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2008.02.09 (土)

北朝鮮問題でヒル次官補に反論する

平成20年2月9日
国家基本問題研究所

拉致問題の切り離しこそ日米の利益にならない
-北朝鮮問題でヒル次官補に反論する-

 
 北朝鮮の核問題に関する6カ国協議の米首席代表ヒル国務次官補(東アジア・太平洋担当)は2008年2月6日、上院外交委員会の公聴会で証言し、北朝鮮による日本人拉致問題と北朝鮮のテロ支援国家指定解除問題を厳密に結び付けることはしないと明言、「(両問題を)あらかじめ厳密に結び付けることは米国の利益にならないし、日本の利益にもならないし、誰の利益にもならない」と述べた。国家基本問題研究所(国基研、JINF)は、この意見に同意しない。

 ヒル氏は「日本の利益にならない」とする理由を挙げなかったが、拉致問題の解決もしくは進展がない限り米国は北朝鮮のテロ支援国家指定を解除しないという形で両問題をあらかじめリンクさせると、北朝鮮は6カ国協議の合意で約束した核計画の申告や核施設の無能力化に真剣に取り組まなくなり、それは日本の利益にも反する、という意味かもしれない。もしそういう意味であれば、われわれは次のように反論する。すなわち、日本の利益は核問題と拉致問題が並行して進展することである。

 また、われわれが1月に発表した提言「北朝鮮のテロ支援国家指定を解除するな」で指摘したように、米国が日本の希望を無視して北朝鮮のテロ支援国家指定を解除すれば、日本における米国への信頼は失われ、日米同盟を支えてきた最も親米的な人々をも失望させる。それは日米同盟関係の危機をもたらし、明らかに米国の利益にならない。つまり、ヒル氏の主張とは正反対に、拉致問題とテロ支援国家指定解除問題を結び付けないことは、米国の利益に反する。

 ヒル氏は証言で、日本政府との緊密な「協議」なしにテロ支援国家指定を解除しないと言明した。しかし、「協議」と「同意」は異なる。米国は日本の信頼をつなぎ止め、日米同盟関係を一層強化するため、日本の同意なしにテロ支援国家指定を解除しないと約束すべきだ。米国が「日本との関係を犠牲にして北朝鮮との関係を強化するつもりはない」(ヒル氏)と真に考えているなら、そうした約束が必要だ。