故意か過失かは不明であるが、中国国防省の報道官は会見で「深読みしないことを望む」と述べた。訪中した日中友好議連の二階会長は遺憾の意を表明したが、それだけでよいのか。国基研中川真紀研究員が深読みします。